暗いところで待ち合わせ | My favorite is …

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好きな音楽や本、映画に出逢った時、そこに関わるエピソードが必ずあります。

人間は時間的存在である。

それゆえに、過去の断片化した記憶を綴り、書き記していこうと思います。

ああ、久しぶりに本を一気読みしてしまった。

著者の乙一さんを知ったのは、会社の同僚が「ZOO」を貸してくれたとき。

何にも深く考えていなそうな軽い感じの女性という印象だったので、貸してくれた本の内容と奥深さに少し驚いた。


天真爛漫という言葉がぴったりの女性だった。人への気遣いや配慮など少しも考えていないように思えた。

しかし、話を聞くとそうでもなかった。


外見からは想像も出来ないほど、人との関わり合いや仕事や恋に悩んでいた。

おそらく話をしてくれた内容は抱える悩みの10分の1にも満たないものだったと思う。


全てを打ち明けられるほど、他の誰かに頼り切ってしまう事は決してない。

結局、人は誰しも孤独を抱えたまま、
ひとり歩いていかなければならないのだから…







彼と彼女の視点で綴られる本作。

彼女が暗闇の世界に身を置いたのは、大学を卒業した頃。

亡くなった父と2人暮らしをしていた駅近くの古い家屋に独り暮らしていた。


外界との関わりは、気にかけてくれる1人の友人のみ。彼女はこのまま植物のように静かに朽ちてゆく事を望んでいた。



そんな彼女の家に、独りの男が忍び込む。
男は駅のホームで起きた殺人事件の容疑者として警察に追われていた。

そんな彼の存在を目の見えない彼女も気付いていたが、知らない振りをする事に決める。

奇妙な二人の生活はそうして始まった。



彼女は毎朝決まった時間に起きて窓を開け、空気を入れ替える。

彼との距離数十センチ。足を丸めていなければぶつかってしまう距離だった。


彼女はストーブの火をわざと強くした、眠った振りをして彼の反応を伺う。


彼は不意に落ちてきた土鍋を受け止め、彼女を助けてしまう。

あ、ありがとう、ごく自然に出てしまった言葉を飲み込み、彼女は少し後悔する。


彼女は二人分の食事を用意する、彼は黙って席につき一緒に食事を取る。


昨日スーパーで買ってきたものが台所に散乱していたはずが、翌日きれいに片付いていた。

目は見えない、でも涙だけは流れるようにできていた。






事件は悲しい結末を迎えるが、最後の会話のやり取りに救われた気がする。

アパートを追い出されたんだ、そう話をすると、そこが空いてますよと言いながら、彼女は居間の片隅を指差した。


一人で外を歩く練習は…そう尋ねると、彼女は黙り口を尖がらせた。


一人で歩く練習、もちろんやるつもりですとも。







P.S いつか本を貸してくれた元同僚へ

通勤中によく読書をすると言っていたね。実家から会社までの通勤時間は約2時間。
一人で暮らす事など考えもしない箱入り娘。

生意気で気分屋、ひねた性格は取扱注意のラベルを貼って梱包しておかないと。陶器のようにひび割れやすい君なのだから。

本を貸してもらってそれきりの同僚より