スヘイラ「・・・・・・・・・・」ハラハラ(視界の左側では口に手を当て、「あわわあわわ」としているメラルーの姿が)

ジェイソン「久々にたくさん喋るとすぐに声がかれて困る」ンガラガラガラガラアセアセ(高級赤ワインでうがいしている。もちろん口元から下にワインがぺちょぺちょ垂れている)

ジーナ「ヴィリエ様から小説を読むのがお好きだとお聞きしました。なかなか面白い推測ですが、明確な根拠に欠けているかと」

ジェイソン「いいね。興味を抱いていると見せかけて、邪推の要因を探ろうという魂胆だね?よろしい。論じてみよう。・・と、その前に・・・ヴィリエ。もう一杯」かしこました(すぐにワインボトルを持って近づいてくるベテラン従者。ジェイソンはやたらと長い袖口で口を拭いている。そのために長く作ってあるのだろうか)


コプコプコプコプ・・(ジェイソンの空になったグラスに真っ赤なワインが注がれていく)


ヴィリエ「お嬢様も如何ですかな?」(まだドギマギしているスヘイラのグラスに「お葡萄のジュース」が入ったボトルを見せる)

スヘイラ「うにゅ・・頼むニャ」あむ(さも動揺してませんが何か?的な態度で椅子にふんぞり返り、目の前のフルーツバスケットよりお葡萄を盗むようにもぎってパクつく)

ジェイソン「さて、どこまで話たっけ・・。そうそう。アーロン・ロザリーが君の子供だっていう話だ」ふおんふおんふおん(そうやってもったいぶるようにワインを回してる)

スヘイラ「・・・・・・・・・」ちら(視界の左側からこちらを心配するような面持ちで見上げている)

ジーナ「どうぞ。続けてください」なでなで(安心感を抱かせるようにスヘイラの頭を撫でてやる正面ではジェイソンが「よしきた」的な笑みで応答している)

ジェイソン「実はね、僕と・・ウー家とロザリー家は、デーモン・ロザリーが国王時代だった頃から癒着があるんだ。デーモンが若い頃、盗賊集団を組んでいたのは知っているだろう?」

ジーナ「デーモン・コンスピラシー」

ジェイソン「そう。義賊を名乗る彼らは、シュレイド領内の富貴な家柄の屋敷から次々と金品を盗んでは貧賤な領民に分け与えていった。彼らは特別、民衆運動を企てるわけでもなく、これといったイデオロギーを持っていたわけでもない。単純に盗んでは遊んで、それが余ったら弱者に配布していただけだった。もちろん、シュレイドの領民はそんな彼らを英雄と崇めたわけなのだが・・その活動の裏にはちゃんとしたデーモン・ロザリーの計画があった」

ジーナ「後のシュレイドコンクエストですね?」

ジェイソン「ああ・・っと、その前に、彼がウー家と知り合ったきっかけなんだが、盗賊時代、彼は事もあろうか、うちの屋敷にも盗みに入ったんだよ。しかも死んだ親父が夢中になっていた当時の愛人も寝取る始末だ。当然、怒り狂った親父はその窃盗団のリーダー捕縛をクエストとして民兵に依頼したそうだよ」

ジーナ「暗殺・・ではなくて?」

ジェイソン「親父にしてみれば、どんな男に愛人を寝取られたのか興味があったんだろう。それに、自分の手で殺したかったんだと思うよ」

スヘイラ「まるでギャングの会話だミャ」もにょもにょ(もぎったお葡萄をあめ玉のように口の中で転がせて遊んでいる)

ジェイソン「その後、見事、若かりし頃のデーモン・ロザリーは我が屋敷に「半死状態」で参上することになったんだが、そこで彼は親父に悪びれる様子もなく、「俺をここで逃し、生かしておけば、お前の一族を今よりも風雅な生活にさせてやることを誓おう」と言ってのけたらしい」

