カツカツカツカツカツ(回廊を足早に、左手に聳える崖上からこちらを覗き込んでいる満月を見上げながら歩いていく一人称視点。その位置関係から、現在地の回廊が庭園エリアとは反対の場所であることが見て取れる)


ハッハッハッハッハッ(回廊の曲がり角より白装束を纏った二人組の男たちが談笑しながらこちらに向かって歩いてくる)


カツカツカツカツカツ(速度はそのままに彼らに向かって軽く会釈をしながら横切ろうとする)


白装束の男A「おっと・・あんた、確かフランクの知り合いだったよな?」


ピタ・・(彼らを横目に立ち止まる)


こくり・・(前を向いたまま静かに頷いてみせる)


白装束の男B「フランクはバーニーの部屋か?」


こくり・・


白装束の男A「いやな、倉庫を整理してたら、ボリス・・って、あんたに言ってもわかんねぇか。前の輸送隊長が隠してた、いい酒が見つかってよ。それを餌にたまには俺たちも混ぜて貰おうと思ってよ」

白装束の男B「って、そんな雰囲気じゃないか?」(心配そうに聞いてくる)

フリフリ・・(そんなことはないと首を左右に振ってみせる)

白装束の男A「なら良かった。きっとみんな喜ぶぞ」スリスリ(酒のボトルに顔を擦り寄せる)

白装束の男B「実はよ、バーニーとも酌み交わしたいと前々から思っていたんだ」

白装束の男A「あんたも知っての通り、フランクはその名の通り、気さくでオープンな奴だろ?あいつが来てから、神殿内がより明るくなったというか、バーニー達とも距離が近くなってな。アースラ達の作る飯は外界のそれより美味いし、今まで以上に仕事にも身が入るってもんさ」ハハハハハ

へこり・・(彼らに軽く一礼をして、その場を去ろうとする)

白装束の男B「あ、そうだ」

ピタ・・(彼らに背を向けたまま立ち止まる。左上より神妙な月明かりが照らしてくる)

白装束の男A「トイレに行くなら、そ~~っとな。近くの部屋で病人が寝てるんだ。頼むぜ」(気遣ったような小声で告げてくる)

へこり・・(彼らの方を向き、今度は深々と頭を下げる)

白装束の男B「じゃあ、先に行ってるぜ」


・・・・・・・・・・・・・・・カツカツカツカツ・・
(彼らが行くのを見届けると、再び足早に歩き出す)


ジーナ「ジェイソン・ウーはフランク・ヴューラーとして新たな狩人人生を謳歌」


カツカツカツカツカツ(先程の男たちが来た道を曲がり、廊下を歩いていくとレストルームと思しきドアのない開放された入り口と、そこから少し距離をおいた所に個室らしきドアが見えてくる)


カツカツカツカツカツ(レストルームを顧みることなく急ぎ足で通り過ぎ、ドアの方へ向かっていく)


スッ・・・・(周囲に誰もいないか確認した後、ドアの前にそっと立つ)


カチャリ・・・・(慎重にドアを開けると通路側より差す燭台の灯りが薄暗い部屋の中を切り裂くように照らしていく)


ハァ・・ハァ・・・・(部屋の奥より息切れする吐息が聞こえてくる)


スッ・・・・カチャリ・・(部屋の主を確認すると身を潜り込ませるように中に素早く侵入し、内側よりドアを静かに閉める)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(暗がりの中、足音を立てずに数歩進むと、部屋の右奥より蝋燭の灯りが広がっているのが見えてくる)


ハッハッハッハッハッハッ(少し進むと、その灯りがベッド横のサイドテーブルの上に置かれた小さな蝋燭が立てられた燭台であることが目視でき、その下で丸くなった黒毛のシェパードが特有の呼吸音をみせながらこちらを見上げている。また寝台の上ではその犬の主と思しき獣人が寝ている「シーツの膨らみ」も確認できる)


クゥ~~~~ン・・・・(黒毛のシェパードは視点の主が「誰であるか」確認したのか、弱々しい鳴き声と共に立ち上がり、そっと歩み寄ってくる)


スッ・・(懇願するように潤んだ瞳で見上げる犬の頭を撫でてやる)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(息を殺しながらベッドに接近すると、そこには見るからに衰弱した老メラルーが仰向けで、呼吸を乱しながらまるで悪夢をみているかのようにうなされながら眠っているのが見下ろせる)


バウッ(シェパードが決して驚愕することのないレベルの音量で吠え、主にゲストが来たことを知らせる)


ハァ・・・・ハァ・・・・・・(それに気づいたのか、以前にも増して痩せ細ったメラルーのマスターが重たい瞼を半開きにして、こちらを見上げてくる)


・・・・・・・・・・・・・・・・・(犬の吐息だけが部屋に聞こえる中、見つめ合う二人)


ああ・・・あああ・・・・・・・・(悶える老メラルーは震える右手を布団の中からやっとの思いで外に出すと、もっと近くに寄れと言わんばかりに手招きをしてくる)


