ゆっさゆっさゆっさ・・
(真っ黒に覆われた視界の外から何やら揺れ動く音だけが継続的に聞こえてくる)


カポッ・・(視点の主によって頭上の「大タルの蓋」が右手によって開けられると青白い月明かりが真上より照らしてくる)


こそっ・・(大タルの中から目元の高さまで顔を出すと、目の前にはウー家の大豪邸が大庭園の向こう側に見え、だんだんと遠のいていく)


ゆっさゆっさゆっさ・・
(右手を見下ろすと大タル2つを抱きかかえた恐怖の赤鉄仮面男の顔が間近に見える)


ゴルゾン「・・・・・・・!?」(こちらに気づき、仮面越しに「充血したおそろしい眼」を見開いて驚愕している)

ムーア「ププッ。あんたもびっくりするのね」ゆっさゆっさ・・

ゴルゾン「イ~イ~アセアセ」(何してる!?顔を出すな!バカ!みたいな)

ムーア「あんたが着てるその防具。ハンターのでしょ?あんた狩人だったの?」ゆっさゆっさ・・

ゴルゾン「・・・・・・・・・・フン」ぷいっ

ムーア「あたちもニッキーもね、モンスターハンターになるのが夢なの。次、お屋敷に来たら武器の使い方を教えてよ。あたちは大剣。ニッキーは・・」ゆっさゆっさ・・(ゴルゾンは聞こえないフリをしながら真っ直ぐ前を見つめて運搬している)

ニッキー「ムーーーア」(と、「向こう側の大タル」がそれ以上おしゃべりするなと注意してくる)

ムーア「あんだってこにょ・・・」カポり・・(頭をタルの中に引っ込め、大人しく蓋を戻すと再び視界が暗闇に覆われていく)


ゆっさゆっさゆっさ・・


ムーア「ふぁ~~あ・・・こんなに遅くなって、イノみゃん、今頃、厩舎で怒ってるだろうなぁ・・・・帰るの・・ダル・・・」むにゃむにゃ


ゆっさゆっさゆっさ・・


ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」すやすや・・


ゆっさゆっさゆっさ・・


??「どうした?ゴルゾン」(外からガーディアンらしき男の声が聞こえ、同時に目覚める)

ゴルゾン「ウ~~~」

ガーディアン「どっかに届けるのか?いや・・ゴミか」

ゴルゾン「ウーウー」


ギィ~~~~~~~~~
(鉄門が開かれる金属音が聞こえてくる)


ガーディアン「重そうだな。大丈夫か?」

ゴルゾン「ウイ」ゆっさゆっさ・・

ガーディアン「山賊みたいな格好をしたガキを見かけたら、とっ捕まえてきてくれ。まったく逃げ足のすばしっこい奴だよ」ギィ~~~~~~~~・・・

ムーア「ププッ・・」ゆっさゆっさ・・


ゆっさゆっさゆっさ・・


ゆっさゆっさゆっさ・・


ムーア「ねぇ。どこまで運んでくれるの?ヒンメルンを登る気ない?」ゆっさゆっさ・・


ゆっさゆっさゆっさ・・


ムーア「ねぇ、あんた。なんで「ベロ」切られちゃったわけ?ハンター時代に?わかった。火竜みたいな耐熱性のあるベロに憧れて、とっかえようとしたんでしょ?外街の噂で聞いたことあるの。なんでも大陸のどこかに、天才的な外科医の獣人がいて、カウンターカルチャーの人達から「神の猫手を持つアイルー科」って呼ばれているんだって。あたちもさ、いつか鬼斧神工のあんまんみたいな姿になれれば天下を取ることなんて簡単だとは思うんだけど、あんたはどう思う?」


ガツン!!
(タルの外から「黙れ」的な「頭突き音」と同時に「タル内」に物凄い衝撃波がゴルゾンの意志と共に伝わってくる)


ムーア「わかったわよ・・あんだってこにょ・・」


ゆっさゆっさゆっさ・・


ゆっさゆっさゆっさ・・


ムーア「ちょっと。どこまで連れて行く・・」


ふぉっ(真っ暗な視界でも明らかに「タルごと」投げられたという物理的な重量感がその音と揺れと共に伝わってくる)


ムーア「ひいいいいいいアセアセ


バギャアアアアアアアアンハッ
(タルが地面に衝突して割れると同時に尻もち落下の無様な姿も露わになる)


