岬は泣いた。自分でもおかしくなったんじゃないか、と思うくらい泣いて泣いて、泣きじやくった。
この涙がいったいどこから湧きでてくるものなのか、涙の理由(わけ)もわからなくて、ただ悲しいのでもなく、切ないのでもなく、滔々と涙はあふれて流れた。
友だちにいじめられたからだろうか。
それともつき合っていた彼氏と別れたためだろうか。
頭のなかでさまざまな思いが、渦巻きよぎったが、どれもこれも、この涙があふれて流れ出る理由に当てはまらなかった。
だが途方に暮れる岬はふと思った。
この涙は悲しいのでもなく、切ないのでもなく、友だちにいじめられたためでもなく、そして彼氏と別れたからでもなく、ただただ涙は流れているし、わけもなく泣いているのだ、ということを。
そういう涙があるということを、今まで生きてきて気づかなかったけれど、人生にはそういうことが時にあるのだと、今さらながらに岬は思った。
悲しみなどの理由に色づけされた涙は、たぶん本当の涙ではない。…
真の涙は、ただあふれ、流れてこぼれ落ちるものなのだ。
そして今、それが自分にとってなににも増して切実で、そして大切で必要なことなのだと思った。
そうして岬は、涙の流れるのに身をまかせた。
涙は心の奥底の、澄んだ貯水池みたいなところから枯れることなく、こんこんとあふれて湧き出た。
そう静かにひっそりと。