ゴトゴトゴトゴト・・・(一人称視点。優美な装飾が施された馬車内の小窓から星月夜の碧い残光が差し込んでいる。目の前の「進行方向とは逆」の席には、如何にも貴族の従者っぽいタイトで薄い緑な宮廷衣装を身に纏った「バッハ風白髪クルクルウィッグ」を頭に被った色白細長中年男が「仮眠をしたフリ」をしながら姿勢よく座っている。おそらく起きているこちらに気を遣わせまいと装っているのだろう)


すやすやすやすや・・(下に目をやると、愛らしいまつエクをつけた隠密毛のメラルーが視点の主の膝枕でぐっすりと眠りについている)


ゴトゴトゴトゴト・・・(馬車に揺られながらそっと小窓から見える星月夜を見上げる)


ゴトゴトゴトゴト・・・(遥か彼方に広がる星々から、人智では計り知れない時間と距離を駆け抜けてきた過去の輝光が今も尚、発せられ続けている)


ジーナ「矛盾の残光・・・・不思議だとは思いませんか?」ゴトゴトゴト・・・

従者「・・・・・・叙情的な質問に答えられる繊細な雄弁は持ち合わせておりません」(目を閉じたまま答える色白従者の顔を星明かりが照らしている)

ジーナ「今宵はあなたのように高尚な夜の雰囲気かと。ムッシュ、ヴィリエ」

ヴィリエ「・・・驚きました。まさか私の名前をご存知とは」(しょぼしょぼした目をパチクリさせながらこちらを感嘆の表情で見つめている)

ジーナ「王都からの手紙によれば、慎み深い精錬の士だと・・・あなたのような忠臣を持つウー氏が羨ましい限りですわ」

ヴィリエ「とんでもございません。そうですか・・彼がそのように私を評価していてくれたとは・・・改めてアニャ・カーン氏に黙祷を・・」(そっと俯きながら目を閉じる)

ジーナ「・・・・・・・・。本当によく働いてくれました。ウー氏とこうして交流を持てたのも彼がいたからです」

ヴィリエ「彼とは昔からの知己で、王都内の情報をよく提供していました。と言っては聞こえがいいですが・・・彼の資金源があなたのような淑女であられたとは少々驚きです。悪夢の歌劇事件直後、彼が私のもとに「ビジネス」の話を持ってきた時のことを今でも覚えていますよ。一世一代の大仕事だと豪語していました。屋敷に案内し、ジェイソン様と会われた時も微塵も臆した様子はなく、淡々とあなたからの要望を伝えていました。狩人のように豪胆な獣人が外街にもいたのかと感心したものです」フフ・・(思い出話に厳格な顔が少しだけほころぶ)

ジーナ「ウー氏には大変ご迷惑をお掛けしました」(それとなく頭を下げてみせる)

ヴィリエ「フフ・・我が主を半ば脅迫するような文言で黙らせたのは、あなたが初めてです。とはいえ、ウー家にとっても興味深い交渉であったことは確かです。そのおかげでウー家は、白と黒、両ギルドの架け橋となったのですからな。最も、ハンターズギルドは、我らがあなた方と繋がりがあるとは夢にも思っていないでしょうが・・」

ジーナ「ご用心を。彼らには優秀な工作員がいます。真のホワイトギルドになろうとしていた白の同盟・・・メサイアの妖精の才量をもってしても、夢叶わなかったのです。くれぐれも警守を怠ることのないよう・・」

ヴィリエ「オクサーヌ・ヴァレノフ・・・・私も是非、この目で見てみたかったものです。彼女の消息は?」

ジーナ「我々でも掴めていません。おそらくは現大陸を出たのかと」

ヴィリエ「二度に渡り、ギルドナイツを全滅させた悪魔のような天使・・・噂に聞く彼女の二分された評価は、あなたが言うように、まるでこの星月夜の輝きのようですな。・・・と失礼。少し饒舌が過ぎたようです」フフ・・(と微笑む視点の主)


ムニャムニャ・・・とと様・・はは様・・
(膝元から寝言が聞こえてくる)


ヴィリエ「その子がカーン家に代々仕えるカマラ一族の跡継ぎですか?」

ジーナ「はい。この子の父、アル・カマラとヒンメルンを脱出し、東側に入りました。スヘイラは、カマラ氏がリーヴェルで出逢った共和党の獣人との間に授かった子です。カマラ氏の死後、母上もまた追うように・・・二人とも、此度の作戦にとても尽力してくれました」なでなで(すやすや眠るスヘイラの黒毛を愛でるように撫でてやる)

ヴィリエ「それであなたが育ての親を受け継いだというわけですか。いやいや、この子もまた、主に恵まれたようですな」(どうかしら?みたいな感じで視点の主が首をかしげてみせる)


ゴトゴトゴトゴト・・・(目線を再び小窓に向けると広大なヒンメルン山脈が見えてくる。西側が近いことを証明している)


ヴィリエ「無事、帰路に就けそうですな」ゴトゴトゴト・・(細目で小窓に目をやり、景観を確かめている)

ジーナ「問題なく東側には?」

ヴィリエ「はい。ご存知の通り、この辺りは旧シュレイド領地です。人はおろか、モンスターでさえ棲むのを拒むと言われる廃地です」


ゴトゴトゴトゴト・・・(小窓から見える緑すら茂っていない荒んだ盆地の向こう側に広大なヒンメルン山脈が雄大に聳え立っている)


ヴィリエ「大いなる竜の災厄が齎した唯一のメリットは、このあたりを逆に安全な公道にしたことでしょうな」ゴトゴトゴト・・(遠い目をしながらポストアポカリプスな大地を見つめている)

ジーナ「それはどうでしょう。廃墟と化した城の跡地に、再び巨星が墜ちることもありますよ?」フフ・・

ヴィリエ「・・・・あなたが唱える黙示録。しかと受け止めておきましょう。さて・・まだ到着には時間が掛かります。どうかあなたもお休みを」(今度は本当に眠る様子で目を閉じる)

ジーナ「ご心配なく。夜は好きですの」


ゴトゴトゴトゴト・・・(見つめる荒れ地の上におぼろげな姿を見せる半月が浮かんでいる)






Recollection No.1_18






~西シュレイド王都ヴェルド、ウー家の屋敷....



