バフーーーーーン・・・・
あああっ!!あああっ!!あああっ!!
(見上げる一人称視点を覆い尽くす激しい雪煙。救いを求めるように泣き叫ぶ視点の主はその甲高い声質から赤ん坊であることが分かる)



モワモワモワモワモワ・・・・
あああっ!!あああっ!!あああっ!!

(雪霧は次第に晴れていき、代わりにその白銀の世界を押しのけるようにして灰雲に包まれた宵闇の空が視界を覆い尽くしていく)



あああああああああああん!!
(不気味でアポカリプティックな空模様を拒絶せんばかりにすぐさま目を瞑り、より強く泣き叫ぶ)



ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・
ボギャアアアアアアアアアアア!!
(泣き続ける涙目の潤んだ一人称視点の遥か上空を逃げ去るようにするすると昇っていく悪魔のような黒い龍が、大気の唸りを一喝する大咆哮をあげると、その殺伐とした巨大な両翼を一思いに羽ばたかせ、一瞬にして灰雲を貫きながら現世より消え去っていく)



あああっ!!あああっ!!あああっ!!
ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・・・・・・・・

(再び目を閉じて泣き喚く視点の主の瞼越しに、明るい光が刻々と照らしてくるのが分かる)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(光に諭されたかのように自然と泣き止み、ゆっくり目を開いていくと、澄み切った青空の天空より太陽の神々しい姿がはっきりと見え、終焉から逃れた世界が元の崇高な色を取り戻したことが見て取れる)



ブワッサブワッサ・・ブワッサブワッサ・・
(視点の主と太陽の間を遮るように逆光になった火竜らしき飛竜のシルエットが頭上を横切っていく)



ブワッサブワッサ・・ブワッサブワッサ・・
(それを目で追いながら「またおぼつかない首」を少しだけ傾けると、晴れ空の向こう側で火竜を待っていたかのように緑色の雌火竜が翼を羽ばたかせながら浮揚しているのが見える)


ブワッサ・・ブワッサ・・・・・
(二頭は空中で合流するとその長い首をもって無邪気に触れ合い、互いの無事を確認するやいなや、広大なヒンメルン山脈の壮麗な連峰の彼方へと仲睦まじく飛び去っていく...)




・・・・・・・ああああああああああん!!
(愛情を見せつけられた視点の主は再び目を頑なに瞑り、けたたましい救難信号を出す)






ああああああああああん!!






ああああああああああん!!








うわああああああああん!!!!










お嬢様!?






ザッシュザッシュ・・・・(声がする方に弱々しく首を傾けると、特徴的なメイドシリーズを身に纏った薄紫色の毛を持つアイルー科の獣人が必死の形相で雪崩跡の崩落した雪塊をその鋭い爪で掻き分けながら、こちらに向かって一心不乱に駆け上がってくるのが見える)



おトキ「ムーアお嬢様!!ああ・・・よかった!!」バッ(やっとの思いで覆いかぶさるように視界へ飛び込んでくる)


スッ・・(モフモフの優しいお手が頭を撫でてくれると、ようやく安堵感に包まれる)


おトキ「よく・・・ご無事で・・」(悲痛の表情を浮かべながら潤んだ愛らしい瞳でこちらを見下ろしてくる)


??「旦那様たちがいたのか!?」(見上げる視界に映る薄紫色の獣人が男の声に反応して振り返る)


おトキ「ムーアお嬢様よ!!」


吾郎「本当か!?怪我はしてないか!?」(心配そうな声だけが飛んでくる)


おトキ「絹に包まれたままよ!!見たところ大きい怪我はなさそう!!すぐに神殿に連れて帰ります!!」


吾郎「頼む!!あっしは引き続き、旦那様とアースラ嬢を探す!!」


おトキ「おねがいします!!・・・さ、お嬢様。参りましょう」スッ・・(両手を伸ばしてくる)


よっ(あたたかいフサフサの腕に包まれながら抱きかかえられる)


おトキ「嗚呼・・大陸の神様・・・未来の命を救ってくださり、誠に感謝致します・・・」(感極まり泣き崩れながら抱きしめてくる彼女の感情など構わず「ネコひげ」をひっぱってる視点の主のちいちゃく「プクプクした」まあるいお手)







Recollection No.5_01







ぱちくり(する視界には再びおトキさんのまあるい猫顔が映っており、その愛らしいクリクリしたお目々でこちらを覗き込むよう見下ろしている。また彼女の背後に見える天井が石造りであることから、この場所が神殿の中の一室であることも窺える)


