~翌朝、王都の広場....

ガヤガヤガヤ・・・・
(一人称視点。見上げる鐘塔のてっぺんから、ロープで首を括られた男の遺体(如何にも貴族の従者っぽいタイトで薄い緑な宮廷衣装を身に纏った「バッハ風白髪クルクルウィッグ」を頭に被った色白細長中年男)が吊るされている)


ぷらぁ~ん・・(宙吊りになった遺体に焦点を当てると、その両眼は何か鋭い爪のようなものでほじくり返されたように「ぼっかり」と眼孔が空洞になっており、そこから滴り落ちる生々しい血は、まるでこの惨死体が生前犯した大罪に対し、贖罪の涙を流しているかのような演出効果をもたらしている)


フッ・・(視点の主はその無残な光景に対し、鼻で笑うと下を向いて振り返り、鐘塔の下に募る人混みを避けながら歩いていく)


ガヤガヤガヤ・・(背後から聞こえてくる喧騒を抜けて公道に出ると目の前を通り過ぎていく通行人越しに、白い装束を纏った体格の良い白人が、睨むような目でこちらを見ていることに気づく)


ガヤガヤガヤ・・・・(白装束の精錬なイメージとは打って変わり、男は伸び放題の無精髭に少し潰れた鼻、そして明らかに正常ではない冷酷な目つきといった粗野な風貌をしている)


ザッザッザッザッ・・(その白装束の男の方へ怖じけず進んでいく)


白装束の男「黒いフードコード・・。カーンにあんたを探して神殿まで連れて行けと言われた」ぼりぼり(右頬にできた粉瘤を掻きむしりながら話しかけてくる)

ジーナ「・・・・・・。手順は如何様に?」ガヤガヤガヤ・・

白装束の男「今日は物資の補給日でね・・・でかい大タルに細っこいあんたを隠して神殿まで運ぶのは簡単だ。俺はあんたの名前も知らされていなきゃ、あんたが何者かも知らねぇし、神殿であんたが何をしようが俺は知らねぇし、仲間にも言う義理はねぇ」ぼりぼり

ジーナ「報酬は?」

白装束の男「カーンから極上のブツを頂戴したよ。ところであんた、鼻水は出ねぇか?王都は埃っぽくて嫌になっちまう・・」ずるずるずる(きったい鼻水を白装束の袖で拭う)

ジーナ「・・・・・・・・・・」

白装束の男「で?行くのか行かねぇのか?」ずるぅ~~~(きったならしく濃厚であると思われる鼻水を豪快にすすりあげる)






Recollection No.1_23






ゴトゴトゴトゴトゴト・・・(大タルの中と思われる一人称視点。蓋の隙間から差す微かな光の束が暗闇の樽中を照らしている中、険しい斜面を進んでいると思われる荷車の車輪による振動と激しい物音が「車内環境」を更に悪くしている)


スッ・・(蓋を指で少しだけ上げ、隙間から外の様子を覗き見ると、自分が乗っている荷台を「人力」で牽引している白装束の男の武骨な背中に時間経過を示す西陽が当たっていることに気づく)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・(周囲に目を配ると右手には頂点の見えない断崖絶壁が山道沿いに続いていおり、左手には現在地の高度を示すヒンメルン山脈の美しい景色が広がっている)


へぇ~~~っくしょい(背を向けたまま「輸送スタイル」の男が豪快にくしゃみをかます。おそらく標高が上がり気温が低下しているのであろう。男はくしゃみをした後に、顔を垂れているのであろう鼻をまたしても袖で拭き上げると、ホットドリンクが入っていると思われるスキットルをクイッと一杯やっている)


コトン・・シュルッ・・(蓋を静かに閉め、視点を暗闇の中に戻し、仄かに見える左腕の袖を捲りあげる)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・(揺れる「車内」の中、懐から例の小銃型注射針を慎重に取り出す)


ブシュッーーーーー(左腕に針を突き刺すと同時に薬剤を注入していく)


ズオン(視界全体をマゼンダの発光が覆い尽くす)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・(やがて視界の色は、時の経過と共にぼやけながら元の暗闇に戻っていく)






ゴトゴトゴトゴトゴト・・・


「もうすぐ神殿だ。倉庫に置いてやるが、神殿の連中が寝静まるまでは下手な真似をするな。いいな」(樽の外から男の忠告が聞こえてくる)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・


