カルチュラルクリエイティブを構成する

インナープレナーとカルマクイーンとエリティスト



環境保護と資本主義という、今まで二極化していた概念のバランスをとり、

地球と共存できるサステイナブルな資本主義という新たな道を切り開いてくれるのが

CSV(Creating Shared Value 共有価値の創造)を積極的に実施されている企業と

Innerpreneurs(インナープレナー)です。


インナープレナーは、

ポール・レイによって発見された、新たに台頭してきたサブカルチャーグループである
カルチュラル・クリエイティブ(CCs)の起業家達です。

インナープレナーは、コンシューマー・アイを経営するマーケティングコンサルタント
Ron Rentel(ロン・レンテル)の著書「Karma Queens, Geek Gods & Innerpreneurs」 で

初めて紹介されました。


著書には9つの消費者タイプが紹介されていますが、

今日は、CCsに属する3つの消費者タイプについてご説明したいと思います。


1つはもちろんインナープレナー。
後の2つはカルマクイーンとエリティスト(環境エリート)です。


アメリカでは、インナープレナーが開発した商品やサービスが、
カルマクイーンやエリティストに支持され、
他の消費者グループへ伝えられ浸透していくという流れがあるように思われます。


ロン・レンテルが紹介している9つの消費者タイプですが、
ロン・レンテルが最終的にたどり着いた消費者を理解する調査方法
「Consumer Immersion -コンシューマー・イマーション」

(消費者からみた世界に徹底的に没入・潜入する方法)によって、
どの製品カテゴリーにも共通してみられた消費者タイプということです。


「Consumer Immersion -コンシューマー・イマーション」について若干ご説明を加えておきます。
ロン・レンテルは、長年実施してきたFGI(フォーカスグループインタビュー)では、
消費者の一歩先をいく新商品アイデアやビジネスアイデアは見つけられないと考え、
トレンドを追うことを始めたそうです。
その結果、開拓されたのが「Consumer Immersion -コンシューマー・イマーション」という手法です。
これは、消費者の生活に徹底的に没入する調査方法です。
人気のある場所を訪ねて自分達が実際に体験する。
通りで、ジムで、スーパーマーケットで消費者に聞く。
最先端をいくレストランや消費者が好むバーなどで、
実際に消費者と食事したりやカクテルを飲みながら話をする。
その製品のエキスパートにインタビューするなど、
ありとあらゆる方法で、実際の消費者の生活に入り込みそこに浸ることで、
どのような傾向がみられるのか、なぜそのような傾向が起きているのかを考えていくわけです。


ロン・レンテルが紹介している消費者タイプは、
インターネットコミュニティを代表する、又はコミュニティ参加者が理想とする
消費者像のように思われます。
オンライン・コミュニティをターゲットにした製品開発する場合に大変参考になります。




◆Innerpreneurs インナープレナー


では、まず、インナープレナーについて考察を深めます。

インナープレナーはリスクテイカーであり、目標を達成するという強いニーズをもつ点では
まさしく起業家(entrepreneurs アントレプレナー)なのですが、
インナープレナーにとって大切なのは、将来の財を成すことではなく、社会に貢献することです。
彼らは、既存概念では考えつかないアイデアを社会貢献可能な事業化へと発展させていきます。


インナープレナーの特徴を以下に纏めてみます。


1)人生が自己実現・社会貢献に動機づけられています。
人生の目的を知りたい・自分の潜在能力を知りたい・

自分らしい何かを達成しながら、社会に貢献したい、といった

内側からやってくる衝動に絶えず突き動かされています。


2)生まれながらのクリエイティビティと向上心があります。
様々な方向から物事を見るので、既存概念の枠を出たアイデアが思い浮かびます。
「もっと現状を良くするには何ができるのか?」と自由に発想していきます。


3)一生を通して自分を成長させようと学び続けます。
「9時から5時までが仕事」「平日と休日」という考え方をしません。
仕事が趣味であり、趣味が仕事。
絶えず学んで考えながら、
仕事に関する知識を深めたり、自分の可能性を拡大し続けます。


4)心の平和を保つことを大事に考えています。
アントレプレナーは目をぎらぎらさせて、見るからに野心や情熱が感じられるかもしれません。
インナープレナーのパーソナリティは、静かで冷静で穏やかであり、
彼らの野心や情熱を見抜くことは難しいかもしれません。

