ゴトゴトゴトゴトゴト・・
(行き同様、豪奢な内装を施した馬車の中から小窓越しにヒンメルン山脈の広大な「夜景」を眺めている「仮面越しの」一人称視点)


ちら・・(相変わらず進行方向側のシートにふんぞり返っているジェイソン・ウーなのだが、行きのように「無駄口」を叩かず、まるで帰りが名残惜しい子供のような顔をしながら窓の向こうに見えているのであろう白雪神殿を眺めている)


ジーナ「思い出深い夜になったようですね」(こちらの声に皮肉めいた笑みを浮かべて反応を示すジェイソン)

ジェイソン「彼女のパイは最高だった。そういう意味では君にとっても印象深い夜会になったんじゃないのか?」ゴトゴトゴトゴトゴト・・(窓の外を見つめながら返答する)

ジーナ「ええ。あのパイをまさかヒンメルンで食べられるとは思ってもみませんでした」

ジェイソン「生地の編み方もちゃんと「肉球柄」になっていたしな」フフッ・・(微笑み合う二人)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・


ジェイソン「今宵の晩餐は明日のために・・」

ジーナ「アースラさんの言葉ですね?」

ジェイソン「アーロン・ロザリーは貴重なパートナーを見つけたようだ。彼をロザリー家の呪縛から開放したのは彼女だよ」ゴトゴトゴトゴトゴト・・

ジーナ「そんな彼らを導いているのはあなたです。それをお忘れなく」(諭すように目をそっと下に向ける)

ジェイソン「・・・・・今の言葉は、「母親」からの感謝の言葉して受け止めておこう」(再び窓の外を眺める)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・


ジェイソン「それと・・」

ジーナ「??」

ジェイソン「行きに君が話した計画・・・あの提案は佞臣の誑言として受け止めておこう」フッ(こちらを見て素直に微笑む)

ジーナ「如何様にも」

ジェイソン「っと、もうひとつ」

ジーナ「??」

ジェイソン「その際は世継ぎを残してからがベストだと思うが・・・どう思う?」(ニヤニヤしながらこちらを物色するように見てくる)

ジーナ「それはご自身で決断されるのが良いかと」(淡々と返答する)

ジェイソン「そっけないな・・・それから、もうその面は外しても大丈夫だと思うけど?」


スッ・・(両手で仮面を外す)


ジェイソン「そうそう。そのマゼンダの瞳こそ、君の象徴だ。それに僕は寛容だ。君の過去に何があっても構わないし、例えデーモン・ロザリーと関係があったとしても、それこそ遠い昔の話だ。変わらないのは、君のその永遠の美貌だ」スッ・・(身を乗り出してこちらに接近してくる)


ガッゴンハッ(車輪が岩に乗り上げたのか車内がひどく揺れ、その衝撃で舌を噛むジェイソン)


ジェイソン「んげぇ~~~!!ベックフォ~~~ド!!」(叫ぶ空いた口からは「歯型」のついた舌が見える)


スコン(視点の主の後ろ側にある仕切り板が開く音が聞こえ、後ろを振り向くと若い従者が顔を出している)


ベックフォード「すみませんアセアセ大丈夫ですか?」

ジェイソン「まったく・・・それで後任が務まると思っているのか?」ブツブツ(舌を長い袖で撫でながら独り言をかましている)

ベックフォード「??」

ジーナ「スヘイラは?」

ベックフォード「ああ、それでしたら・・」(目を下に向ける)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・」スッ(少し身を起こして仕切りの向こう側を覗く)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・(御者席でベックフォードの太ももを枕代わりにすっかり寝込んでしまっている「ドラゴンマスク」を被った隠密毛のメラルー)


ジーナ「まぁ珍しい。あなたは彼女に信頼されたようですね」

ベックフォード「いやぁ~、そんなぁ~」(と謙遜かましながらもやたらと嬉しそうな表情を浮かべている)

ジェイソン「しっかり前を見て運転しろ!!」は、はい~~アセアセスコン(と慌てて仕切りを閉めるベックフォード)

ジーナ「フフ・・・今宵も良い月ですこと・・・」(そっと視線を窓の外に見える夜月の方に向ける)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・






Recollection No.1_42






~翌朝、王都の外街、キングスラムウォール四番街....