ギッ(荷台の「持つ所」の角度を上げるような音が聞こえる)


ガッコン!!コトコトコトコト・・(一気に何かを乗り上げる衝撃を超えると、先程とは違って滑らかに進む車輪の音に変わっていく。おそらく山道を終え、神殿の平坦な石床で作られた敷地内に入ったのであろう。同時に視点の主は、より一層息を潜めることに集中する)


「よぉ!!ボリス!!頼んでおいた酒は手に入れてきただろうな!?」(少し離れた位置よりしゃがれた男の大声が聞こえてくる。そして初めてこの男の名前も知る。そういえばなんとなく「ボリスっぽい顔」をしていたような気も....)

「ああ!!お前ら向けのホピ酒から、特上のブレスワインまで頂戴してきてやった!!感謝しろ、クズ共が!!」ガッハッハッハッハッ(ボリスの笑い声、そして遠くからも品のない笑い声が「いくつか」聞こえてくる)


あ~鼻が止まらねぇ・・ちきしょぉ~・・・コトコトコトコト・・


へいっしょっとな・・・ガコン・・コトコトコトコト・・(再び何かに乗り上げてから進み出すのだが、その音が反響して聞こえることから、どうやら神殿内に入った様子である)


「クソボリス。王都は楽しんできたか?」(神殿内の回廊なのだろうか。割と近い位置から「セクシー気味な女の声」が反響しながら聞こえてくる)

「ヘヘ・・。なんだよ、ルチア。妬いてんのか?」(返事と共に荷車が停まる)

「くたばっちまいな、クソボリス。あたしが外街の娼婦に嫉妬するとでも思ってるわけ?それより、例のものは調達してきたんだろうな?」(後半のセリフは小声に、こちらに近寄ってきているようだ)

「ああ。しかも今回のは特上品だぜ」ヒヒヒヒ

「嘘だろ、クソボリス。どうしてそんなものをあんたが手に入れることができたんだよ?」

「馬鹿野郎。俺を誰だと思ってんだ?」

「クソボリス」(即答)

「もうお前にはやらねぇ」コトコトコト・・(荷車を進める)

「冗談だよ。悪かった。この通り。で?どれくらい手に入ったんだ?」

「声がでけぇぞ。・・・「二代目」は何してる?」

「あ?バーニーか。相変わらずハンターごっこに明け暮れてるみたい。よっぽど「外の世界」に出られたことが嬉しいみたいだぜ」

「・・・あいつは長い間、投獄生活を送っていたからな・・。無理もないさ」

「なに、クソボリス。急にあいつのことなんか気にして。まさか相手が見つからなくって、そっちの気に目覚めたってわけじゃねぇだろうな?」

「うるせぇ。狩猟に出たってことは、直に帰ってくるか・・・あれこれ言われる前に酒を運んじまおう。手伝ってくれ」ゴトン(わざと考えを口にしてこちらに状況を伝えた後、荷車の「持つ所」を地面に置いたようだ)

「いいけど・・あ、これね」ガション(木箱に入っていると思われる酒瓶が揺れる音が聞こえる)

「おっと、こいつもだ」ガション(ルチアという女が抱えた木箱の上に更に重ねた模様)

「ハンター時代を思い出すね。こういうのなんて言うんだっけ?そうそう。運搬クエストだ」ハハハハハ

「しっかり運べよ」ぺちん(お尻を叩いたようだ。バカでスケベだから)

「あんたも。くれぐれも例のものを見つかるんじゃないよ?」

「分かってるさ。ジェイミーさんの時は仕事さえきっちりしていれば何も言われなかったがな・・二代目は生真面目でいけねぇ」

「だから牢屋に閉じ込められてたんじゃねぇの?ま、バーニーの野郎も、日中は「狩猟ごっこ」で神殿にはいないし、夜は部屋に籠もりっきりだからね。大した差はないよ」

「部屋に籠もるって、アカデミーの学者気取りってか?」ハハハハハ

「それがマジらしい。昼間、あいつが狩猟に行く前さ。あたしらに書庫を掃除しておくよう命じていったんだ」

「書庫・・?」

「クソボリス。ほら、向こうにある大部屋のことだよ」

「ああ・・大昔に出火があったっていう「開かずの間」のことか。焼死体でも出なきゃいいな」ガハハハハハ

「馬鹿野郎。んなもん残ってるわけねぇだろ。バーニーが言うには、燃えカスの残骸が酷いらしい。だから綺麗にしろだとよ。大都市の竜人みてぇに口うるせえこと言いやがる。自分が聖者にでもなったつもりなのさ。この糞溜めでね。てめぇはオヤジになってもまだハンターに憧れてるミッドライフ・クライシスの真っ只中だってのによ」

