じょじょじょじょじょじょ・・・
(視点の主が右手に持つ松明の灯りを頼りに暗がりの環状下水道(地下に掘ったトンネル内部の壁面にコンクリート(おそらくヒンメルン産の石灰、砕石などを混合した混凝土)を塗って固めた)の脇にある通路を手探りしながら進んでいく)


ムーア「・・・・・・・・・・・」ちら(それとなく下水道の方を見下ろす)


じょじょじょじょじょじょ・・・
(下水道を元気よく流れていく汚水)


ふおっ炎(おもむろに松明を後続のキンババに向けると当然のように驚愕リアクションしてくれる)


キンババ「ちょっと!危ないじゃないかアセアセ」じゃないか!ないか・・いか・・・・(と、怒号のリバーブがトンネル内を通過していく)

ムーア「平気だよ。ここならお得意のおもらしをしても」ククッ

キンババ「誰がするもんかムカムカ確かに僕は頻尿だけど、一度たりとも君たちの前でモラしたことはないんだぞ」えっへん

ムーア「疑わしい。もらしたら、すぐにこれをズボンに叩きつけてやる」ばふぅ~~~んDASH!(と、煙を発する玉を地面に叩きつける。おそらくその煙の色から消臭玉であることが窺える)

キンババ「はぁ~~~~清々しい・・」モワモワモワモワモワ(と消臭効果抜群の煙に覆われていく)

ヴィルヘルム「お~~~~い。何してんだ~?早く行こうぜ~~」(と、トンネルの奥から同じく松明を持った相変わらず山賊風な彼の姿が。そちらに向かって通路を慎重に歩いていく視点の主)

キンババ「それにても本当に臭いがしないなんてね」(後ろから彼の声が)

ヴィルヘルム「だから言ったろ?龍の逃路(にげみち)は万全の態勢が整っているって」えっへん

ムーア「泥吉さんどうしてるかな・・」ぼそっ

キンババ「水源はヒンメルン山脈から水路で引っ張っているから限りなく、その上、この下水道の水路に使われている石材には、にが虫エキスが配合されているんだよね。にが虫の苦味エキスには殺菌作用や消臭作用、最近では抗菌作用も発見されたことが分かって、ただでさえきれいなヒンメルンの水を元通り浄化、還元してくれる。素晴らしいサイクルだよ」

ヴィルヘルム「やけに詳しいな。また図書館の本か?」

キンババ「アカデミー」

ムーア「あたちはそのアカデミーにあんたのクエストを達成する為、毎回、こんな暗いところを通っているのよ?少しは感謝しなさいな。それから彼らにもね」ふおっ(と壁面に松明を向けると、列を組んで進行中のにが虫の姿が)

キンババ「下水道の中で、にが虫を飼育するっていう発想もすごいよね。生活に欠かせない彼らのエキスも採取できるし、そのおかげで臭くないしね。屎尿も再利用できる」

ムーア「うちでも使ってるよ。バールボーンの肥料。袋にプリントされたドクロのイラストはやめたほうがいいと思うけど」

ヴィルヘルム「腹減ったら、食えるしな」そっ(と手を伸ばし、にが虫を食べようとする)

キンババ「ちょっとよしなよムカムカ君はなんてバカで粗暴なんだ。それに食べれるって、肥料のことも言っているのかい?」

ヴィルヘルム「まぁな。うちじゃコーンーフレークが切れた時に食ってるぞ」ガッハッハッハッハッげふぅ~~~~DASH!