ハッハッハッハッハッハッ・・(いつものテラス席。視点の主の目の前にもいつもの「肉球柄」のグラッチェリーパイが見え、足元では黒毛のシェパードがこちらを見上げながら何か言いたげそうに「ハッハッ、ハッハッ」言っている)


ジーナ「お別れを言いたいのですか?」なでなで(「ハッハッ、ハッハッ」言うシェパードは純真な瞳で否定も肯定もせず、ただ視点の主を見上げている)


だぁ~かぁ~らぁ~!!引っ越しの日程はいつがいいかニャって言ってるニャ~!!(そっと左側に首を傾けると、いつものように「腰の低い」メラルーのマスターに向かって、何やら段取りを決めるようなモーションを見せながらテキパキと話しかけているベックフォードの姿が見える。その隣では「もうマスクを被っていない」いつものスヘイラが愛らしい長いマツエクをパチクリさせながら、若き従者が言っていることを老猫に向かって「大声で」通訳している様だ)


ジーナ「大丈夫かしら。あなたのご主人は「少しだけ」耳が遠いから」なでなで(「ハッハッ、ハッハッ」言うシェパードは引き続き純真な瞳で否定も肯定もせず、ただ視点の主を見上げている)

スヘイラ「あ~ん!!いっくら言っても無理だニャタラー」(隣で「はぁ?はぁ?」と繰り返す老猫に匙を投げたようだ。ベックフォードはまだ一人で段取りを淡々と説明している)

ジーナ「ほら。ちょっと行ってくるわ」スッ・・(席を立ち上がる)

スヘイラ「あ~ん!!ジーナ様、助けておくれニャアセアセ」してててててDASH!(半べそかきながら太ももに抱きついてくる)

ジーナ「何を伝えれば?」なでなで(ぐりぐりと視点の主が着ているいつもの黒衣に顔面をスリスリして甘えているスヘイラの頭を撫でてやる)

ベックフォード「ええ、ですから引っ越しの日時を決めて頂ければ、後は我々にお任せくださいと」ペラペラ(スケジュール表らしき手記をめくりながら予定を確認しているようだ)

ジーナ「わかりました」ニャ~んでこんな簡単なことが伝わらねぇ~ニャ!!(とブチ切れているスヘイラ)


スッ・・(キョトンとしているメラルーのマスターの目線に合わせて腰を屈める)


ジーナ「マスター。あなたの最愛のアースラさんが、ヒンメルン山脈の神殿で待っています。ですのでお引越しの日時を決めたいのですが?」

メラルーのマスター「お、おお~~。う、うう、うううUBUのやつが待っておるってニャ」うっそ!通じたニャ(とスヘイラの声)

ジーナ「はい、そうです」

メラルーのマスター「そ、そ、そ、そそそれじゃニャ、きょきょきょきょ今日がいいじゃニャ」にっこり


ちら・・(この願望に対し返答を求めるようにベックフォードを見上げる)


ベックフォード「さすがに今日は・・・明日の早朝でしたら、時間が作れます」

メラルーのマスター「??」きょとん

ジーナ「明日の早朝でしたらお迎えにあがれると」コクリ(満足げに頷くヨボヨボのマスター)

ベックフォード「神殿の方にはすぐに伝令を飛ばしておきます。きっとアースラさんとルチアさんもお迎えにあがるかと」

ジーナ「アースラさんもお迎えに来てくれるそうです」ニカァ~~~(すきっ歯を見せながら微笑むメラルーのマスター)

スヘイラ「しょんなことより、準備は大丈夫かニャ?」

メラルーのマスター「えっ?」だからニャ~んでぇ~!!(と嘆くスヘイラ)

ジーナ「準備は大丈夫ですか?良ければ一緒に手伝いますが」


グッ(満面の笑みでサムズアップして返すマスター)


スヘイラ「その返答じゃ、手伝って欲しいのか分からニャいニャタラー

ジーナ「手助け無用と。お誘いがあってから、いつでも旅立てるよう、準備なさっていたみたいです」スッ(腰を上げるその隣から、今しがたの解釈に対し「おお~~」と感嘆の声をあげるスヘイラとベックフォード)


グッ(引き止めるように黒衣を掴んでくるメラルーのマスター)


ジーナ「??」

メラルーのマスター「お前さんに逢えなくのは少し寂しいが、どうか、この年寄りの最後のワガママを許しておくれ」にこっ

ジーナ「お元気で。マスター」


たしっ(ハグを交わす二人)







ガヤガヤガヤ・・・(王都内、夕暮れ時の噴水広場を行き交う人々をベンチに腰掛けながら見つめている)