スヘイラ「とんでもミャ~ホラ吹き野郎だニャ」ブッアセアセ(豪快に種を吐く)

ジェイソン「まったく同感だよ。でもどういうわけか親父は、この目の前にいる「死にかけの盗人青年」が喋る虚言が啓示のように感じたらしい」

ジーナ「道を修めるためには、時に仁が必要と言いますが・・・お父上の人材評価は間違っていなかったようですね」

ジェイソン「親父は篤実な人間じゃなかったよ。人を利用するのが上手だったんだ。大胆不敵な行動力を持ち、身分関係なく雄弁を振るうデーモン・ロザリーという奸雄が抱く野心に経済的価値を感じた親父は、生かすことで絶対的な貸しを作るという投資してみたのさ。後にデーモンが投獄され、奴の仲間から脱獄計画を聞いた親父は、すぐに民兵を王宮に向けて派遣した。そして彼は見事、一夜にしてシュレイドコンクエストを達成したというわけ。つまり投資は大成功だったのさ」

スヘイラ「しょんで国王になったデーモン・ロザリーはウー家をご贔屓にしたってわけかニャ」ぶちっハッ(またしても豪快にお葡萄をもぎっちゃう)

ジェイソン「まぁね。君ら同様、デーモンもまたウー家を資金洗浄の温床にしたのさ。而してウー家は王都を代表する大陸のノンバンクとなった」

スヘイラ「利息食いのローンシャークだニャ」シャ~~~~(とサメみたいな顔で威嚇する)

ジェイソン「そういうわけでデーモン・ロザリーは、災厄後も何かと縁があるウー家を頼ってきたというわけさ。災厄を受けた彼が、当時はまだ赤ん坊だった息子のアーロンを連れて逃亡した後、かつての盗賊仲間のもとに身を寄せていたのだが・・・っと、この一連の話は君も知っているか。カーン君にとって、うちのヴィリエは良き情報屋だったからね」クッ(お上品にワインを飲んで見せているのだろうが、やっぱり口元からぴちょぴちょ垂れている)

ジーナ「王都の衛兵に盗賊の拠点を襲わせるよう、デーモン・ロザリーはあなたの屋敷を訪れたそうですが、要件は他にもあったのですよね?」

ジェイソン「ああ。重大な計画を思いついたと言っていた」クッ(再び口元を長めの袖口で拭う)

ジーナ「白の同盟を乗っ取り、盟主の地位を奪取すること。盗賊仲間より盗んだ財宝を隠した場所をあなたに知らせ、それを担保に簒奪後の融資をあなたに約束させたのですね?」

ジェイソン「そう。あの爺さん・・僕はあの時、初めてデーモンの爺さんに会ったんだよ。ちょうどその当時の僕と同じ年齢の頃に、デーモンは親父に見出された。実の息子でさえ信用しなかった人間不信の親父が溺愛したデーモン・ロザリーという男はどんな人物なのか・・・非常に興味があったのさ」(遠い目をしながらワイングラス越しに映る回想に耽っている)

スヘイラ「しょれで?印象はどんなだったニャ?」ふぁ~~あ(一方こちらは退屈そうにあくびをしている)

ジェイソン「最初はほんとにこの爺さんが竜人狩りの首謀者かって思わせるほど老いぼれてはたけど、時折見せるその邪な眼は、その道で生きてきた人間ならすぐに分かるほど淀みきっていた。それで分かったのさ。韜晦術・・この爺さんはわざと老いぼれたフリをしているんだってね。体は老いても、心は青年期のような躍動に満ちた大望を抱いていたんだ」

スヘイラ「老将の野望ってニャ?」こすこす(眠たそうに目を擦っている)

ジェイソン「爺さんの当初の計画では、神殿を乗っ取った後、ウー家への見返りとして、ヒンメルンで採取できる資源や鉱物を分配することで合意していたんだ。進捗はいずれ手紙で知らせるとだけ残して去っていったよ。ああ、それと何かあったら、外街にいる行商人を頼れってね」