ムーア「(鼻をつまみながら)う~~ん・・だから口が臭いのね?でも、そんなバールボーン家がヴェルド全体の下水道を管理しているおかげ。最も発案したのはアカデミーの頭の良い学者さん達だって話だけど」

ヴィルヘルム「実際に現場で工事したのは、外街の労働者だ」ふん

??「指揮したのはこっち(王都)だけどな」

ヴィルヘルム「ああん?」

ニッキー「お迎えに来てやったぞ」(と、通路の「王都側」の方から、前回の作戦会議同様、「外街バージョンな姿(職業シーフ的な)」の彼とシオンの姿が)

キンババ「こんばんわ、シオン♪」(振り返ると思わず殴りたくなるデレデレな彼の顔面が)

ムーア「わざわざ出迎えてくれなくても分かるのに」

シオン「今日はアカデミー目的じゃないのよ?大事な計画を台無しにさせないため」ツン(の姿を見た後ろの男から「嗚呼・・」の声が)

ニッキー「遅いと思ったら、こんな所で歴史の授業をしていたとはね」

ムーア「必要なことでしょ?そっち(王都)にもこっち(外街)にもね」

ニッキー「君はその両方でもない。あっち(山)だ」フフッ(とシオン。に対し、あからさまにムッとする視点の主)

キンババ「この下水道はヴェルドの開発が進められた時代に作られたんでしょ?」

シオン「そうよ。その資材を提供したのが、他でもないヴァイデンフェラー家なの」

ヴィルヘルム「ニッキーんちか。二番街の城壁沿いにある、クソでっけぇ製鉄所だろ?大陸でも有数の。大したもんだ」

ニッキー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

シオン「当たり前でしょ。ヴァイデンフェラー家は旧王国時代より進められていた東西の都市開発に大きく貢献した一族なのよ?その功績によって宮殿への出入りを許され、一族の多くが議員に選出されているんだから。あなた達が住んでいる外街だって、ヴァイデンフェラーの製鉄所がなければ存在していなかったかもしれないのよ?」

キンババ「それ初耳。どういうことだい?」

シオン「東西分裂後、製鉄所を西側の城壁外に作ったんだけど、これが奇しくもキングスラムウォール発端の原因となったの。理由、分かる?」

ヴィルヘルム「俺が分かるわけねぇ。だからブレーンの二人がいるんだ」(と、嫌がる視点の主とキンババの肩を抱き寄せる)

ムーア「だいたい分かった・・」

シオン「はい、キャロルムーアさん」(嬉しそうに)

ムーア「当時、建設中だったヴェルドには、たくさんの労働者がいたわけでしょ?製鉄所の労働者が急増したことで、工場の近くに彼らが居住する為の仮住まいを建てる必要があったのよ」

キンババ「そっか・・・そこに人が住み始めたのをきっかけに、王都内の生活困窮者もまたそれを追うように城壁の外で暮らすようになった・・・」

シオン「そう。次第にその噂を聞いた大陸各地の移民が募り募って、今の混沌にして雑多、アイデンティティーを持たない多様な文化的景観を持つ特殊なスラムを形成するに至ったってわけ。納得できたかしら?バールボーン家のおぼっちゃま」クスッ

ヴィルヘルム「ケッ。偉いのは製鉄所で働く、採掘技術やその知識に長けた元狩人の労働者たちさ。お前らみたいにすぐに人を動かしたがる連中は、現場で働く人間を顧みねぇ悪い癖がある」

シオン「だから外街に現実を知るために来たのよ」

ヴィルヘルム「・・・・・・・・・・・・・・・・」フン

ニッキー「確かにヴァイデンフェラー家は、労働者によって支えられている。それは製鉄所以外の場所でもな・・・」

ヴィルヘルム「製鉄所以外・・・」はて・・

キンババ「製鉄所で使う資源を採掘している現場のことだね?」

ニッキー「ああ。ヴァイデンフェラー家が所持しているヒンメルンの採掘場だ」

ムーア「そこから鉱石を調達してきて、それを製鉄所で加工して、世界中に輸出しているのね?」

シオン「ヴァイデンフェラーの鉄製品は主に生活資源として東西シュレイドだけでなく、東はドンドルマ、西はミナガルデ、それにメルチッタ経由で西竜洋を経て大陸各地に輸出されているのよ」

ヴィルヘルム「だったら尚更、労働者をリスペクトするんだな。そのおかげでお前はロイヤルスクールに通えているんだからな」

シオン「ちょっと!そんな言い方ないでしょ!?そんなことニッキーだって・・」(言いかけたところをニッキーによって肩を掴まれる)