スッ・・(言われるがまま、身を屈め、視線の高さを病人に合わせる)


ちょいちょい・・・(やつれた右手で顔を拭うモーションをみせる。おそらく仮面を取れと言っているのであろうか)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(面を取ろうか躊躇している間も、懸命に素顔を見せろとジェスチャーで伝えてくる瀕死のマスター)


バウッ(それを急かすように先程と同じ音量で吠えてくるシェパード)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ちょいちょい・・ちょいちょい・・(早く顔を見せてくれと右手のジェスチャーの速度を上げるマスター)


ゴブッ!!(その動作が生じさせたのか、突然、真っ黒な血を吐くマスター)


バウッ!バウッ!(それを見たシェパードが音量を上げて吠えてくる)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」スッ・・(両手を顔の両脇に運び、仮面を脱ぐ仕草をみせる)


スッ・・・・(そっと仮面を脱ぎ、被っていたフードを後ろに倒して、髪を振りほどくように顔を左右に素早く振る)


ハァ・・・・ハァ・・・・・・(臨終を迎えつつある老メラルーの生気を失った弱々しい瞳に、長い黒髪の美女が映り込んでいる)


メラルーのマスター「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」グッ(渾身の力を振り絞り、ひきつった笑顔と共にサムズアップしてみせる)

ジーナ「僭越ながら終焉を見届けに参りました」

メラルーのマスター「遅かれ・・早かれ・・・・そうするつもりじゃったのじゃろ・・?」(満面の笑顔で相反する願いを告げてくる)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」こくり

メラルーのマスター「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」うん(満面の笑顔で頷いてみせる)

ジーナ「・・・・・最期に・・・・遺言はありますか?」(湧き出る潤んだフィルターが視界を歪ませていく)

メラルーのマスター「その邪眼の淵に宿る絶望の大河に光を・・・・・それができるのはアースラじゃニャ・・」


ドウン!!
(視界を覆う涙が瞬く間に血色に染まっていく)


メラルーのマスター「お前さんも散々、苦しんできたんじゃなニャ。どれ、今度は天から光と闇の闘いの続きを見届けようぞニャ」にかっ


バッ!!
(マスターの口を右手で押さえつける)



ワン!!(傍らで吠える犬の目を左手で塞ぐ)




ググググググ・・・・!!(口を塞がれたマスターは苦しむどころか、安堵に満ちた優しい目でこちらを見つめている。それを見届ける視点の主もまた、悲しみを拭うように荒々しい鼻息を大きく吸い上げ、使命を再確認しながら全身に力を込めていく)




バウバウ!!バウバウ!!





ググググググググ!!





ググググググ・・・・!!





バウバウ!!バウバウ!!





グググググ・・・・・・!!







ググググ・・・・・・・・・・








グッ・・・








クゥ~~~~ン・・・・・








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(そっと右手を離すと、マスターの目は安らかに閉ざされている)





はぁ・・・はぁ・・・・・・(死に顔を見届けると息を整えながらよろめく体を力いっぱい起き上がらせる)



クゥ・・・・・ン・・・(シェパードもまた立ち上がり、ベッドに上半身を乗せて息を引き取った主の顔を愛でるように舐めている)



ジーナ「安らかに。マスター」(視界に映る右下瞼の淵に溜まった清澄な血涙が、サイドテーブルの上で揺らめく蝋燭の灯りに乱反射をみせながら一思いに零れ落ちていく)







Recollection No.1_57







フラ・・フラ・・・(薄暗い回廊をおぼつかない足取りで歩いていく)


ちら・・(見上げる夜月は役目を終えたかのようにおどろおどろしい灰雲に覆われていく)


ズシャーーーーーーーーーン(その光景をスライドさせながら前のめりに倒れ込む)


はぁ・・・・はぁ・・・・・・・(目線に沿った一直線の回廊が次第にぼやけていく)


ガサガサ・・・・・プルプルプル・・・(懐を弄り、やっとの思い小銃型注射器を取り出す)


はぁ・・・・はぁ・・・・・・・(ぼやけた視界の中、這いつくばったまま床の上に左腕を伸ばし、注射器を撃ち込もうと試みる)


はぁ・・・・はぁ・・・・・・・(針が左腕の関節部に触れる)



バッ!!(その瞬間、何者かによって注射器が奪われる)



はぁ・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・(死にゆくモンスターのように怯え震えながらやっとの思いで見上げると、霞んだ視界に男性らしき人物のシルエットがこちらを見下ろしているのが映っている。そしてまた、背景の夜空に月の姿は見えない)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(視点の主はその相手を確認して安堵したのか、身を委ねるように目を瞑ると、同時に視界が黒く塗り潰され、役目を終えたかのようにフェードアウトしていくのだが、その一連の様はどこか疲弊しきった視点の主の心情を表しているようにもみえるのであった....)



To Be Continued







★次回ストーリーモードは8/22(木)0時更新予定です★