5)インナープレナーは10代だったり中高年であったり、男性であったり女性であったりします。


6)ブロガーが多いです。
たとえ起業しなくても、何かを探求し続け自分が得た洞察を社会にバックしたいと考えます。

日記的ブログではなく、人に知恵やヒントを与える記事を積極的に書いて広めようとします。



ではインナープレナーをもっと理解するために、実話をご紹介します。
引用サイト:
http://www.bizjournals.com/dallas/print-edition/2013/08/09/organic-water-to-expand-store-presence.html?page=all


Koa オーガニック・ウォーター -パーフェクトなジュースを求めてー


Adam Louras(アダム ローラス) と Jonathan Rosenberg(ジョナサン ローセンバーグ)

「環境保護というアイデアが自分達の血とKoaに浸透している。
僕たちがやること全ては、自分達ができる方法で、何としても環境を保護することだ。
僕たちは、環境やパートナーに対して、倫理的に正しいことをしようとしているのだ。」



アダムがビジネススクールに通っていた時に、
彼が飲んでいる100%の野菜&フルーツジュースには
高い糖分が含まれていることを友人に指摘されました。

シュガーフリーのジュースを探したものの欲しい製品が見つからなかったのがきっかけとなり、
フルーツとベジタブルジュースのよい成分をそのまま残し、
味覚や香りや体に悪い成分を取り除く製造技術の開発に着手しました。


アダムのビジョンに共感したジョナサンが、2011年にアダムの事業を手伝うことになります。
二人の個人資金15万ドルを使い果たしたので、投資家を探し始めました。
見せる製品サンプルもないまま、アイデアのみをもって、
ビール、ワイン、オリーブオイル、ジュースメーカーなど9つの企業を訪ねたのですが
協力してくれる企業はありませんでした。
ところが、アルフィンガー・ウォーターのロッキー・アルフィンガー氏が、
話を引き受けてくれたので、2つのベンチャーキャピタルから

60万ドルの資金を受け取ることができました。


アダムのビジョンを実現するための技術は、
15平方メートルの移動式輸送コンテナ内で開発されたそうです。

そして、ついに・・・
野菜・フルーツジュースの味覚や香りを取り除いたオーガニックウォーターKoaが完成し、
100%生分解可能なリサイクルボトルに入れられ発売されました。
シッピングカートももちろん100%生分解可能な段ボールです。


Koaの製造に使われる材料はどの部分も一切捨てられずに使われます。
共働関係にある企業が、フルーツの油や果肉や皮を別利用で使うのです。




Koaには、首尾一貫された環境保護精神が宿っています。

まさしく、カルチュラル・クリエイティブが好むオーセンティック(ほんもの)な製品だと思います。




では、インナープレナーと同じカルチュラル・クリエイティブに属する

カルマクイーンとエリティストについて若干ご説明させて頂きます。



◆Karma Queen カルマクイーン


心の中では自然豊かな田舎暮らしへの憧れをもちながら、
利便性の高い都会に住む女性達です。


年齢は40代50代が中心ですが、20代から70代まで多岐に渡ります。
富裕層というわけではないが、財政的な心配はなく快適な暮らしを送っています。
ヨガや代替医療に興味をもつベジタリアンが多いです。
オーガニックで、ヘルシー&ナチュラル、着やすい・使いやすい製品が大好きです。
環境問題に取り組む企業に好意的です。


カルマクイーンの日常生活をコラージュ化してみました。





◆E-Litists エリティスト


まさしく環境エリートの富裕層。

環境関連産業の主流消費者でもあります。
環境によい製品やサービスがステータスシンボルです。

他の環境保護支持者ほど、環境問題に関する深い知識はありませんが、

何が環境に悪いのかといった浅く広い知識をもっています。

環境によいと言われるモノを生活に積極的に取り入れます。

ただ単に環境によいだけでなく、スタイリッシュであることを求めます。
住まいへのこだわりが強く、グリーンハウスや太陽光屋根ユーザーでもあります。
オーガニック製品の愛用者で、ファーマーズマーケットの利用者です。


エリティストの日常生活をコラージュ化してみました。



アメリカではカルマクイーンやエリティストが支持する製品やサービス市場が伸びています。
日本でも若い女性を中心に「ヘルシー&ナチュラル」志向が強まっていますし、

カルマクィーンご愛用のプレミアムチョコに続きグルメティブームが到来しています。


日本市場で、まだプレゼンスが高くない製品やサービスも多いので、

カルマクイーンやエリティストに支持されている製品やサービスを研究されれば、

新しいビジネスアイデアや新商品アイデアのヒントが得られると思います。