ニッキー「よせ、シオン。ヴィルヘルムの言っていることは、お前だって正しいと思っているはずだ」

シオン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ムーア「・・・・シオン。あんたがお父さんとお母さんを嫌う理由(わけ)・・・・それはお家の仕事に関係しているのね?」

シオン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり・・

ムーア「ニッキー、あんたも」

ニッキー「・・・・・・・ヴァイデンフェラーは確かにクソだよ。その証拠に、採掘場には奴隷として売られていた生活弱者や犯罪者、それに多くの獣人が強制労働をさせられている・・」

ヴィルヘルム「そらみろ。富豪ってのはオフィシャルだろうが、そうじゃなかろうが、結局、現場で働く者を数字でしか見ていないのさ」

シオン「私とニッキーは違う!!」ガッハッ(ヴィルヘルムの胸ぐらを掴み上げるも、すぐさまニッキーに引き離される)

ニッキー「その通りだ。幼い頃、その現実を知った俺は、親父にそんなことをやめさせるよう言ったが、傲慢なあいつは、罪悪感を覚えるどころか俺を引っ叩いてこう言った・・・「お前はヴァイデンフェラーの跡継ぎには向いていない」ってね・・。それ以来、あの男はおふくろ以外の妾との間にできた義弟を俺にあてつけるかのように溺愛するようになった・・。だから俺はモンスターハンターになる決意をしたのさ」

ムーア「・・・・自由を求めるため?」

ニッキー「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり・・

キンババ「シオン、君の家・・プラウズ家は豪農だって聞いたけど、君のところも・・?」

シオン「・・・小さい頃、両親に連れられてヴェルドから少し離れた西シュレイドの沿岸にある農場に行ったの。初めはどんな素敵な場所なんだろうって、どんな作物を栽培しているんだろうって、大いに胸を弾ませたわ・・。でも現実は違った・・・。そこで目にしたのは奴隷のように罵られ、叩かれ、自由を奪われた土着の獣人達だったの・・・」

ムーア「・・・・・・プランテーション・・・。前に学校で教わった」

シオン「オーロラ学園は正しいことを教えているようね・・。そんなことをしてはいけないと子供達に教えるために・・・。私もね、すぐに両親に猫民の開放を訴えた・・・「パパ!ママ!お願いだからあのニャンちゃん達を許してあげて!!」って・・・」

キンババ「シオン・・・・」

シオン「けど、両親はまさか私がそこまで取り乱すなんて思ってもみなかったのね・・。慌てて自分たちを正当化する返事だけ・・・その後もずっと訴え続けたけど、そのたびに言いくるめられて・・・・」

ムーア「苦しいね。その子達を思い出すたびに・・」(そっとシオンを抱き寄せる)

シオン「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(涙を零しながら力強く頷く)

ニッキー「彼女と俺は、何も出来ない自分と、そんなクソみたいな名家に生まれてしまった境遇とのジレンマに悩まされていた・・・。ロイヤルスクールでシオンと出逢い、お互いの秘密を暴露するまではね」

ムーア「不徳な行為が許せないあんた達は、王都内の陰で起きている不正や不義を暴く為に義賊となったのね?」スッ・・(シオンの髪を撫でながらニッキーに問いかける)

ニッキー「ああ。だから今日の難易度の高いクエストに君たちの助けが必要なんだ。すべては奴等に虐げられている人たちを救うために」


スッ・・(シオンが視点の主のもとより離れる)


シオン「ソーシャライトだからって不労所得で終わるつもりはないから」クッ(決意表明するように涙を拭い去る)






Recollection No.5_72






ムーア「OK。それでこそ親友よ」パァ~~~~ンハッパァ~~~~ンハッ(シオン、ニッキーと続けて一蓮托生のハイファイブをかます)


To Be Continued






★次回ストーリーモードは6/15(月)0時更新予定です★