ジーナ「私は彼の計画には加担していません。あくまでも彼とあなたを繋ぐ伝令として利用されただけです」

ジェイソン「なるほど・・・。問題は別にある。いざ爺さんが白の同盟に参加してみると、そこに待っていたのは意外なリワードだったということだ」

ジーナ「オクサーヌ・ヴァレノフの所在」

ジェイソン「腰を抜かしたよ。ずっと屋敷内で暮らしている僕の耳にすら届いていた、伝説のメサイアの妖精がヒンメルンにいるっていうんだからね。そこで爺さんは彼女を、オクサーヌ・ヴァレノフを禊にすることを思いついたというわけさ」

ジーナ「ギルドへのリーク・・見返りは?」

ジェイソン「爺さんが盟主となった同盟の活動を見て見ぬふりをすること。それだけだ」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・」

ジェイソン「分かるよ。あの野心の塊のような男が、ヒンメルンで隠遁生活をしたいだけで、ここまでリスクを負うかってことだろ?僕も正直、半信半疑だった。でも現在に至るまで爺さんは何も問題を起こすどころか、きちんと僕との約束を守り、物資の提供もしてくれている。さすがのデーモン・ロザリーも災厄で受けた心の傷を癒やす為、今の地位に満足してこのまま終わるのか・・・いや違う。オクサーヌ・ヴァレノフをヒンメルンから追いやったほどの男が、こんなところで終わるわけがない。となればその大望を託すのはその血統にあるということだ。そこで君の存在が引っ掛かったというわけ」

ジーナ「・・・と仰ると?」

ジェイソン「爺さんはさっきも言ったように、君を頼れと言っていた。親父以上の厭人家が人を頼れだなんて言うんだ。逆に言えば、爺さんはそれほど君を信頼していたという証拠でもある」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・」

ジェイソン「その沈黙は果たして真実を示すのか・・・そこで君とデーモンの関係を調べさせてもらうことにしたんだが、なにせ大いなる竜の災厄を生き延びたのはデーモンとアーロンだけだ。当時まだ赤子だったアーロンから何かを聞き出そうとしても無理は話だ。だからといって他の人間に聞き込みをしようと思っても、誰一人して生き残ってはいないし、当時に関する史書もまた災厄によって焚書されてしまった。まさにお手上げ状態。災厄以前の王宮を知る術がないんだからね。だが同時に、あることにも気づいたんだ。爺さんは一体、どこで君に出会ったのか?正確には「いつ頃、出会っていたのか」だ。そこで僕はある仮説をたててみたんだ。災厄を生き延びたのはロザリー親子だけでなく、君もそのうちの一人じゃないのか・・・ってね」

ジーナ「・・・続けて下さい」

ジェイソン「ロザリー親子が盗賊の拠点に身を寄せていた頃、アーロンに王都の行商人という立場であった君の存在を知らせ、取引をするよう勧めたのは、他でもない爺さん本人だったんじゃないかな?ということは、君は昔からシュレイド地方で行商人を装って布教活動をしていたことになるのだが・・それにしては君は若すぎる。僕らはしっかり年を経ているのにね」コプコプコプ・・(いつの間にか空になっていたグラスにワインを注ぐヴィリエ)

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・」(視界に映るスヘイラが不安そうな顔でこちらを見上げている)






Recollection No.1_20






ジェイソン「はたして君のその若さの秘訣は一体なにか・・・・どうだい?面白くなってきただろう」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・・・」(正面ではまたしても解決編の名探偵ばりのドヤ顔をしているジェイソンが。そして視界の左側でもまた動揺丸出しのスヘイラがどぎまぎしながらジェイソンと我が主の顔をテニスを見るようにハラハラしながら、先程よりも首を高速にして交互の様子を窺っている)

To Be Continued





★次回ストーリーモードは4/15(月)0時更新予定です★