インターナショナル・パーティがあるというので、

今回は大空さんたちと、ブリティッシュパブで待ち合わせ。

夏の夕べの涼しい風を頬に受けながら、

緑の草木もさざめくガーデンプレイスを抜け、

重いクラシカルな木製ドアをくぐると・・・・・・

「あらら?」

がらんとしたセピア色の店内には、まだ誰も来ていません。

これは、話を聞き出す絶好のチャンス。


「CAの試験って、このごろは大変みたいですね」


と、カウンターで切り出すと、

大空まいさんは、黒ビールをハーフパイントオーダーしてから、


「そうねえ。面接が4次まであるから大変よ」


と、わたしの右のスツールに、すっと腰掛けました。


「この前の22日、CA候補生応援セミナーをしたでしょう。その時、CAになりたい女の子たちにも言ったけど、4次面接まであると、通り一遍の答えではすまないわけだから、正直かなりキビシイわね。よほど自分をしっかり持ってないとPRできない」


鋭いくちばしのようにピカピカ光る注ぎ口から、

冷えた黒ビールが滑らかな泡とともにグラスを満たしていくのを、

大空まいさんはながめつつ、続けます。


「個人面接もあるし、グループ面接もあるし、

心理テストや外国語の面接や身体測定etc。

とにかく化けの皮をはいでやろう、みたいなものかもね。企業としては」


CAにかかわらず、どんな就職試験でも、それは同じかもしれません。

組織のニーズが最優先されます。

その時その時に、必要とされる人材、期待される人材。

経営グループの構成員バランス。


でも、そんなのは企業のカラーとして、

JALのような老舗であれば、あんまり変わらないのでは?

と聞くと、大空さんは、黒ビールのグラスを置いて大笑い。


「そんなの、トップが替われば、ころっと変わるわよ~」


早い話、優れているからといって、

必ずしも受かるとは、限らないわけです。

劇団や楽団のオーディションを観てください。


全員が主役の芝居やオーケストラなんて、ありえないわけです。

子役も必要、老け役も必要。

ソリストも必要、マルチなアンサンブルメンバーも必要。


向こうがどのような能力を持つ人材を必要としているか???

が、鍵を握っているわけですね。

「試験がミズモノ」っていうのは、そのあたりが原因かもしれません。


これから、CAを受けようと思っている人はどうすれば?


「コミュニケーションの取り方、話し方はとても大事よ。いくら緊張していても、ぼそぼそ話すのは暗い印象を与えちゃうから、やっぱり、好きなものについて話をする時みたいに、活き活き、はきはきしてる方が魅力的」

なるほど・・・・・・他には?


「とりあえず接客のアルバイトででもなんでも、おもてなしの経験をうんと積む。

そして、上質なサービス感覚というものを肌に感じ取って、培うってことがとても重要ね。例えば、自分が受けたいエアラインのファーストクラスに乗ってみるとか」


そ、それは、かなりコストがかかるんじゃないでしょうかねえ?

まあ、未来の自分への投資と思えればいいかも。

入りたい航空会社が決まっていれば。



「そういえば・・・JAL顔、ANA顔っていうカラーがあるのは確かね」


JAL顔とANA顔ですか???


「そうね。よくホテルのロビーなんかで、CAらしきグループを

みかけたりするじゃない。私服でいても、

『あ、あれはJALだな。そっちはANAだな』って、一目でわかるものよ」


どっちがどう違うんでしょう?


「それは、ナイショ。受験生には教えるケドね」


え~、そんなあ・・・・・・


そこへ、ドアベルの音と賑やかな人の群れが現れました。

大空まいさんは、綺麗な手をひらひらさせながら、

黒髪や金の髪の多国籍軍団のテーブルへ。

わたしは、夏野菜のオープンサンドを口に放り込みつつ、

左隣のすらりとした白いブラウスの乙女とおしゃべり。


夏の夜のパブでのひと時。


聞き手は青空はるかでした。 以下次号、乞うご期待!












「CAは、いざという時、物事に動じない人が多いかもしれません」


めったにないこととは言いながら、CAになって天翔けるのも、命がけですね。

綺麗なだけでは、できない仕事。

そんなキャビンアテンダントだからこそ。


夜を徹しての国際線の長~~~いフライトを終え、

無事に彼の地にたどりついた時の開放感は、こたえられません。


スタバの珈琲ショップは、今日は少し賑やかです。


「コーヒー、お好きですか?」


と、聞くと。

大空まいさんは鼻をくんくんさせながら、白桃のような頬で微笑しました。


「ええ。とっても」


「どこのメーカーとか、こだわりあります?」


「イタリアのillyは、コクがあってすごく美味しいですよ」


「イタリアかあ・・・カプチーノの本場ですね~」


世界中をかけめぐるCA。

高級グルメにしか興味がないのでは???


