よろしければお座りになってお待ちくださいませ | ほどよい敬語~「コミュニ敬語」でいこう

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プロのライターでも経営者でも間違えることがある敬語。相手を思いやるコミュニケーションツールとして「ほどよい敬語」を使いこなして「デキル人」になっちゃおう。

「よろしければお座りになってお待ちくださいませ」

「お座り」は、犬によく使う言葉です。言われたほうはあまりいい気持ではありません。
「おかけになって」が正しい敬語です。

「よろしければおかけになってお待ちくださいませ」
さらりとして、深い言葉です。
大事な方への手みやげを買うために、ある店へ行き、包装してもらうのを待つ場面です。
小さなベンチが店の前に置かれています。

「疲れたなあ、座りたいなあ。でも図々しいかな」と思うお客様がいれば、
冒頭の言葉が、椅子にかけるためのきっかけになります。
足が悪い高齢の方や、疲れた方は、安心してゆっくり待つことができます。

ただ、中にはお急ぎのお客様もいますので、
全面的に「おかけになってお待ちくださいませ」と言うにもためらいがあります。
そんなお客様は心の中で「椅子にかけるほど待たせるわけ?」と思い
すすめられてもうなずきつつ、辞退されるでしょう。

こうしたことは一見して判断できるものではありませんね。

そこで大事なのが「よろしければ」のひと言なのです。
「お客様の時間が許せば」
「もし嫌でなければ」
という意味が込められています。
つまり、お客様に押し付けるのではなく、選択権を委ねるのです。

そういう意味で「よろしければおかけになってお待ちくださいませ」
適切かつ合理的な表現です。

さらに付け加えるなら
お店の側はマニュアル的にこの言葉を言うのではなく
それに対してお客様がどう反応したかに気配りをすると、
ワンランク上の対応ができる
でしょう。

お客様の表情もさりげなく見てみましょう。
お客様が「ありがとう」と笑顔で言ってベンチにかけ
ゆったりした表情で待っているなら
別のスタッフがサッとおいしいお茶でもお持ちすると喜ばれるかもしれません。

また、軽くうなずいて、ショーケースの前で硬い表情で立ったままであれば
お客様は急いでいるのです。
無理におすすめするのでなく、てきぱきと包装を急ぐほうがいいでしょう。
別のスタッフが手すきなら
「今包装しておりますので、ご清算を先に承りましょうか」と
お客様の時間をなるべく無駄にしないよう心がけます。
すると「急いでくれてありがとう」とお客様は思うでしょう。

そして「感じのいい店だった」と次の来店につながるのです。
つまりリピーターです。

言葉はコミュニケーション。
マニュアルに「包装の間はベンチをおすすめする」とあったとしても
そこで完結して単なる作業になっては意味がありません。

お客様はお急ぎなのか、あるいはお店の空間を楽しむ余裕があるのか。
それをお客様の表情や様子から読み、後の対応を工夫することです。

言葉は気配りと知ることが本当の接客であり、ワンランク上のコミュニケーションにつながるのです。
こうした気配りの接客ができる店は、大変優秀です。
経営者の思いを店員が感じ取り、
皆が「お客様をおもてなししよう」といい連係をしている店だからです。

小さなことですが、そこには企業理念さえもにじみ出る───
「よろしければおかけになってお待ちくださいませ」
さらりとして深い言葉ですね。


──────ポイント

☆「お座りになって」と言われると、犬に命令しているように感じられます。
「おかけになって」と言いましょう。
「よろしければおかけになってお待ちくださいませ」の「よろしければ」は
お客様に選択権を委ねる意味があります。
さらにその言葉で完結するのではなく、お客様にさりげなく気配りすることが大事です。



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