読み始めたのは3年前だったろうか…
なぜこの本を買ったのか今では覚えていない。
買っても読まずに置いてある本は幾つもある。たいした理由はないのだろう。
最後まで読んだどうか分からずに手にしたこの本を読みきったのはつい最近の事。
本作は一つの家族を題材にした村山由佳さんの連作短編小説である。
■雪虫
疎遠にしていた実家へ15年振りに戻る次男の章
■ひとりしずか
秘めたる想いを隠す儚気な長女の章
■青葉闇
自分の居場所を求める団塊世代の長男の章
■名の木散る
戦争の傷を抱え、故人を想う偏狂な父親の章
※他2編収録
母親の視点がないのが逆に存在を引き立たせていて、偏屈で家族に怒鳴り散らす父親が、最後には侘しさを感じさせずにはいられない姿に映った。
明るく人懐こい末娘は実はそれを演じてるに過ぎず、野菜を育てる事に居場所を見出す長男はどこか凡庸で共感させられる所がある。
亡き妻の墓掃除をする父親と長女。
そこに次男が立ち寄った時は不思議と気持ちが高揚してきた。
その場で語る言葉は少なくとも、これまでの回想と折り重なり、読み終わってなお登場人物たちに想いを馳せる本となった。
本書の母親と私の祖母がかさなり、ふと思い返したので、ここに綴る。
よく茶の間で喋った事と丸まった背中。
夜眠れなくなった時に一緒に寝てくれた事。
相撲とアニメでよくチャンネル争いをした事。
野菜の箱作りを手伝い、お小遣いをくれた事。
祖父とは毎晩、言い争いばかりしていた事。
家を出る前から祖母の体調が芳しくないのは知っていたので、訃報の報せを聞いた時は冷静だった。
ただ、実家にむかう新幹線の中で、私は祖母を想い泣いた。
私が最後から2番目に流した涙だった。
葬式が終わった頃、
病室で死にたくないと父に縋ったと、
祖母の様子を聞かされた時は、
胸がきゅっとしめつけられた…
生前に病室で、
祖母の頭を起こしてあげた時、
「ありがとう」と言ってくれた、
そのあまりに小さい声が、
遠く響いた…
P.S おばあちゃんへ
幼い頃、夜怖くて眠れずにすすり泣いた私に毛布をかけ優しく包んでくれた。
ひんやりとした布団と古い家屋の静けさに心もふっと安らぎ、私は眠りにつく事ができた。あの時はありがとう。
愛想のない孫より

