<この記事はMasayaが担当します>

 これまで2回にわたってご紹介してきた、南仏マルセイユ(Marseille)にあるナポレオン3世時代の宮殿庭園。それらは共に「ファロ(Pharo)」という名で呼ばれていましたね。ところでこの名前、一体どのような由来や意味を持つものなのでしょうか。人名?地名?それともフランス皇帝に縁のあるものの名前?いろいろと想像ができます。

 

 その答えは…

 

 

 そう、実は「地名」なのです。

 

 「ファロ」という名は、ファロ宮殿や庭園がある丘に隣接する入り江に由来し、そこはオクシタン語(※1)で「ル・ファロ(Le Farot)」と呼ばれていました。これは一般的なフランス語で「灯台(Le phare ル・ファー)」にあたります。かつては海上の見張り番を受け入れていたというこの入り江。14世紀頃には既に機能していたようです。ちょうど旧港(Vieux port ヴュー・ポー)の入り口に位置することから、海上監視に適していたのでしょう。マルセイユにおいて大切な役割を担っていた場所であったといえます。この「Le Farot」という地名は後々、入り江の界隈を指すようになっていきました。そして、綴りは変わりましたが、ナポレオン3世が望んだ邸宅とその周囲の庭園にもその名が取られるようになったのです。

 

 ちなみに、ファロ宮殿と庭園があるのはマルセイユに16ある行政区の内の第7区。当区はさらに7つの街区で構成され、そのうちの1つが「ル・ファロ(Le Pharo)」と呼ばれています。そこには同じ名前を冠する立派な宮殿が。まるで灯台のようにマルセイユの港とその近海を見守っているようなその姿を見ると、なんだかピッタリな名前に思えてきます。

 

 そしてもう一点、ファロ宮殿及び庭園がある丘の名前「テストゥ・(ド・)モー(Teste (de) more)」についても触れておきましょう。こちらも古くからの呼び名で、「Teste」というのは一般的なフランス語でいう「テットゥ(Tête=頭、先端等の意味)」のガスコーニュ語表記(※2)。ただし、ガスコーニュ語で「Tête」には岬という意味があります。また、「More」は古いフランス語表記で、ムーア人(※3)のこと。現在では「Maure」と書きます。つまり、「テストゥ・(ド・)モー」は「ムーア人の岬」という意味になりますね。

 このように呼ばれてきた理由にはどういった背景があるのか、そちらは残念ながら判然としません。しかしいずれにしても、国際色豊かなマルセイユらしい地名といえそうです。

 

 地名ひとつにも多くの物語がある「Le Pharo」。お散歩しながら様々な時代の姿を想像してみると、よりマルセイユの奥深さを感じられるかもしれませんよ。

 

 

※1 オクシタン語(またはオック語)は、ロワール以南のフランス南部において、一部地域を除いて話されている言語の総称。マルセイユの辺りで話されるプロヴァンス語も、その1つである。フランス語の1方言として捉えられる場合もあるが、元はロワール以北で話されていたいわゆる一般的なフランス語はオイル語が起源であるのに対して、南仏のオクシタン語はロマンス語起源とされる(ラテン語がベースとなっている点は共通である)。

※2 オクシタン語の1方言(オクシタン語を形成する1言語とする考え方もある)。ボルドー以南やトゥールーズより西で話されている。

※3 主にアフリカ北西部に居住するアラブ人とベルベル人(アフリカ北部の先住民族)の混血人種のこと。

 

 

 

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(参照元)

・"Le Pharo Quartier-village à visiter", Provence7 (2018年8月22日閲覧)

・"PALAIS DU PHARO A MARSEILLE", newhotel (2018年8月22日閲覧)

・"JARDIN DU PHARO-JARDIN EMILE DUCLAUX", マルセイユ観光案内所ホームページ (2018年8月22日閲覧)

・"Le Palais du Pharo", My Guide MARSEILLE.fr (2018年8月22日閲覧)

・"Palais du Pharo", マルセイユ市ホームページ (2018年8月22日閲覧)

・"L'histoire du Palais du Pharo, monument phare de Marseille ordonée par Napoléon III", made in marseille (2018年8月22日閲覧)