~外街四番街「Antique Shop NyaNya堂」....

ニャ~ニャ~カリカリルンルン(生憎の空模様の下、見慣れたテラス席からいつもの外街の景色を眺める視点の主。店側(背後)からはやたらと猫の鳴き声と何かを引っ掻いている音が聞こえる)


とっとっとっとっとっ・・(視界の左側より頭にターバンを巻いた「パープル毛のメラルー」がお盆(お紅茶セットが乗った)を丁重に「とっとと」運んでくる)


アニャニャ・カーン二世「マスターがいれた紅茶には到底敵いませんが・・」かちゃり・・(テーブルにお盆を置く。他にも誰かが来るのだろうか、ティーカップが2つ用意されている)


ぼちょぼちょぼちょぼちょアセアセ(アラビアンデザイン的なティーポットを「一丁前にえらい高く掲げ」、ティーカップに「ぼちょぼちょこぼしながら」注いでいく)


アニャニャ・カーン二世「どうぞですニャ」スス~(と、びっちょびっちょになった「満杯熱々ティーカップ」を勧めてくる。ちゃんと主の利き手に合わせてカップの取っ手を通常とは反対の右側にしているところが実に憎らしい)

ジーナ「ありがとうございます」かちゃり・・(それを右手に取り、口元に運んでいく)

くんくん(お紅茶の香りを嗅ぐ)

ジーナ「柑橘系のフレッシュな香り・・・原産は東方ですね?」

アニャニャ・カーン二世「さすがでございますニャ。ウー家からの差し入れでして、ニャんでも特級茶葉だとか」

スッ・・(ティーカップを口にあて慎ましく一口目を堪能する)

アニャニャ・カーン二世「・・・・・・・・・・・・」ぱちくり(しながらこちらを見上げ、一刻も早く「お味の感想」を拝聴したい様子だ)

ジーナ「北風みかんの風味とはまた少し異なる「東風みかん」の温和で精錬な芳香・・・いれ方も勉強なさったようで。ニャ・モンドのメニューに乗っていてもおかしくありませんわ」コクッ・・(と二口目を味わう視界の左手では「イエス!!」と叫ばんばかりの感極まったリアクションをしている二世の姿も)

アニャニャ・カーン二世「ご満足いただけたようで「ニャにより」でございますニャ。実は先日、リーネル婦人のご自宅にお伺いした際、紅茶の入れ方を教わりまして・・・ニャんでも無類の紅茶好きだと仰っておりましたニャ。彼女・・アースラにも紅茶を出したそうですが、その時ばかりはカフェインレスのものをいれたと・・」

ジーナ「やはり身籠ったのですね?アーロン・ロザリーの子を」

アニャニャ・カーン二世「そのようですニャ。紹介状はジェイソン・ウーが書いたのでしょうニャ」

ジーナ「・・・・ロザリー家と復活者の間に生まれた子・・・・」

アニャニャ・カーン二世「現在は神殿で働く獣人がリーネル婦人のもとを定期的に訪れ、お産に関する助言や実際に臨床現場に立ち会い、トレーニングもしているようですニャ」

ジーナ「そうですか・・おトキさんが・・。引き続き監視をお願いします」コク・・(慎ましく紅茶を嗜む)

アニャニャ・カーン二世「ハッ。それとアースラがリーネル婦人を訪問している間に、ルチアがここへやってきました。目的はブツの購入です。「顔なじみ」ということで、品質が高いものを出したら、大喜びしていましたニャ」

ジーナ「ボリスに関する調査は?」

アニャニャ・カーン二世「外街で聞き込みをしてきたと。私にも「ニャにか」分かったら教えて欲しいと再度要求してきましたニャ」

ジーナ「その口ぶりだと、我々に疑いは持っていない様子ですね・・・そちらの対処もお願いします」

アニャニャ・カーン二世「かしこまりましたニャ。それではまた、「ニャにか」ありましたらご遠慮無くお声掛けしてくださいニャ」へこり


音符~~~~~ぺしぃ~んぺしぃ~んぺしぃ~んぺしぃ~んハッ
(お褒めの言葉を噛み締めながら「口笛ご陽気に」店側へ戻っていく二世を横目で追うと、獣人サイズのちいちゃい店前に置かれた獣人猫用の「お椀型爪研ぎ」に群がる猫たちの「後ろ頭」を連続でひっぱたきながら(奇跡的にドレミファの音階になっている)店の中へ消えていく)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・・」フフ・・(振り返り紅茶を楽しむ背後からは引き続き「ニャ~ニャ~カリカリ」と音がすごい)