おトキ「さぁ、ムーアお嬢様。ポポミルクですよ」スッ(哺乳瓶のこれまた「まあるいさきっぽ」を向けてくる)


ぷいっ(目を瞑り、拒絶するように首を傾ける)


おトキ「あら」


ガチャ


吾郎「どうだい?」とっとっとっとっ・・(ドアの方から「シンプル板長スーツ」を装着した、板前風アイルーが「和蒸籠」を抱きながら参上してくる)

おトキ「だめ。やっぱりそれがないと飲まないみたい」(呆れ顔でこちらを見下ろしている)

吾郎「ふふ。そうだろそうだろ。さ、お嬢様」パカッ(とこちらに向けた和蒸籠の蓋を開けると、中からモワモワと湯気の立つ白くて「可愛らしいあんまん」の姿がちらりと見える)


キャッキャッ♪(歓喜の声をあげる)


おトキ「本当に変わった子・・・「それの何が」いいのやら・・・」キャッキャッ♪

吾郎「妬んでねえで、笑っている間に早くそれを口に突っ込んじまいな。さすがにこの試作品はまだ食べさせられねぇからな」ほれほれ(とチラ見させてくるあんまんを見てキャッキャッと喜ぶ視点の主の赤ちゃん)

おトキ「そうね。ルチアさんがとって来てくださった貴重なミルクですものね。さ、ムーアお嬢様」ぽきゅんアセアセ(口に突っ込まれた哺乳瓶を自然と咥え、「ゴキュゴキュ」とその栄養素を勢いよく体内に補充していく)

吾郎「キッチンが無事で本当に助かったよ。何をするにも食べ物が大事だからな」スッ・・(こちらを見下ろしながら身を屈め、感慨深い表情をみせながら頭を撫でてくる)

おトキ「私達はそのキッチンにたまたまいたから助かったけど・・神殿は半分、雪に飲まれしまったわ・・。それに炭鉱に出かけていたみんなも・・・・そして旦那様とアースラお嬢様も・・・・・」ゴキュゴキュ(泣きながら震える手でしっかりと哺乳瓶を支えている)

吾郎「姐さんも探索してるんだ。きっと・・・きっと一緒に帰ってくるさ。それに神殿だって、雪を掘り返せばいいだけだろ?復興は地道に行えばいい。今はこの子の面倒をみることに尽力するしかねぇ」なでなで

おトキ「やっぱりあの黒い龍の仕業なのかしら?だとすれば、あの龍がシュレイド王国を襲ったと伝えられる災厄の元凶・・・・」

吾郎「わからねぇ・・・・だが、この子がその災厄から生き延びたってことは確かだ。本当に・・奇跡・・・いや・・強い子だよ」なでなで(お腹いっぱいになったせいか、視点の主がゆっくりと目を閉じると、睡魔と共に視界もブラックアウトしていく...)





あうあう・・まん、まん・・・・
(片言を発する視点の主を不思議そうな顔で見下ろしている、レイアシリーズに身を包んだ赤毛の「ワイルドファンゴヘアな」女狩人)


ルチア「ああ?なんだ?何が欲しいんだ?」

ムーア「あうあう・・まん、まん!」くいくいっ(視界の両側からルチアに向かって両手を伸ばし、「くれくれ」とジェスチャーをみせながら何やら急かしている)

ルチア「まん・・・・?」はて・・


ガチャ


おトキ「さぁ、お食事の時間ですよ・・・ルチアさん!おかえりなさい♪」とっとっとっとっとっ・・(と例の如く和蒸籠を抱きながらインしてくる)

ルチア「王都からダッシュで帰ってきたぜ。こいつに会うためにな」ぷにぷに(頬をルチアの人差し指でそうされながらも、フォーカスはしっかりとおトキの抱いている物に絞られている)

おトキ「進展はありましたか?」スッ・・(和蒸籠を抱きながらルチアの横に正座する)

ルチア「いや・・。ウー家の捜索隊もお手上げのようだ」(あきらめたように首を左右に振ってみせる)

おトキ「そうですか・・・・」

ルチア「せっかく何日もかけて崩落した炭鉱跡を掘り返したってのによ・・・そこにいたはずのみんなの遺体すら見つけられねぇなんて・・・・これじゃボリスの時と全く同じだ・・。あたしはたまたまドスパパヴェルを見に、別の洞窟にいたから助かっちまったが・・また大切なものを失うなんて・・・・・バーニーも・・アースラもだ・・・なんであたしみたいな疫病神が生き残って、アースラ達が死ななきゃならなかったんだ!?クソッ!!」ダンッハッ(彼女が床を殴りつけると視点の主がそれに反応してびっくりする)

