原美術館

加藤泉 -  LIKE A ROLLING SNOWBALL

2020年1月5日(日)

 

 


すべての作品が「無題」。これは、つまり「さあ、自由に解釈して下さい。」というメッセージ。さて、どうなるだろう。

 

 

作品は、素材は違っていても人体像。原始美術の人形のように呪術めいて見える造形。女性、男性、子供(幼児)は区別がつく。施された模様のようなものも人体のパーツを簡略化したものらしく具象的。意味はつかみやすい。

 

入り口のすぐ前にあるギャラリー1の中には大きな女性像が一体天井から鎖で吊り下げられ座っている。手足はそれぞれ鎖で繋がれ、鎖の先には石が括り付けられている。4個の石には全て女性の顔が描かれている。あたかも人間関係に縛られて部屋に繋がれている女性のように。一方、部屋を出て一階から二階への階段の壁に同じサイズの男性像の作品がかけられている。こちらは立ち姿では手足が自由。この建物の中で明らかに対をなす一体だ。

ひとつ屋根の下で、家に縛りつけられた女性と自由な男性。なんかとてもステレオタイプな現代の夫婦関係という解釈。我ながら浅いな。

 

ギャラリー2

三人家族の部屋。絵画作品と彫刻作品で構成されている。彫刻作品は、右から、父、子、母、3人が並ぶ。手を繋ぐ鎖は家族の絆を表現している。これを幸せな家族像と見るか、そうでないものと見るか。見た目におどろおどろしいので、ネガティブな家族像と感じるが、特にネガティブなモチーフが配されてはいない。

 

 


絵画作品の多くは上下で分割されている。上半身と下半身で描き方が違う。一枚のカンバスではなく、あえて二枚。まず全身像を何パターンも描いて、上下を組み替えて、いくつもの作品にしたのでは?

 

作品によっては二枚の絵が糸で縫い付けられている。どこか手術の縫い跡のようで、生理的な痛々しさがある。

 

部屋の隅にいる横たわっている像、外で木の枝の間に立っている像もある。これは人ではないかも。コダマとかね。

 

ギャラリー3

一体の男性像の周りにたくさんの赤ん坊。

普通なら女性像の周りに赤ん坊だろう。では男性像ではなく神か?像の頭の上には化仏の如く頭があり、そのまた上にまた頭がある。部屋全体で世界の生命誕生を表現したインスタレーションと見るべきか。

 

ギャラリー5

素材を変えた立体作品が並ぶ。石や木をそのまま使った作品は手足に鎖がなく五体満足な感じ。出産を表現したものもある。半透明の人体像は内側に内臓、筋肉、血管、神経を模したものが入れてある。素材を変えることで色々なタイプの人体像を表現している。

 

予想していたより見やすい展覧会だった。品川の原美術館は今年12 月に閉館となる。今年の展覧会は全てウォッチするつもりだ。