ムーア「いてぇアセアセおいコラゴルゾン!!」ぎぃ~~~~っムカムカ(とお尻を軸に反転すると)

ゴルゾン「シ~~~~~~~」(人差し指を赤鉄仮面の口元にあてながら静かにするよう指示してくる)

ムーア「あんだってこにょ・・・」


ちら(周囲を見渡すと無数の墓石が並んでいることから礼拝堂の裏庭であることが見て取れる)


ムーア「ちょっと・・まさか一緒に埋めようなんて魂胆じゃないでしょうね・・」じりっ・・

ニッキー「いててて・・・まだクエストに手をつけてもないんだぜ?殺すにはあまりにも早すぎるだろ」よっ(と視界の左側に映る同じく大破したタルの木材に尻もちをついていた彼が腰を叩きながら立ち上がる)

ムーア「そうなの?ゴルゾン」

ゴルゾン「ウーウー」コクコク

ムーア「ま、だいたいあんたが襲いかかってきたところで別に怖くはないけどね」ウ~ウ~(「よく言う」的なゴルゾンの唸り声)


バッ!!(次の瞬間、ゴルゾンの背後より颯爽と「木製バット振りかぶり体勢飛びかかりジャンプ」で強襲かましてくるシオンの姿が)


ムーア「あ」

シオン「てええええええええええい!!!!」バギャアアアアアアアンハッ(おもいっきしゴルゾンの赤鉄仮面な側頭部をバットが折れるほどに叩きつける)


シュタッDASH!(ロングコートひらりと片膝着地かますシオン)


ゴルゾン「ア~~?」すりすり(何事なかったかのようにヘルメットをさすっている)

シオン「嘘・・タラー次!第二攻撃よ!!」バッ(彼女が合図をすると)


お~~~~りゃ~~~~~~・・・
(墓地の「遠くの方」からスクラムを組んだだけで「丸腰の」ヴィルヘルム&キンババが迫りくる)


ニッキー「駄目な方に10ゼニー」あたちは50


でぇ~~~~~~~~~~~んハッ
(ゴルゾンの実に横幅広なレスラー体型のぽっこりお腹に弾かれ、それぞれ違う方向に「スクリュー方式」で吹っ飛んでいくヴィルヘルム&キンババ)


シオン「今のうちよ!!」バッDASH!(こちらの手を引っ張ってくる)

ムーア「って、あんた、あの子達を捨て駒に使ったわけタラー

ニッキー「平気だよ、シオン。彼は味方だ。今のところはね」ウ~ウ~(とゴルゾン)

シオン「へ?」

ゴルゾン「ホ~~~~」クンクン(シオンのサラサラポニーテールを後ろから)

シオン「いやああああああああ!!!!」バチぃ~~~~~んハッ(反射的な振り返りビンタを赤鉄仮面に)

ゴルゾン「ホッホッホッホッ」(当然微動だにしない)

ムーア「はじめて笑いやがったタラー」いたぁ~~~~いアセアセ(シオンは真っ赤に晴れた手のひらをふうふうしている)






Recollection No.5_80






シオン「それじゃあ、そのクエストを引き受けたってわけ!?」(ものすごい剣幕でこちらを睨みつける彼女は墓地脇だろうか、大木の下で地べたに女子座りしている)

ムーア「仕方ないでしょ?殺されかけたのよ?こいつに」(同じくあぐらをかいている視点の主が首を傾けると、少し遠くの方で「こじんまり体育座り」で固まっているゴルゾンの姿が)

キンババ「ほ、ほ、ほ、本当に襲いかかってこないんだよね?」(大木の陰からひょっこり顔を出しながら)

ムーア「本人に聞いてみたら?・・って、喋れないけど」しっしっ(とゴルゾン)

ヴィルヘルム「俺が必死に逃げ回っている間、そんなおもしれぇことになってたなんてな。で、どうすんだよ?並大抵のクエストじゃねぇぞ」(ニッキーと並んであぐらをかいている)

ニッキー「ウー家を脅迫する真犯人・・・・やりがいはありそうだ」やれやれ

シオン「範疇を超えているわ。だいたいなんで私達が彼を助けなきゃいけないのよ」

キンババ「質問。どうしてジェイソン・ウーはプロにお願いしないんだい?」(木陰から挙手)

