石岡瑛子
血が、汗が、涙がデザインできるか
東京都現代美術館
2021年1月11日(月)
アーティスト石岡瑛子を
観に行ったつもりだったのですが、
デザイナー石岡瑛子を観た、
というのが率直な感想です。
資生堂の宣伝部からスタートして独立、
広告の世界で、パルコ、角川文庫と
時代を引っ張る作品を作り続け、
やがて世界に進出、
マイルス・デイビス、フランシスコ・コッポラ
北京オリンピック、シルク・ド・ソレイユ等
世界中で知られる仕事をしてきました。
その華々しい経歴、強い自己主張、
印象的な発言の内容、例えば
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入社面接の際、
男性社員と同じ仕事と待遇を求めた。
流行は追わない。マーケティングもしない。
デザインに必要なもの
Timeless 時代を超越すること
Originally 独創的であること
Revolutionary 革命的であること
やったことのない仕事がしてみたい。
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といったことから、私はこの人の本性は
アーティストに違いないと想像していました。
ですが実際は、発注があって創作が始まる、
何らかのイベント、プロジェクトに参画する
というデザイナーとしてのスタンスが
基本だったようです。
初期の仕事から
新しい女性像を世に問うていくという
単なる商品の宣伝に留まらないメッセージを
発信していたスケールの大きさは
デザインというスタッフワークに
収まると思えないのですが
ひとりでゼロから創作を始める
アート作品は作っていない。
その点はとても興味深いです。
映画や舞台の衣装デザインの仕事は
石岡瑛子の存在が際立っています。
映画「ドラキュラ」は彼女のデザインが
無ければ、全く違う作品になったでしょう。
しかし「ドラキュラ」はフランシスコ・コッポラの作品であって、彼女の作品ではない。
サバイブするために、結果を出すために
自分の強みを最大限に発揮できる仕事、
自由で奇抜で独創的であることが許される
仕事を選んでいたとも言えるでしょう。
常に未踏の領域を目指し
変わり続ける生き方をしていたが
自分がデザイナーであることは理解していた。
つまり、これが真のスペシャリストと
いうことなのでしょう。
どちらにしても
その素晴らしい足跡が揺らぐことはありません。