長い間、私はフランスの友人と文通をしていました。
その頃はまだ今ほどパソコンも普及しておらず、メールを交換するという習慣もあり
ませんでした。
エアメールを送ると、それから2週間もの間、毎日ポストをチェックして返事が来るのを待ちました。
時には本などの小さなプレゼントが同封されていたり、バカンス先からのカードだったり・・・
受け取ると、まるでフランスにトリップしたような気持ちになったものです。
その友達とパリで会うことになりました。
待ち合わせ場所はノートルダム寺院前。
友人は2人。男性と女性ひとりずつ。
2人はパリの近郊に住んでいます。2人の家は車で30分ぐらいの距離。近くに住んでいます。
しかし、2人も文通の繋がりだけで、会うのは今日が初めて。
そう。今日は3人とも会うのが初めてなのです。
待ち合わせ時間より少し早めに地下鉄の駅「サン・ミッシェル」に到着しました。
ここから歩いていけるはず。
地下鉄の駅を出ると、キョロキョロあたりを見回して、それらしい建物がないか探しました。
が、一向に見当たりません。
目の前に橋が見えました。
おそらくセーヌ川だということはわかります。
私は川に沿って歩き始めました。
駅を出て30分。まだ寺院を見つけられません。
「そうだ! 電話をして迎えに来てもらおう!」
なんで今まで気がつかなかったのだろう・・・ きっと友人ならパリに詳しいはず。すぐに私を見つけてくれるよね![]()
そう気がつくと急いでカフェに入りました。
パリの街中にはあまり公衆電話がありません。
電話やトイレを利用したい時はカフェに入るのが基本です。
トゥルルルルル・・・・・・![]()
「ウィ?(はい?)」
ヤッタ~
電話が繋がったからこれで大丈夫
安心安心♪
「実は迷子になっちゃってたどり着けないの・・・ 迎えに来てもらえないかしら?」
そういうと彼女はすぐにこう答えた。
「いいけど・・・ それで今どこ?」
「・・・・・・・・・・・・」
わからない・・・ 私はどこ???
それでは迎えに行けないわね・・・ ということで、またひたすら歩いて行きました。
くねくねと小径を入り込み、更に30分が経過した頃、ようやく目の前に大きな寺院が!
そして、待ちくたびれた風のフランス人カップルが
、
1時間も遅れて到着した私を笑顔で迎えてくれました![]()
「やっと会えたわね!」
そう言って何度も私を抱きしめる彼女。
「遥々来てくれてありがとう。出会いに感謝しなきゃ。」
そう言いながら、頬に頬をくっつける彼。
私は・・・と言えば、平常心を装いながらも内心はドキドキです![]()
「これであってる? アレ? チュって音を立ててするの?」
そんな疑問が頭の中をグルグル回りながら、
こんな大勢の前でキス(正確にはビズ)をしてしまったという衝撃で顔が真っ赤です。
周囲は観光客だらけ。 日本人も沢山います。
「折角会えたのだし、ゆっくりおしゃべりしましょうよ
」
そうして、私達はまだ観光せぬノートルダム寺院を後にしてカフェへと向かいました。
「ショコラを3つ。」
地元の人がカウンターに座ってカフェの主人と楽しそうに話しています。
カフェのテーブルはゲームになっていて、とってもレトロな雰囲気。
そんな中、私達の会話がぎこちなく進んでいきます。
「綺麗だし格好良いなぁ・・・」
端整な顔立ちのふたりにちょっと気後れしつつ、今まで手紙には書ききれなかったたくさんの報告を交わしました。
ショコラをすすりながら話すこと3時間。
カフェを出ると辺りは日が暮れ始めていました。
「またすぐに再会しましょう。」
そう言って交わすビズ。
左と右を交互に4回、音を立てながら頬をくっつけては離します。
離れがたい・・・
少しでも別れの時を引き伸ばすようにゆっくりと頬を離す私。
もしかして、このビズが無ければ、こんなには淋しくはならなかったのかもしれない・・・
ビズは、恋人同士でするキスとは違う存在。
でも、お互いの気持ちを近づけてくれました。
「さよなら。」
にこやかにそう言う友達。
さよなら・・・
さっきの頬に触れた温かい感触を思い出しながら、思わず涙ぐんでしまったのでした・・・

