2024年1月2日の夕方、JAL所有の飛行機が羽田空港着陸時に海上保安庁所有の飛行機と接触し、海上保安庁所有の飛行機の乗組員5人が死亡する痛ましい事故が起きました。この海上保安庁所有の飛行機がその前日の元日に起きた能登半島地震の救助対応をしていたこともあり、大変ショッキングでした。

 通常は同じ滑走路に飛行機2機が入ることはあり得ないということですが、なぜ、入ってしまったのか?

 管制官とJAL、管制官と海上保安庁とのやりとり(バーバル・コミュニケーション)から分かってきたのは、JALも海上保安庁もそれぞれに滑走路への侵入許可を得ているという認識だった、ということです。

 それぞれの認識を是とすると、管制官の伝え方が誤解を与えるコミュニケーションの取り方だったのではないか、ということになりますが、その後、ボイスレコーダーの解析が進められて、JAL機には着陸許可を出し、海上保安庁機には離陸許可を出していないことが明確になりました。

 つまり、海上保安庁機の機長がミスジャッジして、離陸許可を得たという判断をし、滑走路まで侵入し、着陸しようとしていたJAL機と接触してしまったことになります。

 一連の出来事から学ぶべきこととして、バーバル・コミュニケーションのやりとりについてはヒューマンエラーが発生することを念頭に入れておく必要がある、ということを常に意識して、何重にも聞き間違いがないかを確認するということが必要だということです。

 時には命取りになる可能性がありますので、指示を出している側も、指示を出されている側も、意思疎通がしっかり図れているかを確認し合うことを徹底していくことに手を抜かず、企業経営していかなければならないと考えます。

 長年コンサルティング活動に従事してきていますが、数々のクライアント先の社長が、「自分が伝えたいことが、なぜ、部下に伝わらないのか」「社長業は思った以上にコミュニケーション業だと思う」ということを私に言ってきたことを思い出しました。

 デジタル化していく世の中でもアナログなコミュニケーションが肝の部分を担うことは十分あり得ると思いますので、益々コミュニケーション力を磨くことが、話し手と聞き手にのぞまれてくると予想します。

 対面で、ある程度話し手と聞き手とが時間に余裕がある場合のコミュニケーションであればヒューマンエラーを防止できる可能性は相対的に高くなると思いますが、そうでない場合(今回の飛行機接触時では英語での非接触におけるコミュニケーション)、例えば、オンラインにより、人間関係が構築されていないケースにおけるコミュニケーションなどでは、共通目的のすり合わせと、それを達成するために短時間で効果的なコミュニケーションを展開しないといけない状況下においては、双方がある一定基準以上の質的に担保されたコミュニケーション力がないといけなくなってくると思います。

 日々のクライアントとの会話の中で、「部下には言っているのだけど、理解してくれないんだよね」という意識の方がまだまだ多数を占めているように感じている中では、コミュニケーションの不全により共通目的が達成されていないケースが多々あるのではないか、と考えております。

 コミュニケーションは話し手も聞き手もお互いが全神経を集中して確かめ合っていかないといけないことだという当たり前のことを認識し、経営・事業に参画していかなくてはならないと思います。