つづき。。。だけど、ちょっと話しは「レコードを聴く……2」から離れた所から始めます。。

 

ここ数年、あたしは音楽の事でちょっと悩んでる(?)ことがあった。

 

「音楽を聴く」と言う行為が、自分の生活の中でホットで無くなってしまっていたのだ。

もちろん、音楽は聴くに決まってる。これを生業にしてる身で聴かなくなったら終わりだ。でもだいたいは、「仕事だから聴く」が多く、10代、20代の頃のように音楽を聴いて心が高鳴るということがなくなってしまった。

これは年齢、それに音楽との付き合いの長さ、キャリアや経験から来る倦怠感なのだろうか?

 

ただ、実を言うと「心が高鳴る」事が全く無くなってしまったわけではなく、自分なりに音楽を聴いて心を高鳴らせる方法は持ってはいた。

それは、仕事感覚で聴かないで、酔っぱらって脳みそを空っぽにして聴くのだ(笑)。

数年はこうやって音楽を楽しんでいた。

 

しかし、普段のあたしは仕事モードで音楽を聴いてします。つまり、音を解析してしまっちゃうのだ……。

しかたがないし、そうやって聴けないと音楽科としてまずい部分もあるのだけれども、あの10代、20代のときの様なワクワク感は正直失われていた。

あれは、自分も若くフレッシュで、なにも未だわからなかったから出来たのだろうか?

「このプレイの、このメロのリヴァーブ感がサイコー!」とかって聴いていたんだけど、今だと、これはどうやってリヴァーブかけているのかだいたい想像できてしまう。「リヴァーブが……」なんて聴くのは、その音楽に入り込めている証拠なんだけど、今はそれを冷静に聴いて分析してしまうのであった。

 

あたしの作曲の友達で、「プロは“感じる”よりも頭で理解することが大事」と言う人がいるけど、果たしてそうだろうか?

思い切って言っちゃうが、そんなアタマでっかちで音楽作ったって、ワクワクするものは出来ないとあたしは思うし、そんなだったらあらしは作曲なんてやめるだろう。

あたしも、過去何十年も生きて行くために音楽を作っていた。だけど、何年前からだったか、「生きて行くために音楽を作る」から「音楽を創るために生きている」に変えた。

自分の創る曲を冷静にプロデュースすることは、もう出来ると思う。歳を取ることで、経験やスキルがたまり、落ち着きが出て来た。だけど、あの10代の時のように、音楽を聴く事に対してのホットになる感覚は、失われつつあった。

 

 

さて、ここで、やっと「レコードを聴く……2」になるのだけど、、、

 

 

あたしは、レコード・プレイヤーを先ずは自分の仕事のシステムに繋げ、そこから自分のニア・フィールド・モニターから音を出す事にした。今のあたしの状況で聴くのはこれが一番いいと思った。

 

そして、音を出して……昇天した。

 

一言で言うと、「音楽がリアル」なのだ!

「音がリアル」と言うより、「音楽がリアル」なのだった。

しかも、出音ももちろん気持ちがいい。

これは、スタジオで出している音、創った音を、更にレコード盤の溝に刻み込むからなのか、よりリアルに感じる。

そう、ちょうどレコーディングをしている時の音だ。ミックスとかする前の音、レコーディング中・プレイ中の音、プレイ直後の生々しい感覚がある。

 

特にギターやベースは、そこにプレイヤーがいるかのようなリアルなエネルギーがある。

これはCDになった時点で、なぜかそのリアルな感じは消える。平になってしまい、なんと言えばいいのか、音が遠くなったような、人間味が薄れるのだ。

 

では、ミックスダウンしたばかりの音を。そのスタジオで直後に聴いたらどうかとなると、印象としてはCDになったそれと大差を感じない、、、もちろん全く同じものではないが。我々は「音にお化粧をする」感覚で音楽を作っていた。それをマスタリングして、そしてCDに焼く事で、さらにお化粧されて安心したりした事もある。

ところが、レコード(Vinyl)の音の印象は「スの部分が見えてしまう」と言った感じなのだろうか?

 

レコーディング中、その録った音の中には「いらない」不純物みたいなものがどうしても出て来る。それをミックスをするときに、EQやエフェクターで整理して外していくのだけど、同時に音圧や豊かな響きを出す為にコンプやEQ、それにリヴァーブなんかも足して行くのだ。

ミックスをするときにあたしがポイントだと思っているのは、「余計な倍音をカットし、楽器の音どうしかぶらないように整理していく」と言う事だ。そうする事で、お互いのパートのなわばりをはっきりさせ、その事でそれぞれのパートの音の輪郭は出る。最近の日本のポップスの音は、DTMの出現で、エンジニアではなく、作曲者やクリエイターが自分でミックスする事も多くなっている。その場合、「ここが足りない」と言ってEQで聴こえない箇所をブースとして、コンプやマキシマイザーで潰す事で音の輪郭を出そうとしているように思われる。なんだかデジタル臭さを感じる昨今の音は、殆ど、デジタルで打ち込みソフト音源を使っているからだけど、更にそう言った影響も有るとあたしは思っている。本来は、EQはブーストよりも倍音のカットをすることが大事だ。言葉だけ「カット」と聴くと、なんだか消極的に聴こえるかも知れないけど、でもこれが基本だ。ただし、倍音を思い切ってカットする時も有れば、カットしすぎると、その楽器のエネルギーが落ちてしまう時も有るので、ここはアンバイ良くやる必要がある。

しかし、除き切れないものがある。最近は人間の耳の他、AIなども使うのだけど、それでも取り除けないものがあるのだ。もっと美味い事例えると(あたしの中でのイメージね)、取り除く時の刃物の切り口が良くないのかも知れない。

ところが、ミックスした音をレコード(Vinyl)に刻む事で(……なのだろうか?)、その人間の耳やAIなどでは取り除けない不純物がなくなり、と言うか、切り口が巧いこと再製されて、1つ1つの音の輪郭と人間味が浮き出てきているようにあたしには感じられる。

 

と、まあ、そんな風に、あたしはレコード(Vinyl)を聞いて感じた。

 

レコード(Vinyl)で音楽を聴くのは面白い!!音楽が面白い!

まるで、レコーディングのときに、あたしもそのスタジオのコントロール・ルームかブースで一緒に聴いているような、そんな感覚で音楽が聴こえてくるのだ。

ワクワクするのだ。あの10代の時のように。むしろ、あの時よりもついた知識でその深みも理解出来てる感覚なのだ。

 

あたしは舞い上がり、家に来たいろんな人にCDとレコード(Vinyl)を比較して聴かせてみた。おんなじアルバムを先ずはmp3聴いて、それからCDで聴いて、次にレコード(Vinyl)で聴くのだ。家の娘のだんな(音楽はやってない)、教え子のおまわりさん、教え子の学校先生、車検の車を納車に来たディーラーの人、隣の家の夫婦、ラーメン屋のともだち、高校の先輩……等々(笑)。

 

「僕でわかるかなぁ〜?」

 

20人くらい聴かせて、ビックリしなかったのは、、ひとりもいなかった。

みんな、すごくリアルだと言っていたから、気のせいではないのだ(笑)。

 

あたしの音楽の悩み、「音楽を聴いてもチムどんどんしなくなった」は見事に解消された。

あたしは20数年、なにをやっていたのだろう……(笑)。

 

つづく。