ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです! -4ページ目

ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです!

プロのライターでも経営者でも間違えることがある敬語。相手を思いやるコミュニケーションツールとして「ほどよい敬語」を使いこなして「デキル人」になっちゃおう。

Q:「申し込み」「申し出」は謙譲語の働きが失われていると知りました。では、「申し〜」がつくその他の言葉(「申し伝える」「申し添える」など)も全て、謙譲語性が失われていますか?

 

前記事で、「お申し出ください」「お申し込みください」では、「申す」の謙譲語としての意味が失われているため、相手の動作に使ってもかまわないことを書きました。

 

 

すると、その他の「申し付ける」「申し伝える」なども謙譲語の意味が失われているのか?という疑問がわいてきますよね。


結論から言うと、そんなことはありません。「申し出る」「申し込む」については謙譲語性が失われていますが、他の言葉についても同じとは言えません。

「申し〜」と他の語を組み合わせると「言って〜する」という意味になります。

いくつか例を挙げましょう。

●謙譲語Iの性質を持っている語
「申し上げる」……「言う」の謙譲語I

「申し受ける」……「受け取る」の謙譲語I

●謙譲語Ⅱの性質を持っている語
「申し伝える」……「伝言する」の謙譲語Ⅱ(丁重語)

「申しかねる」……「言いかねる」(言いにくい)の謙譲語Ⅱ(丁重語)

「申し遅れる」……「言い遅れる」の謙譲語Ⅱ(丁重語)

●謙譲語性・改まった印象がある語
「申し添える」……「言い添える」の謙譲語Ⅱ(丁重語)

 

●多少改まった印象がある語
「申しつける」……「言いつける」には謙譲語性はなく、動作主を高める表現になる。

*「何なりとお申し付けください」のように使う。

* 誤解が懸念される場合は、「仰せつけください」「ご用命ください」のほうが無難。

 

●謙譲語性も改まった印象もない語
「申し合わせる」→ 「かねて申し合わせのとおり」
「申し込む」→ 「お申し込みください」と相手の動作に使える
「申し越し」→「お申し越しの件、承知しました」と相手の動作に使える
「申し出る」→ 「不備がございましたら、お申し出ください」と相手の動作に使える
「申し立てる」→ 「裁判所にお申立てなさってください」相手の動作に使える

*この段の語は、「申合せ・申込み・申出・申立て」など、公用語で名詞化された言葉が多い。

*「お申し出ください」は「お知らせください」のほうが尊敬語でもあり無難。

「申し〜」と他の語を組み合わせた語には、このように意味も語感もさまざまです。
こうもいろいろあると「どれかひとつで全てを代用できれば便利なのに」という気持ちになるかもしれません。

そこで、お客様から上司への伝言を預かった場合の表現を考えてみましょう。

「かしこまりました。部長の〇〇に申し伝えます」(言って伝える)
「かしこまりました。部長の〇〇に申します」(言う)

上のどちらも相手(聞き手)に対する丁重な表現です。
しかし、「伝える」という意味が含まれている「申し伝える」のほうが「申します」よりも的確であるため、(伝言してほしいと考えている)相手に安心感を与えられそうです。
微妙にニュアンスが異なっているので、やはり場面にあった語を都度選ぶほうがよさそうですね。

 

 

「申し〜」と他の語を組み合わせた語には、謙譲語性を保持している丁重語から、謙譲語性を失った尊敬語的用法までさまざま。特に、相手の動作に使う用法では、誤解を避ける意味でも、いっそ別の言葉で表現する発想も必要。

 
 

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