「そんなことないですよ~」


「では、今までで美味しかったなあと思うものってなんですか?」


「そうねえ・・・」


白のジャケットの袖から見える華奢な腕を軽く組んで、

大空まいさんはふと考え込みました。


「ヨーロッパやアメリカなどへのフライトだと、向こうへ着いたらヘロヘロに疲れてるんだけど、その夜ホテルにたどりついたクルーと、一緒に飲んで食べて・・・                  あれが最高ね」


大空さんは、目を細める笑顔で、いきいきと話し始めます。



「フランスのパリだったら、こ~んな大きなフランスパン買って、

カマンベールとかチーズたっぷりぬったやつをほお張りながら、

ボルドーのワインをぐ~~~とあける。向こうのフランスパンって、

ほんと、美味しいのよねえ・・・」


「アメリカだと、カリフォルニアワインですか?」

と茶々を入れると、大空さんはいたずらっぽく小瓶を仰ぐ真似をしてみせました。


「バドよ。バドワイザー!」

「なるほど。ビールですか!で、そのあとは?」

「とにかく、寝る。時差ぼけもあるし」

「自由時間は何日ぐらい?」

「たいてい、2日かな。だから、酒盛りのあくる日は買い物!これっきゃない」


それで、また帰国便に乗り組む。

見かけによらずスゴイパワーですね・・・。


「そういうこと。仲間といっしょに、なんだかんだいいながら、なにもかも忘れて                 楽しめるわね。まあ、あれがあったから、長く勤められたのかなあ・・・・・・」


大空さんは、ちょっぴりしんみりした口調でつぶやきました。


またJALが4000人規模のリストラですね。

長年なじんだ仲間が職場を去っていくのは、辛いものです。

見送るより、見送られた方がいいという人もいます。

たしかにそうかもしれませんが。


この変革の時代に、

経営陣の対応が、事なかれ主義の日和見主義でなく、

もっとしっかりしてれば。

確かに親方日の丸・鶴に●では仕方ないかもしれませんが。


色んな思いが胸をよぎります。


まあ、起きたことは起きたこととして。


さてこれからどうするのか?

それが、一番大事なこと。

仲間のことを思う大空さんは、唇をきゅっと噛み締めました。


カリフォルニアの青空のような笑い声。

またいつか聞かせてください。


カスタマーに上質なサービスをするには、

CAが元気でなきゃ。


元気の素。

CAの秘かな楽しみが、伝説にならないようにと祈るほかはありません。


聞き手は、青空はるかでした。  以下次号、乞うご期待!!!




CA(キャビンアテンダント)は、憧れの仕事。

今でも、CAになりたい!と願いつつ、日夜努力を続けている若い女性は大勢います。

先日、関空からJALに乗ったとき、CAさんのくっきりした横顔と

細いウエストに女の目から見ても、ホレボレしたものです。

CAだから細いのか、細いからCAなのか???

そのあたり、どうなんでしょう?


「CAって、見た目より、けっこうキツイ肉体労働ですよ」

大空まいさんは、スタバのスモールカップをちょっと粋に持ち上げ、

カフェを一口してから、続けます。

「長く続けるのは、至難の業。四六時中かがんだり、重い荷物を持ち上げたりして、腰を痛めることも多いんです。医者や整体とは、ずっと縁が切れません」

笑いながら、大空まいさんは、ちょっと苦そうにまた珈琲を一口。

乗客から見ると、エレガントに見えますが・・・舞台裏は厳しいんですね。


ガラス窓の外は、緑の街路樹。

その合間をぬうように行き交うオフィス街の人々が、流れをつくって交差点を渡っていきます。

シグナルは赤信号。


「忘れられない体験って、ありますか?」

と、聞くと。

しばらく黙り込んでいた大空さんが、ふいに髪を揺らし、

マスカラを綺麗にぬったチャーミングな瞳を上げて天井を仰ぎました

天井のファンが、ゆっくり回っています。


「忘れられないのは、胴体着陸ね」

「・・・胴体着陸ですか?」

「そう。一度、香港から帰ってくるとき、滑走路は目の前、もう着陸寸前、

なのに着陸用の車輪が出ない~!ということがあって、冷や汗は出る、怖いのなんのって」

「その時、どんなことを考えました?」

「それが、おかしいんだけど。このまま機体ごと爆発して死んだら困る。だってね」

大空さんは、ゲラゲラ笑い出した。

「フライトの前に、掃除もしないで出てきてて、私の家の部屋中ひっくり返ったままでしょう。

片付けもできないヤツだったのかって、みんなにバレるのもイヤだな、なんて考えた」


こちらも、つられて大笑い。

「そんなもんなんですよね~~~」

明るい笑い声がスタバの店内に響きます。

ブリティッシュ・エアラインに乗った時、

わたしもあわや墜落という経験をしたことを思い出しました。

乱気流に巻き込まれ、ジャンボ機が飛び跳ね、激しく上下に揺さぶられて。

頭上から鞄は降ってくるわ、女子高生は泣き喚くわ、黄色い酸素マスクが飛び出てくるわ、

もう大変。

その時、わかったことがあります。


「本当に危険な時って、案外冷静だったり、機内は返って静かだったりするんですよね。

CAは、いざという時、物事に動じない人が多いかもしれません」


めったにないこととは言いながら、CAになって天翔けるのも、命がけですね。

綺麗なだけでは、できない仕事。

他にも色々、舞台裏でのお話がありそうです。


聞き手は、青空はるかでした。  以下次号、乞うご期待!!!