ザッザッザッザッザッ・・(一人称視点。陽光差す豪壮な屋敷の廊下をヴィリエに先導されながら歩いていく)


スッ・・(視点の主が左側より照らしてくる太陽光を忌避するようにフードの左端を顔側に引っ張ってそれを遮る)


スヘイラ「外を見るニャ」(傍らを歩く彼女が窓の方を猫指差す)


ちら・・(並列する窓の向こう側には、よく手入れされた花々や薔薇のアーチに美術品のような装飾が施された噴水といった風雅な庭園エリアが広がっており、なんならケルビやモスといった草食種までがのどかに歩いている)


ジーナ「・・・・・・・・・・・・」ニャんだ、このエリア・・(飛び跳ねるケルビを見つめる横からごもっともな感想が飛んでくる)

ヴィリエ「ジェイソン様はハントが趣味なのです」(目をやると立ち止まって感慨深げに窓の外に見える景色を眺めている)

スヘイラ「狩り?お庭でかニャ?」(マツエクな目をパチクリさせながら従者に問いかける)

ヴィリエ「ええ・・ウー家はその職業柄、なにぶん世間から恨まれる存在・・・故にジェイソン様は生まれてこの方、屋敷から一歩も外に出たことはないのです。なので外の世界に興味を抱くのは至極当然。子供の頃にお父上からハンターの話を聞いて以来、自分も狩りをしてみたいと言われましてな・・それでこの庭園を小さな「狩猟エリア」に見立てたというわけです」

ジーナ「・・・・・・・・・・・・」しょんな話で感動すると思うたら大間違いニャぞ(と厳しめの声が飛ぶ)

スヘイラ「ありはニャんだニャ?」(再び窓に向かって猫指を指してる)


ぽへぇ~~~~~ん・・(庭の端にはその美しい景観には似つかわしくない「真紅と白銀色」の二本の巨大な長い角が、それぞれの鋭い尖端を空に向けながら垂直に立て置かれている)


スヘイラ「おっきな角ニャ。ありは・・」

ジーナ「モノブロス。原種と亜種のですね」


ふぁらふぁらふぁら・・(二本の角の尖端にはおそらくウー家の紋章が施された旗が括られており、そよ風に靡いている。どうやら家主は、この一角竜の角(原種と亜種)をフラッグポール代わりの「奢侈なオブジェクト」として活用?しているようだ)


ヴィリエ「ああ、あれは砂漠地帯に生息する、個体数の少ない飛竜種の角なのですが、その噂を聞いたジェイソン様が是非欲しいということで、王立武器工匠の知人を通して購入した「新品」でございます」(丁寧に「展示品」の解説をしてくれる)

ジーナ「・・・・・・・・・」あまりいい趣味とは言えんニャ(角を見つめる横からスヘイラの声)

ヴィリエ「・・・・・・・。では、行きましょう」カツカツカツ・・(こちらが角を好んで見ているととったのだろうか。暫くの間を開けた後、再び背を向けて歩き出す)

スヘイラ「屋敷が広いのは分かったニャ。それで?一体いつまで歩かせるつもりニャ」ふぁ~あ(右下を見るとあくびをしながらポリポリと頭をかきながら歩いてる)

ヴィリエ「申し訳ございません。ジェイソン様は現在、お食事中だと思いますので、食卓のある広間までご案内させていただきます」カツカツカツ・・


カツカツカツ・・(廊下の壁にはこれまた「新品」的なハルバート(大剣)にバベル(ランス)、そしてオーダーレイピア(双剣)も飾られている)


スヘイラ「本当にハンターが好きニャんだニャ」(それらを見上げながら歩いている)

ジーナ「騎士道精神にもご理解があるようで」どうせ憧れてるだけだニャ(とバッサリ切り捨てるメラルーの声)

ヴィリエ「騎士道物語の本を読まれるのが好きなのです」ほらみろニャ

スヘイラ「騎士ニャんて、仕える君主の前だけ忠誠を誓ったフリして、一度戦場に出れば、略奪行為や強姦、それに必要以上の殺しを楽しむアンモラルな連中ばかりだニャ」やぁ~ねぇ~もぉ~

ヴィリエ「スヘイラ様はよく現実を捉えておられる。ジェイソン様と気が合うやもしれませんな」え~やだ~(と素直なスヘイラ)


ザッザッザッ・・・・・・(ひときわ豪壮なドアの前で立ち止まるヴィリエ)


ヴィリエ「中でジェイソン様がお待ちです」コンコン(ノックをして中の主に来たことを知らせている)

スヘイラ「しゃ~~て。大陸一の悪徳高利貸しが一体どんな奴か見てみようじゃニャい」ギィ~~~~~~(次第に開かれていくドアの隙間から頭を突っ込んでいる)

To Be Continued






★次回ストーリーモードは4/4(木)0時更新予定です★