前回のブログで、様々な消費者価値をシリーズでご紹介してきました。
①どんな消費者価値を提供し、
②競合ブランドと何が違うのか
を明確にしなければ、消費者との感情的絆を深める強いブランドは構築できません。
次の課題は、提供する消費者価値と競合ブランドとの違いをいかに伝えるか・・・です。
直感的消費へ移行している現代のイメージエコノミーにあっては、
一瞬にして、"Who I am" & " How I can contribute"を消費者へ伝えなければなりません。
モノと情報が溢れる中、選べる自由を楽しむ反面、
99 Lives (ポップコーンのトレンドを参照ください)を送る消費者は、じっくりと商品を選ぶ時間がありません。
時間のない消費者に「これだ!」と直感してもらうために、
「あなたが求めているモノを私は提供できますよ」というメッセージを
一瞬で伝えて、理解してもらわなければならないのです。
ここで、ブランドパーソナリティ(Brand Personality)の登場です。
いくら素晴らしい消費者価値を提供できるモノづくりをしても、
ブランドパーソナリティに、その価値を消費者に伝える力がなければ、
強いブランドはつくれません。
消費者と話をするのは、製品そのものではなく、ブランドパーソナリティだからです。
ブランドは人間と一緒です。
初対面の時に、その人の内面をよく理解できないので、
着ている洋服や、しぐさや、しゃべり方で、どういった人なのかを判断しますよね。
ブランドパーソナリティは、ブランドの内面(モノ価値)を表現する
洋服であり、しぐさであり、しゃべり方なのです。
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ブランドイメージ指標としての形容詞の弊害について
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今まで、ブランドパーソナリティづくりに、形容詞が使われてきました。
私自身も形容詞を使ってきましたが、形容詞というのは、様々な問題を含んでいました。
1) ブランド発信者間で、形容詞のニュアンスが統一されない。
ブランドロゴ、ネーミング、パッケージデザイン、広告、ウエブサイト、パンフレット、PR、店頭POPと、
ブランド発信には、多くの人々が関わります。
日本でCBO(チーフ・ブランド・オフィサー)制度をとっている企業は殆どありません。
統一したイメージを大勢のスタッフで共有することがとても重要なのですが、
形容詞を指標にすると、統一したイメージを共有しにくいことがあります。
「爽やかな」という形容詞1つとっても、
ある人は春のそよ風を、ある人は渓流のせせらぎを、ある人は海を、ある人は森林をイメージするわけで、
右脳的イメージを左脳的言語で伝えるのは至難の技です。
形容詞のみを使うと、一貫したイメージがブランド発信者間で共有されない危険があります。
2) 時代によって形容詞のイメージは変化する。
5年前の「かわいい」「格好よい」「未来的な」イメージと、現在のイメージは異なります。
時代によって、形容詞から連想されるイメージが変化しますから、
形容詞を指針にすると、長い期間、一貫したブランドイメージを維持することが難しいのです。
3) グローバルブランドの指標としてユニバーサルに使えない。
日本語をそのまま英語に直訳すると、ニュアンスが異なってしまいますよね。
アーカーのブランドパーソナリティ指標もそうでしたが、
原本の英語の形容詞が、日本語に直訳されてしまうとニュアンスが異なってきます。
言語が発展してきた背景となる文化が異なるのですから、これはやむを得ません。
形容詞を指標にすると、一貫したブランドイメージや世界観をユニバーサルに共有することが難しいので、
ブランドをグローバル展開する場合には、かなり注意が必要です。
4) イメージのすべてを包括できない可能性が高い。
消費者がブランドに感じているイメージや、消費者が選好するイメージは、
形容詞を選択してもらう消費者調査によって理解します。
でも、選択肢として提示した形容詞は、
消費者が感じたり、求めているイメージすべてを包括しているのでしょうか?
また、集計時に最も多くの人に選択された形容詞が最も好まれていると判断してよいのでしょうか?
調査の回答者は、1つの形容詞ではなく、選択した3つの形容詞が
かもし出すイメージや世界観を求めていたのかもしれません。
形容詞を使った調査は、イメージのすべてを包括していない(漏れがある)危険があります。
イメージという抽象的な右脳の世界観を、
統計的調査で、単純に左脳的に理解しようとする試みにすでに問題があると思います。
5) 消費者価値を包含できない。
形容詞はイメージを伝えますが、形容詞自体には感情や価値が包含されていません。
形容詞を使ったブランドイメージ指標は、
消費者への感情訴求や消費者価値が伝えにくいのです。
イメージはわかったけど、”So What? (だから何なの?)"なのです。
消費者に一瞬で一目ぼれしてもらうことを目的とした
ブランドの感情や価値を伝えるパーソナリティづくりにおいては、形容詞はパワー不足です。
形容詞の弊害を解決するために、
指針とする形容詞に加え、コラージュを作成しビジュアルイメージを統一するという方法があります。
コラージュによって、課題の1)~3)は解決できるでしょう。
でも、4) イメージのすべてを包括できない可能性が高い。 5) 消費者価値を包含できない
という課題は解決できないのです。
形容詞の課題を解決し、もっと効率的で効果的なブランドパーソナリティのフレームワークを
5年以上にわたって、探し続けてきました。
エニアグラム、16PF、OCEANなどの人間のパーソナリティ指標や感情論などを研究し、
やっと、昨年、ユング心理学を発展させたアーキタイプという理想的フレームワークに出会えました。
アーキタイプは、現在入手可能な方法論の中で、最も素晴らしいフレームワークであり、
ブランドパーソナリティ開発軸として、形容詞の課題として挙げた1)~5)のすべてを解決してくれます。
次回から、シリーズでこのアーキタイプ理論をご紹介していく予定です。