不良が、なにかのはずみで更生し、突如として勉学に目覚める、などというのはドラマなどではわりとよくある。例の「ビリギャル」だとか、今やっている深田恭子主演の、塾を舞台にしたテレビ番組などもそのたぐいだろう。
M子の場合は微妙に違って、更生しないまま、つまりは不良のままで猛勉強するという珍しいパターンだった。そもそも下位クラスの生徒らは、裏で「お客さん」などと揶揄されているように、無駄に授業料だけ払いに来ているような子がほとんどなのだ。しかしこのM子は、担任でもない私をまるで個人指導の教師のごとく200パーセント活用しまくっていたのだから、塾側としては授業料を5倍取ってもいいくらいだったと思う。
とにかくM子は無知である。(えっ、こんなことも知らないのか、マジか)というレベルである。しかし熱心だ。塾で頑張るだけではなく家でも懸命にやっているのが分かる。ホントに珍しい。不良のくせに。そして徹底的に甘えてくる。たとえば、質問(というより彼女の場合は、「さあ今日は○○ページから始めよっかなー」と、もう「個人指導当たり前です」態勢でやってくるのだが)の最中、もよおしてきたりすると
「トイレ行きたい。一人で行くの怖いから、conbourせんせえ一緒に来てえェ」
などと訳の分からぬことを言う。
私が仕事を終えて帰るのを待っていて、
「途中まで一緒に帰ろー」
と寄ってくる。
「手ェつなご」
と言い、近くにいる友人らに
「うちら、恋人同士に見えるっしょ?」
と訊く。
半分おちょくられているのだろうが、あまり女性にはモテない私はまんざら悪い気はしない。
しかしもちろん塾の服務規程があるので
「ダメ!」
「ダメ!」
「ダメ!」
全部ダメ! の一点張りで押し通す。(続く)