STEPS AHEAD 新収蔵作品展示
アーティゾン美術館
2021年5月29日(土)
東京・八重洲のアーティゾン美術館は
緊急事態宣言中の5月も開館していました。
国内の美術館の先駆けらしい、流されず
ブレない姿勢はカッコいいですよね。
守るものがいて、挑むものがいるというのが
アートの歴史です。あなたは、どちらの立場にいたいですか?
話しがそれましたが、アーティゾン美術館は今、収蔵作品展を行っています。印象派、日本の近代絵画、抽象表現絵画、現代美術が主なもので、これに新しく加えた作品を目玉にした展覧会です。説明も丁寧でオリジナルのスマホアプリの音声ガイド(無料)もあるのでしっかり見ると結構時間がかかります。見たことのある絵は飛ばすのが無難です。
今回は作品ごとにコメントを書いていきます。撮影OKでしたが、収蔵品ですので実物は直接見に行って頂きたいです。
6 青木繁「わだつみのいろこの宮」
最初のゾーンは近代日本画の名作から始まるので見入ってしまいます。どれも好きですが、今回は早熟の天才、病弱で夭折した青木繁。「わだつみのいろこの宮」は縦に細長い構図。古事記を題材にしています。「ほおりのみこと」が海の宮殿に無くした釣針を探しに行き「とよたまびめ」に出会う場面。西洋画のアプローチで描いているので現代人には見やすいです。もっと長生きしてこういう作品を沢山描いていて欲しかったです。今日の日本人の古事記観も変わったのではないでしょうか。
9 ギュスタープ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」
画家でありながら、裕福なため印象派画家の経済的支援者でもあったカイユボットは写真的な写実性の高い作品を描く。男性が窓際に置かれたピアノを弾いていて、鍵盤に落とした指がピアノに映り込んでいる。丁寧に描かれた壁紙の模様が画面全体の華やかさを演出している。薄暗い室内が印象派というよりフェルメールの室内画を連想させる。
15 ウンベルト・ボッチョーニ
「空間における連続性の唯一の形態」
未来派の立体作品。未来派は動きや速さの表現を主なテーマにしています。これは風を受けて前へ歩む人の動きをダイナミックに抽象化した作品。腕のない人型の造形で、全身に布のようなモノがまとわりついて強い風を受けてなびいているように見えます。作品名は頭デッカチですが作品は感覚的にみてもわかりやすいです。
34 ヴァシリー・カンディンスキー「3本の菩提樹」
カンディンスキーは抽象画の創始者の一人です。音楽の構造を絵画制作に取り込み、独自の抽象画を切り拓きましたが、これは抽象画に突き進む少し前に描かれた作品。太い線で絵の具を混ぜずに配置した色彩がハレーションを起こすようにどぎつい風景画です。中央にドンと木(菩提樹)が配置され周りに道や家、他の菩提樹があります。その後の展開とはかなり違いますが目立つ1点です。展覧会のパネルにもなっています。
67 エレイン・デ・クーニング「無題(闘牛)」
アメリカの抽象画家 デ・クーニングの妻の作品。アーティストだったんですね。夫の作品より私はこちらが好みです。エレインが初めて闘牛を見て受けた印象を描いたものです。太く荒々しい黒い線の重なりは激しく暴れる牛の姿を思い起こさせます。熱気、命の織りなすダイナミズムが画面に溢れています。
147 ザオ・ウーキー「水に沈んだ都市」
中国出身の画家でクレーに傾倒していたそうです。この青が美しい作品には確かにクレーの影響が見えます。線で描かれた建物が、塗り重ねられ、ざらついたテクスチャーの青い海の中に垣間見えます。不思議と心が落ち着きます。
153 元永定正「無題」
絵の具をカンバスに流して描いた作品。日本画の技法のたらし込みのような方法を使っています。絵筆とは全く違う仕上がりの抽象画です。元永定正は日本のアーティストグループ「具体」のメンバー。抽象画というとメチャクチャで何でもありと思われがちですが、「具体」の作家にはある種の方向性が感じられます。色々な可能性のある世界と思います。
今回は展示作品が幅広いため、あっちに行ったりこっちに行ったりして散漫な内容となりました。
他にもたくさんありましたが、書ききれないので次の機会に。次でもあるのが収蔵品の良いところです。
見たままに描いていますので読みやすくはなかったかもしれません。わかりにくいと感じた方は是非美術館に足を運び、その眼で見てみてください。東京駅のすぐそばです。もう言っても怒られないでしょうが、前のブリヂストン美術館と比べて本当に綺麗で広々とした美術館になっています。