それは高3の冬の始まりごろ、12月のよく晴れた日のこと、
受験勉強も大詰めを迎え授業後の補習を受けていた時だった。
突然担任から呼ばれた僕は、そのままタクシーに乗せられて病院に向かった。
姉が自動車事故に巻き込まれたという。
状況の解らない僕は、ただ漠然とした不安を抱えて病院にたどり着いた。
案内されたのは病室ではなく、薄暗い霊安室だった。
そこには姉が眠るように横たわっていた。
「お姉さんですか」と聞かれたのだと思う。声が出ず、ただ肯いた気がする。
不思議と涙は出ず、静かな時が永遠のように流れた。
姉は目を閉じていて、白く美しかった。
そっと手を握った。まだ暖かさが残っている。
幼いころからよく手を引かれて、いろんなところに連れて行ってもらった手だ。
そして、母を知らない僕をここまで育ててくれた手。
子供の頃とても大きく強く感じた姉の手が、とても細く戸惑う。
別れはあっけないほどに、駆け足で過ぎて行った。
僕に残されたのは、ものごごろついたころからの姉との膨大な思い出と、
姉が僕の進学のためにと積み立ててくれたお金、僕が受取人となっていた姉の生命保険のお金だった。
自立するまでの蓄えとしては充分すぎるものであった。
受験を終えるまで僕は横浜の親戚の家で過ごした。
4月、僕はかつて姉が通った大学の門をくぐり、市ヶ谷の実家に戻った。
6年前、姉がかたずけていた心理学の教科書は、まだ書棚の奥にあった。
本を手に取ると、姉の夢が少し理解できたような気がして、なんだか嬉しかった。
受験勉強も大詰めを迎え授業後の補習を受けていた時だった。
突然担任から呼ばれた僕は、そのままタクシーに乗せられて病院に向かった。
姉が自動車事故に巻き込まれたという。
状況の解らない僕は、ただ漠然とした不安を抱えて病院にたどり着いた。
案内されたのは病室ではなく、薄暗い霊安室だった。
そこには姉が眠るように横たわっていた。
「お姉さんですか」と聞かれたのだと思う。声が出ず、ただ肯いた気がする。
不思議と涙は出ず、静かな時が永遠のように流れた。
姉は目を閉じていて、白く美しかった。
そっと手を握った。まだ暖かさが残っている。
幼いころからよく手を引かれて、いろんなところに連れて行ってもらった手だ。
そして、母を知らない僕をここまで育ててくれた手。
子供の頃とても大きく強く感じた姉の手が、とても細く戸惑う。
別れはあっけないほどに、駆け足で過ぎて行った。
僕に残されたのは、ものごごろついたころからの姉との膨大な思い出と、
姉が僕の進学のためにと積み立ててくれたお金、僕が受取人となっていた姉の生命保険のお金だった。
自立するまでの蓄えとしては充分すぎるものであった。
受験を終えるまで僕は横浜の親戚の家で過ごした。
4月、僕はかつて姉が通った大学の門をくぐり、市ヶ谷の実家に戻った。
6年前、姉がかたずけていた心理学の教科書は、まだ書棚の奥にあった。
本を手に取ると、姉の夢が少し理解できたような気がして、なんだか嬉しかった。