ヒトノカタチ、カゾクノカタチ
今年の日本アカデミー賞を受賞した映画「八日目の蝉」。とかく永作博美さんの演技が素晴らしかった。
原作者の角田光代さんの本は他に「対岸の彼女」「だれかのいとしいひと」も読んだ事がある。角田さんは乾いた現実を描くのが非常に上手い。
家族ものの連作短編を読んだのは、村山里佳さんの「星々の舟」以来だった。
郊外のマンション「ダンチ」で暮らす京橋家。
この一家の家庭方針は、なにごともつつみかくさず話すこと。
表面上は明るく円満に暮らし続ける家族。実際はそれぞれに秘密を抱えており、この一家は既に崩壊している様が光と影のように映し出される。
・ラブリーホーム
明朗快活な長女の章。
同級生の男の子と付き合っていて、仲のいい女友達はいない。家族想いな反面、知らない男とホテルに行くような今時の女子高生。
・チョロQ
不倫を続ける父の章。
「あ~逃げてえ」が口癖の短絡思考なダメ男。唯一感心したところが、切り取った絵のように覚えていた家族の後ろ姿。
・空中庭園
暗く重い母の章。
これまで明るい様子で描かれていた母の心の闇におののく事となる。
「京橋家は私の完全ある計画のもとに端を発している」、最後の絶望感は半端ない。
・キルト
回想する祖母の章。
前章の母娘の関係性を補完する形で書かれている。実の娘には煙たがられるが、孫に頼られるおばあちゃんは何だか微笑ましい。
・鍵つきドア
不倫相手の女性の章。
唯一、京橋家の一員でない人物で綴られているのは、この家族を外からみた視点で描く意図があったからだと痛感する。
・光の、闇の
年の割に達観している長男の章。
学校ではいじめにあっていて、家では人知れず重苦しさを感じているものの至って冷静で落ち着き払っている。前世占いと闇の寺が印象深い。

やはり、秀作だったのは表題にもなっている「空中庭園」だったと思う。
もし完全犯罪を思いついたら小説を書こう、という出だしなんか最高であるww
母の作ったみじめな家庭とは違う、私の作り上げた家庭に、隠すべき恥ずかしい事も、悪い事も、みっともない事も存在しない。だから何でも言い合おうと私は繰り返し提案したのだった。
家族のあり方とはどうあるべきか、
是非この本を手に取って考えてほしい。
PS 明るく暗く鋭く穏やかな人へ
序盤の長女の章にこんなくだりがあった。
大型ショッピングモール「ディスカバリー・センター」は、この町のトウキョウであり、この町のディズニーランドであり、この町の飛行場であり外国であり、更生施設であり職業安定所である。
郊外の小さな小さな世界、これはそこで暮らす一家の些細な物語。
狭い世界に閉じ込められ、出口は見えない。
どこにでもある残酷な物語だ。
解説もしっかり目を通す読書家より