バカラッバカラッバカラッバカラッ・・(L字路の東側、外街特有の「ほそっこい公道」を一台の見慣れた豪奢な馬車が両端に連なるバラックに触れんばかりの間隔を匠にキープしながらゆっくりと走ってくる)


ニャんだニャんだ(と背後から声が)


ヒヒィ~~~ン・・・ガチャリ・・バッDASH!
(テラス席の前で停車した馬車のドアが開き、颯爽とベックフォードが飛び降りてくる)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(御者台に座る運転手に何やら話をつけているベックフォード)


ヒヒィ~~~ン・・バカラッバカラッバカラッバカラッ・・
(おそらく「数十分後に迎えに来い」とでも言われたのであろう。馬車はそのままL字路の西側の公道へ走り去っていく。その光景をバックにこちらへ姿勢良く歩いてくるベックフォード)


ベックフォード「すみません。お待たせしました」へこり

ジーナ「とんでもありません。貴方がこのテラス席を残してくださったおかげで退屈しませんでしたわ。それにこちらも」(と、差し入れの紅茶が注がれたティーカップを掲げながら、向かいの席に座るよう促す。かしこまりながら着席するベックフォード)

ベックフォード「そう言っていただけると助かります。何分、時間を作るのが下手なもので、無駄に走り回ってばかりなんです」やれやれ

ジーナ「多忙なご様子で。以前にも増して、より気高い品格を感じますわ」

ベックフォード「いやぁ・・・そう言ってくださるのはジーナさんだけです」ぽりぽり(頭を掻きながらも素直に喜んでいる様子だ)

ジーナ「同じものでよければ是非」コポコポコポ・・(ティーポットで丁寧にカップへ注いでいく)

ベックフォード「ジーナさんがいれた紅茶を飲めるなんて幸せです。差し入れした甲斐がありました」はははは

ジーナ「先日、ルチアさんたちが来られましたがお会いになられましたか?」スッ(ホワホワ湯気立ついれたての紅茶を差し出す)

ベックフォード「それがその日も邸を留守にしていたもので・・彼女たちはここにも?ああ・・例のものを買いに来られたのか」あちち・・(とカップを口にあてながら、店側を見ている)


ちら・・(後ろを振り返ると店先に「如何にもそれっぽい」スラムの住民が二世と何やら話し込んでいる)


スッ・・(住民から金銭を受け取ると、引き換えにそっと薬包を手渡す二世)


ベックフォード「繁盛しているようですね。王都の知人から聞いた話では末端価格も悪くないし、低賃金の労働者でも手に入る「エントリー版」が特に人気だと。布教活動も順調なようで何よりです」ズズズ・・(視点の主が振り返ると紅茶を飲んでいる彼の姿が)

ジーナ「これも「直営店」を作ってくださったあなた方のおかげです」へこり

ベックフォード「ウー様のご意向に従っただけです。僕は何も・・」

ジーナ「そのジェイソン・ウーは今や貴方です。フランクさんもお元気とのことです」

ベックフォード「そうですか・・・・それは・・何よりです」フフ・・(まるで遠い昔を思い出すかのように遠い目をしながら微笑んでいる)

ジーナ「先程、留守にしていたと仰っていましたが、例の学園設立の件で?」

ベックフォード「はい・・・場所が場所なもので、営利目的となるとなかなか支援者が見つからなくて困っていたのですが、ドンドルマにてローゼンクロイツという製薬業界では名の知れた名家のご子息と接触することができました」

ジーナ「ローゼンクロイツ・・・」

ベックフォード「なんでもフォンロン地方より更に離れた場所にある大砂漠の都市で狩人向けではない、一般の方々に向けた医薬品を調合、製造している一族だそうで、都市の中に病院も設けているそうなのです」