ムーア「ああああああああああん!!」

ルチア「・・・・わりぃ・・・で、どうすんだっけ?」

おトキ「よいよいしてあげてください」

ルチア「ああ・・そうだったな・・。どうもその・・・あやす作業ってのが苦手でよタラー」よっ(と泣き続ける視点の主を両手で軽々と持ち上げ、「ぶっきらぼうに」揺さぶってくる)

おトキ「ご自分を責めるのだけはおやめください。ルチア様が粉骨砕身、私達を守ってくださっているからこそ、ムーアお嬢様もこうして神殿で安全に暮らせているのです。心から感謝していますわ」

ルチア「そんな・・・あたしは何もしちゃいねぇよ。せめてこんな時、フランクの野郎でもいてくれればな・・・」(見上げる彼女の顔はどこか淋しげに見える)

おトキ「フランクさんの消息は?」

ルチア「それも駄目。あいつが何処に行っちまったのかさっぱり掴めねぇって、ベックフォード・・今のジェイソン・ウーの力をもってしても、お手上げだとよ。大方、シュレイドから離れ、遠い地に行っちまったのさ。あたしらを置いてな・・・」

おトキ「ご無事ならよいのですが・・」

ムーア「う~~~、まんまん」ぺんぺん(ルチアを激励するように彼女の頬を叩く)

ルチア「フッ・・・そうだな。心配してもきりがねぇよな、こにょっ」こちょこちょ(してくる)

ムーア「う~~~~~~♪」(嬉しそうな悲鳴をあげる)

ルチア「あ、そうだ。ベックフォードの野郎が新しい修練者を募集してくれるってさ」こちょこちょ

おトキ「ということは・・?」

ルチア「それも心配いらねぇ。今、募集しているのは、ウー家に借金をしている「訳あり」じゃなくて、純粋に狩人修行や精神鍛錬を望んでいる「クリーンな」連中ばかりだってよ。お前と同じ、獣人も採用してくるってさ。良かったな」(見上げる彼女は優しい笑みを浮かべながらおトキさんを見つめている)

おトキ「そうですか・・・新しい仲間が・・・・」

ルチア「これで吾郎の野郎も一人で雪かきをしなくて済むってもんだ。帰ってきたとき、神殿の上に乗っかってるあいつの姿を見たよ。でっかいスコップでよ、神殿を元通りにしようと必死になってた・・。一人でかなり頑張ったみたいだな」

おトキ「ええ。私がムーアお嬢様から目が離せないもので・・。板長もまた、寝る間も惜しんで復興作業に尽力されています」

ルチア「ああ。まだまだ時間は掛かるかもしれねぇが、仲間が増えればすぐに元の生活に戻るさ。そうだろ?だって俺たちは、アースラとバーニーに代わって、こいつが安心して過ごせる未来を創らなきゃいけないっていう大事なクエストを受けちまったんだからな」(こちらを見つめる希望に満ちた彼女の笑顔が映り込む)

吾郎「姐さん!帰ってきてたんですか!!」(声がする方に首を傾けると、雪まみれになったモフモフネココートに身を包み、スコップを担いだ彼の英姿がドア越しに確認できる)

ルチア「今さっきな。ああ、お前にも王都での話を・・」

吾郎「腹ペコでしょう!?待っててくだせぇ!!すぐに「あったけぇもん」を作ってきますから!!」

ムーア「まんまん!」

吾郎「っと、分かってますよ。お嬢さん」パチリん♪(こちらに向かって小粋にウィンクかますとすぐさま廊下を走っていく)

おトキ「まぁ、板長ったら・・・」

ルチア「お前は本当に幸せ者だな。こんなに優しい父ちゃんと母ちゃんがいるんだからよ」

ムーア「??」(瞬きしながらルチアの顔を見ている)

ルチア「お前はあたしが命にかえても守ってやっからな」ぎゅっ(頼りがいのある笑顔と共に抱きしめられる)

ムーア「まんまん」

ルチア「なんだぁ?こいつめ。あたしより、あんまんがいいってのか?」むにょむにょ(と、ほっぺを彼女の篭手に包まれた金属質な手でそうされる)

おトキ「うふふふ。さぁ、お食事にしましょう」

ムーア「まんまん♪」タンタン拍手(と嬉しそうに両手を叩きながら記憶と共に視界が揺らいでいく...)



To Be Continued






★次回ストーリーモードは9/26(木)0時更新予定です★