ライゾマティクス_マルティプレックス

東京都現代美術館
2021年3月27日(土)
 
ライゾマティクス rhizomatiks を知っていますか?
 
幅広く活躍しているが裏方のような所もあり、活動の内容の説明が難しい。知っている人と知らない人でハッキリ線が引けそうな気がする。
 
デジタルテクノロジーのハードとソフトの両面を駆使して、アート、エンターテインメント、ビジネス、研究開発と縦横無尽に活躍するチーム(株式会社)というところでしょうか。
 
そのライゾマティクス rhizomatiks にとって
美術館ではこれが初の回顧展です。
 
・Rhizomatiks Cronicle
ライゾマティクスの作品のひとつとして、データの見える化、可視化が挙げられます。データは肉眼では見えません。しかし現代の社会は見えない膨大な量のデータが動かしています。データそのものは数字として至る所にありますが、数字を見ただけでは意味がわかりません。
 
それをグラフ、相関図、対象の映像、地図、数値、さらにデータをパターン・サウンドに変換したものなどで再構成し、映像やインスタレーションにします。
 
Rhizomatiks Cronicleは、ライゾマティクスの15年間の作品を可視化したものです。空間上に様々に軸を変えて作品をポイントし、作品の関係をいくつものキーワード(タグ)によって視覚化した相関図が次々と変化していきます。作品の記録映像が所々でインサートされ、意味をイメージにしています。
 
・NFTs and CryptoArt-Experiment 
これも見える化の作品のひとつです。デジタルアートの最新のムーブメントとして、CryptoArtと呼ばれるNFT(代替不能な暗号通貨)によってコピーのできないオリジナルのデジタルアート作品が制作、販売されています。
 
先月3月22日に米 Twitter のジャック・ドーシー最高経営責任者が15年前に登稿した最初のツイートが競売で、約271万ドル(3億1700万円)で落札されたのも同じ仕組みです。日本でも村上隆がNFT作品「お花」の108のバリエーションを販売開始しました。
 
この旬な話題を早速可視化するのは流石です。一定期間のリアル売買データを元に、売買された作品とその情報、制作数、購入価格、購入数、転売数の推移などのグラフ、数値、が空間上に描き出されるインスタレーションです。
 せわしなく大量の作品が売買される様子が可視化されると、熱狂的でバブルめいた雰囲気が伝わって不安になります。 
 
・Rhizomatiks  ×   ELEVENPLAY  “multiplex”
 
Rhizomatiks は ELEVENPLAY という日本のダンスカンパニーと共同でいくつものパフォーマンス
、インスタレーション発表してきました。multiplex は東京都現代美術館を会場にしたもので、ステージ上で踊る5人のダンサー、動く5つのキューブ、映像プロジェクションが融合した作品です。
 ダンサーの動きを撮影した実映像にCGで描き出された映像が合成されて仮想空間では新たな映像作品となります。
 
一方でダンサーのいないステージは、5つのキューブと映像プロジェクションによるインスタレーションとして繰り返し上演されます。
 
 
パフォーマンスのテーマは表現における人間とテクノロジーの融合だと思いますが、それをリアルとバーチャル両面で瞬時に可視化するところにライゾマティクスの創造力と技術力の独自性があります。
 
このほかにR&Dの展示もありました。
 
・Trojan Horse   2021
インターネットのウェブサイトを見る時、裏側で何が行われているかを可視化した作品。
何気なく見ているページの閲覧のデータが世界中のサーバーに次々に飛んで、新たなページが表示されていく。世界中から個人の行動がある意味監視されていることは、ネットに関わるビジネスをしている人間には常識だが、裏側で行われている大掛かりな仕組みをこうして可視化すると、結構インパクトがある。
 
・Messaging Mask   2021
次々と新しいことに取り組む rhizomatiks はコロナ下のライブイベントでも使えるツールも提案している。今ライブイベントは開催することはできても観客はマスクをつけて声も出せない。その状況を解決するデジタルガジェット。マスクの表側にLEDが埋め込まれており、言葉を呟くと光るようになっている。アーティストのパフォーマンスに声ではなく光でリアクションできる。新しいイベントのスタイルが生まれるかもしれない。
 
・particles 2021
 
国内外で多数の受賞を受けたインスタレーション。2011年の作品。巨大なスペースワープを転がるたくさんの玉が暗闇の中で様々に発光する。知ってはいたが実際に見るのは初めて。
 仕組みは、転がる玉の動きを複数のカメラで撮影し三次元の位置情報をリアルタイムで捕捉し、10台のレーザーで光を当てて光らせている。玉の数は10個以上あるが高速でレーザーを走査して同時に全ての玉を光らせることもできる。ソフトからハードまで使いこなすフルスタック集団ならではの作品。
 
このほかに、これまでの活動で製作したもの、例えば、Perfumeのライブで使用した小道具や、デジタル作品のアーカイブも展示されていて見所満載です。