秋の訪れを感じる日、彼女は真新しいノースリーブのワンピースを着て、とても美しかった。

夏休みも終わり新学期を迎えた9月のこと。
その日、アキの両親は彼女の弟のサッカーの試合観戦で出かけていて留守だった。

お昼過ぎに小石川の植物園で待ち合わせ、彼女の家に向かう。
彼女の家に上がるのは、この時が初めてだ。

夏の初め、はじめてアキとキスを交わした日から、僕たちは会うたびにキスをした。
下校途中のとある雑居ビル、誰もいない屋上が僕たちの密会場所となった。
二人の交わすキスは、むさぼり合うように、次第に激しいものとなっていく。

彼女は中学から女子高だったので、僕と付き合うようになるまで男友達さえいなかった。
そんな箱入り娘で純真だった彼女を僕は大切にしたいと思っていたが、欲望はとどまることを知らない。

僕はもうキスだけでは我慢できなくなっていた。二人の関係は加速度的にどんどん進んでいった。
キスをしたまま、制服のブラウスの上から彼女の胸に触れる。
「あっ」アキは一瞬とまどい、身体を固くする。

恋は盲目。いつしか僕らは、お互いを激しく求めあうようになっていた。

彼女の家は、真新しいマンションの3階の角部屋で、居間からの眺めが気持ちよかった。
家の中は整然と片付いていて、家庭の厳格さが伝わってくる。
壁にはコピーのシャガールが掛かっている。父親の趣味らしい。

アキの部屋は東側に窓がある洋室で、6畳あまりのスペースは女の子らしく暖色系にまとめられていた。
部屋に漂う、彼女のいい匂いが心地よい。

僕たちはしばらくソファーに腰をおろして、彼女の中学の卒業アルバムを見ていた。
たった半年前の写真なのだが、アルバムの中のアキは今よりずっと幼く見える。

「アキは誰よりかわいいよ。」
「嘘、またうまいこと言って・・・」
「嘘じゃないよ・・・アキ、好きだよ、こっちこいよ。」

僕はアキを引きよせると、肩に手をまわした。

いつも以上に長いキスをした。
キスの後、お互いの視線を絡ませる。

僕はアキを抱き上げ、ベッドに下ろした。
再び向かい合って見つめ合う。

彼女は少し不安そうな表情をしたが、決心がついたのか、やがて静かに目を閉じた。
僕は彼女のことを、この上なく愛しく感じた。


それは僕にとっても、アキにとっても初めての経験だった。
初めてだったが、事前に調べた情報ほど大変なことではなく、全てはすんなりと運んだ。
その日、僕とアキは一つになった。

何もかも終わった後、彼女の瞳にはうっすらと光るものがあった。

僕は涙の訳を知りたかったが、聞かなかった。



その後、僕とアキは半年ほど付きあった。

3年になり部活が終わり、登校時間が変わると、僕たちの距離も少しずつ離れだした。
僕が受験勉強に本格的に打ち込みはじめた夏のはじめ頃、2人の関係は自然と終止符を打った。

彼女のことを嫌いになった訳ではない。
ただ高校時代の恋愛が突然終わってしまうように、僕たちもそれぞれの道を歩き始めた。

あの高2の秋の日から、どれくらい長い時が流れただろうか。
アキと過ごした一瞬の時間、あの輝きは今も褪せない。そっと僕の心の中にある。

彼女は僕の思い出の1ページとなった。



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今宵、宮古島の雨は上がり、西の空に星が輝きだした。
何万光年、遥か彼方から発せられた恒星の光は、永い時を経て今この地に流れ着く。
太古の記憶をよび醒ますかのように。