ジーナ「奇特な方々で。彼らが支援を?」

ベックフォード「フィランソロピーも積極的に行っていると。今回の話に大変興味を持たれ、全面的に支援してくれると約束してくれました。後日、改めて王都に詳細を詰めに来る予定になっています」

ジーナ「そのご子息とは現在の代表の方なのでしょうか?」

ベックフォード「はい。ラインハルト・クリスティアン・ローゼンクロイツという御方で、年頃は私と同世代の印象を受けました。今は家柄を離れ、実社会を知るべく、剣術修行や志を共にできる人材登用をする為、こちら(現大陸)に来ているとか・・・ウー様とは違う性質の影響力を放たれた方でした。いやぁ・・・本当に世界は広いと思い知らされましたよ」

ジーナ「新たな時勢の黎明があなた方を引き寄せているのかもしれませんね。これから新たに生まれてくる命もまた・・」フフ・・

ベックフォード「故シュレイド王国の没落にはじまり東西分裂、そして先の東側での革命を経て、シュレイド地方の封建社会は崩壊し、資本主義が新たな概念となるでしょう。私がその礎を築くことができるかどうかは分かりませんが、試されていることは実感することができます」

ジーナ「その大望に満ちた野心から、かの少女の存在を懸念している・・・先日もまた屋敷の前で彼女を見ました」

ベックフォード「ええ・・・今のウー様に彼女のことを知らせれば、王都に戻ってくると言いかねません・・。それはウー様の邪魔をしてしまうことに・・」

ジーナ「建前は。屋敷内の人材を一掃し、「前任者」の存在を自身とすり替えることに成功したあなたの本心は、今の自分の仕事を邪魔されたくない一心から、彼に戻ってこられるのを恐れているのです。学園の提案を渋った理由もまた同じ。以前のあなたならば喜んで引き受けていただろう慈善活動は、あなたのウー家にとって無利益な雑用同然。かつてのジェイソン・ウーが纏わざる得なかった氷の鎧という冷淡さにあなたは目覚め始めているのです」

ベックフォード「・・・・・かつてウー様は、ストレス発散を理由にヴィリエ様に非道な任務を行わせていました・・。今思えば、それもまた、ヴィリエ様自身がサディストであったことを見越したウー様が、ヴィリエ様のストレスを発散させるために命じていたのではないかと思えるのです。ウー様の本質は義侠にこそある。だとすれば・・彼はウー家の人間には相応しくない・・。先代は心優しいジェイソン・ウーを疎んじていたという話をヴィリエ様から聞いたことがあります。利益にならない慈しみはウー家には不要なのです」


ニャ~ニャ~カリカリ・・(背後から猫たちの喧騒が不思議と静かに聞こえてくる)


ベックフォード「あ、そうだ。ジーナさんに報告しておかなければならないことがありました」

ジーナ「先日、神殿を訪れた際、アーロン・ロザリーより依頼されたことですね?」

ベックフォード「お察しの通りです。彼は逃走したオクサーヌ・ヴァレノフの捜索依頼と共にジーナさんの捜索依頼も申し出てきたのです。表向きは了解しましたが、如何致しましょう?」

ジーナ「灯台下暗し。今までどおりで」クスッ・・(微笑を浮かべながらフードを被り直し、席を静かに立ち上がる)

ベックフォード「フフ・・・かしこまりました」






Recollection No.1_55






ザッ・・(テラス席に腰を下ろしたままのベックフォードを横目に通り過ぎようとする視点の主)


ジーナ「ヴィンセント・ベックフォード」ぴた・・(彼の横で立ち止まる)

ベックフォード「??」(横目の視界にこちらを見上げる彼の顔がぼんやりと映り込む)

ジーナ「きっと、あなたこそ、先代が望む跡継ぎだったのでしょう。ならば以後のウー家の血を紡いでいくのもまた・・・・あなた方の世代に期待していますわ」(こちらを見上げる野望を抱いた青年の瞳に投影される美女の微笑み)



To Be Continued







★次回ストーリーモードは8/15(木)0時更新予定です★