ベックフォード「不思議なものですね」(隣を見ると横に並んでベンチに座っている若き従者の姿が)

ジーナ「??」

ベックフォード「この広場は王都の中心で、たくさんの人達が行き交う場所でもあります。市民、観光人、商人、学者、書士隊・・・その多くの人がここで出会っては別れていく・・・互いを知らぬまま・・ね」

ジーナ「思いがない出会いは別れとは言いません。それはただのすれ違いに過ぎません」

ベックフォード「では、貴方とマスターは?」

ジーナ「・・・互いに名前も知らない仲・・。ただ、それだけですわ」

ベックフォード「・・・・・・・・・・・・・・・・」フフ・・(その言葉の意味を抽象的に捉えた後、思わず笑みがこぼれたのだろう)

ジーナ「ベアトリクス家に関する調査の件は順調ですか?」

ベックフォード「さっぱりです(首を左右に振りながら)。ウルバン夫妻の死因、それにその遺体に関することも王都の事件簿には何も記されてはいませんでした。手掛かりは生き残ったアースラさんと血まみれの血判状のみ・・・。まったく人というのは他人に関して無関心なものだと改めて思い知らされました。他人の死もまた、すれ違いなのでしょうね・・」はぁ・・

ジーナ「あなたは任務に対し、懸命に取り組んでいます。どうしてウー家に?」

ベックフォード「私は外街の二番街で生まれました。両親は幼い頃、病気で他界してしまい、残った私は知人の獣人が営む食堂にて住み込みで働かせてもらっていました」

ジーナ「月明かりのスポットが素敵なレストラン・・・確か「栗入りのあんまん」が売りでしたわね」

ベックフォード「さすが。ご存知でしたか。そこで偶然、店の常連客であったヴィリエ様と知り合い、以後、親しくさせてもらいました。十代後半の頃、ヴィリエ様から突然、「ウー家で人材を募集しているが君はどうするかね?」と言われ、次の日、身なりを整えて屋敷を訪れ、幸運なことにも今こうして王都にいることができています。これこそ不思議なことです」フフ

ジーナ「ヴィリエ様は人材登用にも長けておられたようですね」いやぁ~そんなぁ~(と謙遜ぶちかましながらデレデレわろうている若き従者)

ベックフォード「私はヴィリエ様の腹心として働かせていただきました。ヴィリエ様がウー様の命により、不徳義な任務についていることも知ってはいましたが、ヴィリエ様は「断じて君の手を悪行に染めるわけにはいかない」と・・汚れ仕事はすべて自分が引き受けると悪鬼羅刹の如く任務をこなしておられました・・。またヴィリエ様はこうも言っておられました。「私はいずれ恩讐の彼方の末、殺されるだろう。お前は必ず大物になる。私のようになる前に、この屋敷で培った知識と資金をもとに王都より羽ばたけ」と・・」

ジーナ「ヴィリエ様はあなたの才能を買われていたのですね」

ベックフォード「どうでしょう・・・やがてヴィリエ様の予見は見事的中し、あのような無残な姿に・・・私は慟哭と同時に激しい怒りを生まれて初めて覚えました。そして胸に誓いました。いつか殺人犯を見つけ出し、公正な断罪を処すことを。そしてまた、アースラさんの両親を殺害した犯人もまた、探し当てたいと思っています。きっと私は彼女の境遇を知り、自分と照らし合わせているのかもしれません・・」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・」

ベックフォード「あ、すみませんタラー自分の話ばかり・・。今の話は忘れてください」にこ

ジーナ「いえ。あなたの来歴とパーソナリティを少しでも知ることができて光栄です」

ベックフォード「はは・・・あなたにそう言われるとなんだか恥ずかしいな・・」

ジーナ「ですが時には、互いに知ることもなく、別れていくこともまた正しい選択ではあります。あなたならきっと志を成し遂げることができるでしょう」(こちらを見つめている純朴な青年の瞳の中で微笑む聖母のような美女の笑顔)

ベックフォード「・・・ありがとうございます。ジーナ・・さん・・・」(顔を赤らめながら目を背ける)


ガヤガヤガヤ・・・(やがて陽が沈みかける広場では引き続き様々な人々が交差しあっている。そんな日常的な光景を黙って見つめる視界が塗り潰されるようにブラックアウトしていく)



To Be Continued







★次回ストーリーモードは7/1(木)0時更新予定です★