ニッキー「俺もそこが引っかかるんだ・・。彼ほどの人脈を持つ男が何故、俺たちに・・・」

ムーア「そりゃ~あたち達の才能が買われたのよ」

ヴィルヘルム「そうそう。王都一の権力者から認められたんだ。やるしかねぇだろ」むふふふふ(と例の水晶ドクロを懐から取り出し、満足げに微笑みながらそれを撫でる)

シオン「いいわね、いつもシンプルで」

ムーア「あんだってこにょ!!あたちは巻き込まれたんだぞ!!それにあんたとニッキーの事も考えて前向きにやってやろうとしてるだけだ!!」ぎゅううっハッ(シオンの色白柔らかほっぺを馬鹿力でつねる)

シオン「余計なおせっかい!!下りたければ下りれば!?そういうのリタイアっていうんだから!!」ぎゅううっハッ(つねられながらつねり返してくる)

ムーア「生意気!!あたちは自分のためにこのクエストを引き受けただけ!!あんたの秘密がおうちにバレたってもう知らないんだから!!」ぎゅうううっハッ(空いている方の手でシオンの空いている方の頬をつねる。つまりダブルつねり)

シオン「自分のため!?あなたはいつだってそうやってチームの和を乱しているのよ!?少しは帰属意識を持ちなさい!!」ぎゅうううっハッ(シオンもまた空いている方の手で視点の主の空いている方の頬をつねってくる。つまり互いにダブルつねりの攻防の構図)


い゛っ~~~~~~~~~!!
(と、すごい剣幕でにらみ合いながらつねり合いながら)


キンババ「やめなよ二人ともアセアセほっぺが「ちぎれちゃう」よタラー」い゛っ~~~~~!!

ヴィルヘルム「ニッキーとシオンは義賊としての秘密を守るため・・こいつはよ?」い゛っ~~~~~!!

ニッキー「成功報酬なんだ。ジェイソン・ウーは彼女のご両親について何か知っているらしい」

シオン「ほら!!やっぱり自分のことばっかり!!」ぎゅううううううハッ

ムーア「いてててててててアセアセお父さんもお母さんもいるあんたにあたちの気持ちが分かるもんか!!自分の親のことを知ろうとして何が悪いわけ!?」がじっハッ(つねられながらつねてくる両手を大口開けて噛む)

シオン「きゃああああああああアセアセ必ずしもその両親が自分の理想的な姿とは限らないのよ!?血筋から逃れられない運命だってあるんだから!!」がじっハッ(おんなじことやり返す)


むぅ~~~~~~~~~っ!!
(つねりかじりつねられかじられながら睨み合う二人)


キンババ「誰か止めてよ!このままじゃ二人のほっぺが本当に・・」


どーーーーーーーーーんDASH!
(無骨な両手によってそれぞれの肩を押され、引き離される二人)


ゴルゾン「ウ~~~~~」

ニッキー「ほら。彼もやめろってよ。今は喧嘩している場合じゃないだろ?」

ムーア「ふん・・・ゴルゾンに感謝することね」ふき(とよだれを拭きながら捨て台詞)

シオン「そっちこそ。本気を出していたら、今頃、大好きなあんまんもかじれなくなってたわよ」ふき(と同じく)

ゴルゾン「ア~~ニャモ~~ニャ。モニョモニョモニョモニョ」

ニッキー「ん?」

ムーア「明日から調査に出ろって。随時報告すること、でしょ?」

ゴルゾン「アイ」こくり


ザッザッザッザッザッザッザッ・・
(墓場を後にする恐怖の赤鉄仮面男の屈強な後ろ姿)


ニッキー「今日はもう遅い。解散しよう。ミーティングはまた後日」

ヴィルヘルム「そしたらよ、ムーア。うち泊まっていけよ。ボゲラスも喜ぶぜ」

ムーア「う~~~ん・・今日はやめとく。なんか疲れちゃったし」

シオン「そうしなさい。うちには、ぜぇ~~~~ったい泊めてあげないから」ぷいっ

ムーア「こっちだってゴメンだ!!性悪金持ちクソ女!!」ぷいっ


タッタッタッタッタッタッタッDASH!
(墓地の遠くからゴルゾンが小走りでこちらへ戻ってくる)


シオン「ん・・?」タッタッタッタッタッタッ

ムーア「ほえ・・?」タッタッタッタッタッタッ


ごちぃ~~~~んハッ
ごちぃ~~~~ん
ハッ

(二人の頭に無骨な両手による「喧嘩両成敗的な」げんこつが)

To Be Continued







★次回ストーリーモードは7/13(月)0時更新予定です★