○○舞城王太郎著 ○ 暗闇の中で子供 ○○

 デビュー作「煙か土か食い物」に続く、奈津川サーガ第二弾。ファッキン野郎による連続主婦殴打事件解決後、奈津川家三男愛媛川十三もとい奈津川三郎に、新たなる愛と試練が降りかかる。事件はまだ終わっていなかった!?
 

・キレ  度  4 四郎に比べたら三郎は地味かつ常識人。
・愛情 度  5 愛と愛と愛と愛と…。人並みならぬ愛ばかり。
・ミステリ 度  2 ひらめきの世界。

 自意識との戦いの本です。どこまで言っても愛愛愛。
 暴力的な家庭をイメージできる「経験者」は読んで欲しい。
 凄く凄く凄く共感して打ちのめされる。

※ネタバレあり




(感想)

 四郎格好いいよ。
 デビュー作では四郎視点で、二郎のキレっぷりを慕う四郎ってのが印象的でしたが、今回はとにもかくにも四郎がいい。前半の冴えっぷりと、弟らしくない弟ぶりが最高です。頼りになりすぎ。

 三郎は…四郎に比べると一般的にトーンダウン。
 そのせいか語りは控えめ。四郎のようなトゥララララ~♪ってなぶっ飛びぶりは少ないです。

 今作、三郎はひたすら愛と愛と愛について悩みまくり。

 三郎は四郎と比較するとウジウジ気味です。四郎がスパパパとこなすのに比べるとね。でもそこがいい。人間味があって。
 そんな三郎だからこそ、後半での病院の丸雄とのシーンがグズッとくる。
 皆さん、身に覚えありません?
 良かれと思ってちょっと意見しただけなのに、逆上した親に出て行けといわれて言葉に詰まった経験。
 あの名文句を言われてぐっと来る所はすばらしい。なにあの再現力ー。
 これ知ってるよ!って、読みながらボロボロなきました。
 くっそ~よみがえるぜよ。

 で、DVまで含んじゃうような、「愛ゆえに殺す」的思考を探るたびへレッツゴー。
 愛しているうちに不安がどんどん大きくなって、もしかしたらいなくなるんじゃないかってかってに切羽詰って、生活締め付けて挙句こぶしで殴っちゃう、あの気持ち。あの連鎖。
 
 三郎は暴力愛を乗り越えようとしつつ、そこにさらに自分の価値とか自分の愛とか=エゴに気が付いて突き詰めていく。
 三郎は強い。自分の悪いところを改善しようと立ち向かう。さすが奈津川家の三男だ。

 脈絡なくどっちらけに流れていくまま流れすぎてるストーリーが、最後はぎゅっとひとつになります。この人どうやってプロット立ててんだろ。すーげー。

 三郎が作家なだけあって、ところどころ文学論も出てきます。トマスハリスからの引用もね。


 でも最後はがっくり。
 というか、型破りすぎて付いていけない。
 一人称であるがゆえ、読んでるこっちは想像して悲壮感おびただしいってのに、三郎はハイハイハイテンション。
 
 読者を救わず三郎を救った作者に、でも拍手。
 この人はキャラを救うのであって、読み手はすくわれない。こっちは勝手にキャラに同調して救われ感抱いてるだけで。
 て、そんなの当たり前だよ!でもショックだったんだ…このラスト。

 
 一人称にしておいてこんなにぐぐっと深みに引き込んでおきながら、読者とキャラの同調を打ち破る舞城。
 「これは三郎の物語なんですよー」って終わりに感じました。
 もともと三郎の話なんだから、我がことのようにショックを受けるのは間違ってるし救われようとするのも変な話なんだけど、それでも舞城にすがりつきたくなりました。
 だって(略…流石にオチバレは自粛)。

 理解しようがしまいが、そう言うことを選んで得られるものもあるんだろう。三郎の言うように。 
 人生覚悟が大切ってことか。