「そう言ってやるな。あいつはあいつで苦労してきたのさ。それで掃除は一人でやるのか?」

「アースラも一緒だよ」

「ああ、あの蒼い髪をした、いつもメイドの格好をしてやがる新入りか」

「アースラ・ベアトリクス・ウルバン。気立ての良い子さ。バーニーが投獄されている時も、彼女が来てからは任せっきりだったろ?だからバーニーのお気に入りなのさ。あたしらと違って優等生タイプだしね」

「お前より遥かにいい女だしな」

「死ねクソボリス」ガスッ!!ぎゃあああああ(スネを蹴ったようだ)

「いちちち・・しかしよ、前から気になってたんだが、なんだってあんないい女がこんな場所にいるんだ?」

「借金だよ。両親がウー家から借りてたらしい。でも二人とも、モンスター被害に遭遇して死んじまったんだと。それで親の借金を返済するために、泣く泣くここで働いているってわけさ」

「理由は俺たちと同じってわけか・・・。くたばれジェイソン・ウーってな」

「やめときな。下手な真似を少しでもしようものなら、ウー家の執行人の手にかかって八つ裂きの刑がいいところさ。あたしのダチみたいにね・・」

「・・・・・ここは言うほど悪い所じゃねぇ。大人しく働いてりゃ・・」

「わかってるよ!クソボリス・・・クソッ!!バーニーも所詮はウー家の飼いならしさ。まぁ、前の不気味な爺さんに比べりゃ、少しはマシだけど・・」

「そのバーニーが口を聞いてくれたから、お前は無事だったんだぞ?だからもう馬鹿な真似はするんじゃねぇ。分かったな」

「・・・・・・・・・・・・・・・」(姿は見えないが頷いた様子だ)


「ルチア!!」(遠くから「快活な声」が沈黙を良い意味で破ってくる)


「っと、噂をすればアースラ様のご登場ってね・・・よぉ!アースラ!!その格好からするとよっぽど掃除が好きみてぇだな!?」

「メイドシリーズっていうのよ♪」

「皮肉の通じねぇ奴・・・マジで大掃除するつもりかよ・・」

「聞こえたわよ!!こにょもにょめ!!さっさと盟主様に頼まれたクエスト終わらせるわよ!!」

「盟主様だってよ。あいつ、マジでバーニーに惚れてんじゃねぇのか・・」

「聞こえてるわよ!!こりゃあああああああ!!」

「嘘だろ・・あいつの耳、どうなってんだよ。いつも頭巾を被ってるから見たことねぇけど、怪鳥の耳だったりして♪」ブツブツ

「誰がクック先生だぁ~!!早くしなさぁ~~~~い!!!!」

「分かったよアセアセこれ運んだらすぐ行くよ!!」

「よろしい♪あ、それからあなたにもメイドシリーズ用意してあるからね♪それじゃあねぇ~」ひょっひょ~~

「なんだぁ?あの気持悪ぃスキップ・・・ってわけで、クソボリス君。あたしは重大な緊急クエストがあるから、このへんで」ゴトン(荷台にビールケースを置いたようだ)

「あ、てめぇ!こっちのクエの方が先だろう!?」

「ハンターは狩友を優先ってね♪あんたとじゃ、クック一頭も倒せなさそうだもんね。じゃあなぁ~クソボリス♪」てってってってってっ

「ちっ・・。行くぞ」(こっちに向けて言ってるようだ)


ゴトゴトゴトゴトゴト・・・・まったく・・どいつもこいつもバカにしやがって・・ごにょごにょごにょ・・(ブツブツとルチアの悪口を呟きながら荷台を牽引していっている様子)

To Be Continued





★次回ストーリーモードは4/25(木)0時更新予定です★