真剣な姿勢

その2週間後。
メンバー全員で
練習スタジオに入って
音合わせをすることになった。
ヴォーカルの子は、
僕らと同級生だった。
若干小柄なこともあって
少し年下に見えただけだった。
そして
“同級”というだけで
会話が弾み
じゃあとりあえずやってみよう、
そんな話になった。
スタジオでは、当時
一部の音楽ファンの間で流行っていた
とあるグループの曲を
数曲合わせてみた。
感触は、
悪くなかった。
みんながみんな
それぞれのパートを
そつなくこなした。
見知らぬ人たちが集まって
初めて音出しするときにありがちな
“見えない不満のぶつかり合い”
みたいなことも、無かった。
練習が終わると、
自然と次のスケジュール決めの話に
なった。
そうして―
何度かスタジオに集まっては
皆で決めた曲を合わせる、
暫くそんな感じの関係が続いた。
…
あいつが誘った集まりにしては
しっかり続いているよな。
その旧友はどちらかというと
マイペースな性格で、
彼のまわりに集まってくるメンバも
どちらかというとユルいというか。
「楽しくできればそれでいいじゃん」
そんなノリで音楽やっていたのだ。
けど…
このメンツに関しては。
それとは違う“何か”があった。
ああ、
そうか。
僕は思わず膝を打った。
ヴォーカルの彼女だった。
なんだかんだ言って、
彼女、頑張ってるもんな。
歌詞を間違えないようにとか
音程を外さないようにとか、
そういうことではなく。
彼女は
“真剣”だった。
普段会話しているときは
あまり表に出さないのだが、
一緒にスタジオに入れば、
そのくらいは、分かる。
いくら表面上で繕ったとしても
“音”には反映されるものだ。
彼女は
他のメンバーのように
「楽しければいい」
それだけではなく、
音楽に対して、真剣だった。