~ヒンメルン山脈....

ダカラッダカラッダカラッダカラッ!!
(標高の高い崖道を力強く駆け上がっていく馬上からの一人称視点)





見極めよ





ダカラッダカラッダカラッダカラッ!!
(視界の左手に広がる雄大な眺望には目もくれず、風切る際涯なく続く登り坂を一直線に捉えている)





そして見届けよ





パシーーーン!!ダカラッダカラッダカラッダカラッ!!
(走馬に鞭打つ軽快な音と同時に速度がさらに上昇する中、懐より葬儀用の仮面を取り出し、光を遮るようにそれを顔に装着する)





大陸の下界に蝕まれ 永続的な多幸感の渇求を続けてきた強欲者たちの終焉を





ヒヒィ~~~~~~ン!!
(高揚した嘶きと共に視界の奥地に白雪神殿の幻想的な壮観が見えてくる)






Recollection No.1_59






アーロン「ちょうど入れ違いでした。三日ほど前にフランクは下山していきました。今頃は、大陸中を駆け回っていることでしょう」(こちらを振り返りながら神殿へ続く道を行く白装束の男の左右には、広大な敷地を彩る花畑が広がっており、その所々では同じく白い正装を纏った女性たちがじょうろを片手に水をあげている姿もいくつか確認できる)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(その人工的な自然景観を冷ややかな沈黙と共に見つめている)

アーロン「見違えるほど美しくなりました。これもすべてフランク・・・ウーさんのおかげです」(花畑の中で作業をしている女性に手を振る)


スッ・・(足元で初々しく咲いている、多彩な花びらを持つ可愛らしいたんぽぽ畑の前で片膝をつくアーロン)


アーロン「七色たんぽぽ・・・春が来た証拠です。フランクにも見せてやりたかったな・・」




ザッザッザッザッザッザッ・・
(見慣れた神殿内の回廊を進むアーロンの背中に続いていく)


アーロン「突然の来訪で驚きました。何か緊急な用事でも?」(微笑みながら振り返る)


スッ・・(懐より小さな封書を取り出し、それをアーロンに差し出す)


アーロン「これは・・・ウー家の書状ですね。開けてみても?」(受け取った封書には同家の紋章を施した封蝋が捺されている)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・」こくり


スッ・・スッ・・・・かしょり・・・(慎重に封筒の折り重なっている間に指を通し、封蝋を丁寧に取り外しながら開けていく)


アーロン「どれ・・・・・・・」(手紙を広げてその内容を目で追っていく)


ふぁたふぁたふぁたふぁた・・(スズメ目のようなぷっくりした小鳥が回廊の低い塀の上にとまる)


アーロン「・・・これは・・・・・本当ですか?」(半信半疑の表情でこちらに聞いてくる)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・」こくり

アーロン「・・アースラの負債が・・・・彼女は今、応接間にいるはずです。行きましょう!」


フォーーーーーーー!!(感極まったアーロンが喜びの咆哮を高々とあげると、同じく回廊を行く同志たちが不思議そうな顔で彼のことを振り返って見ている)




アースラ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(寄り添うアーロンと共にソファに座ったまま手紙の内容を凝視する彼女の服装はいつものメイドシリーズではなく、ゆったりとした白装束を纏っており、そのお腹も元のスマートな体型に戻っていることから、無事に出産を終えたことが見て取れる。また彼女の象徴でもある蒼いセミセレブロングの艷やかな髪の両端からは、少しだけ尖った耳があらわになっていることから、彼女の中で何かしらの心境の変化があったことも窺える。また視点の主も彼女らと同じ目線の位置にあることから、対面のソファに腰を下ろしていることも分かる)

アーロン「どうだ?信じられない内容だろ?」

アースラ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ごしっ・・(込み上げる涙を装束の袖で拭う)


カショリ・・(小さく鼻をすすりながら、丁重に手紙を封筒にしまうアースラ)


アースラ「わざわざ届けに来てくださり、心から感謝申し上げます。アンジェリカさん」(涙で潤うブルーな瞳でこちらをまっすぐ見つめてくる)

アーロン「これで君はもう自由の身だ」ぽん(アースラの肩に優しく手を置く)

アースラ「私は何処へも行かないわ。だってここが私の家だから。それにこれからはあの子をみていかなきゃいけないのよ?心は自由に・・・・この身はムーアのために・・・・」


ガチャ・・


「失礼します」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(振り返るとソファ越しにいつものメイドネコシリーズを身に纏ったおトキが、白い絹に包まれた小さな赤ん坊を抱きながら部屋に入ってくる)


おトキ「お眠りになられました。ミルクを飲んですぐにです」フフ(と両手で抱いた赤ちゃんを「よいよい」しているのだが、その顔はこちらからでは見えない)

アーロン「キャロル・ムーア。女の子です」

アースラ「おトキちゃん、アンジェリカさんに見せてあげて」

おトキ「はい、お嬢様」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(こちらに近づいてきたおトキがそっと赤ちゃんを差し出すように見せてくる)


すやすやすや・・・(母親と同じく蒼い髪の毛が初々しく生えた艶玉のような肌を持つ天使のような新生児は、ちいちゃい目を瞑ったまま安眠している)


アースラ「まるであんまんみたいでしょう?」

ジーナ「??」(その言葉の真意が理解できぬまま母親の顔を見る)

アーロン「その例えはやめなさいタラー顔がまあるいということを言いたいんです」

アースラ「だからあんまんじゃない。本当は亡くなったアンマーニの名前をそのまま受け継がせようとしたんですけど、この人とフランクさんが「それだけは絶対にやめろ」ときかないもので・・」はぁ・・(彼女は本気だったようだ)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(今一度、赤ちゃんの顔を覗き込む)


むくっ(こちらの存在に気づいたのか、赤ちゃんの目が瞬時に見開くと、その母親譲りの水晶のようなブルーの慧眼と仮面越しに目が合う)



バウン!!
(その瞬間、眩い閃光が視界を覆い、視点の主はたまらず仰け反ってしまう)



あ~~~~ん!!あ~~~~ん!!
(同時に赤ちゃんもまた泣き出す)



ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」あ~~~~ん!!あ~~~~ん!!(赤ちゃんの鳴き声が聞こえる中、意識を戻すように首を左右に振りながら瞬きを繰り返すと、視界は元の世界を映し出す)

アースラ「大丈夫ですか!?」(俯くこちらを覗き込むように心配してくる)


スッ・・(大丈夫、と右手を差し出して応える)


アーロン「我々の為に、急いで神殿に来られたのでしょう。少しお休みになられますか?アンジェリカさん」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり(少し考え込んでから頷く)

おトキ「お~よちよち」あ~~~~っ!!あ~~~~っ!!(けたたましく泣き続ける赤ちゃんをあやしている)

アースラ「こんなに泣くなんて初めて・・・」あ~~~~っ!!あ~~~~っ!!

アンジェリカ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(自分が被っている面を指差す)

アーロン「ああ・・・そうか。その葬儀用の面にびっくりしたんだよ」

へこり(謝罪するように頭を下げる)

アースラ「そんな、謝らないで下さいアセアセ

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ちら


あ~~~~っ!!あ~~~~っ!!
(おトキが懸命にあやし続けるも一向に泣き止まないムーア)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(その状況を察したかのように立ち上がる)

アーロン「すぐに泣き止みますよ。そんな気を遣わないでください」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・」(外に出てくるとジェスチャーをしてみせる)

アースラ「気分転換するようなら私もご一緒しますわ」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・」(大丈夫、と起き上がろうとした彼女を静止する)


ガチャ


ルチア「ふぁ~~~あ・・・アンジェリカが来てるんだって?」ぼりぼり(振り返ると、どうしたらそんな頭になるのかというくらい膨れ上がったワイルドファンゴヘアーを掻きながらやって来るインナー姿の彼女が)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・」へこり

アースラ「ちょっとルチア。そんな格好で」んもぉ~

ルチア「いいじゃねぇかよ。よぉ、今日は珍しく一人か?」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり

アースラ「私の返済がすべて終わったの。その内容をベックフォードさんが手紙に書いて下さって、アンジェリカさんが渡しに来てくださったのよ」

ルチア「・・そっか・・・・・・良かったな、ルチア」にこり

アースラ「うん。ありがとう、ルチア」


あ~~~~っ!!あ~~~~っ!!
(泣き続けているムーアが自分の存在を知らせるかのように一段とボリュームを上げて泣き出す)


ルチア「あ~~~うるせえムカムカあたしが来るといつも泣き出しやがる」あ~~~~っ!!あ~~~~っ!!

おトキ「言葉遣いが伝染っては困ります。ねぇ~ムーアお嬢様♪」あ~よちよち

アーロン「ルチア。目を覚ますついでにアンジェリカさんと散歩でもしてきたらどうだ?」

ルチア「ああ、そうすっか。いいか、ムーア?もう少し大きくなったら、あたしがお前に狩猟稽古をつけてやるからな。カールとドリスの巣に置いてけぼりにしてやる」あ゛~~~~~~~っ!!(より一層泣き出す)

おトキ「嗚呼、なんてお可哀そうなムーアお嬢様。ご安心してくださいな。このおトキがお母様のように素敵な淑女になるよう、尽力致します」お~よちよち

ルチア「行こうぜ。こんな親馬鹿どもと一緒にいたら、自分の境遇が余計に惨めに思えやがる」(捨て台詞を吐きながら先に部屋を出ていく)

アースラ「大したもてなしはできませんが、時間の許す限り、ゆっくりしていってください。アンジェリカさん」にこ


へこり・・・カチャリ・・(一礼をして閉めるドア越しに幸せそうな家族の姿が垣間見える。また自然とムーアも泣き止んでいる)


ゾルルルルルルルル・・・・(振り返りドアを閉め切ると同時に視界を瘴気の渦が覆い尽くしていく)



To Be Continued







★次回ストーリーモードは8/29(木)0時更新予定です★