ギャオオオオオオオオオオオン!!
(白龍を彷彿させる異形の狩猟笛から奏でられる歪曲収差の破壊的な音響が、怖じける聴衆の鼓膜を突き破らんばかりにステージエリアを反響していく)
ギューーーーーーーーーン!!
ギューーーーーーーーーン!!
(耳を劈く(つんざく)スライド奏法のような幅広い滑走音の流動的な変化が空間をも歪めていき、観衆の意識を直感的に時の彼方へと吹き飛ばす)
ギャルルルルルルルルル!!
(少女が憤激の息吹をぶつけるように歌口へ吹き込むと、愛憎の念が入り混じった白龍の大咆哮の如く怒れる倍音となって観衆に襲いかかっていく)
ウオオオオオオオオオオ!!
(生まれて初めて耳にしたアポカリプティックサウンドの魔笛に感化され、奮い立った観衆が一斉に怒号をあげる)
ギャアアアアアアアアアアン!!
オオオオオオオオオオオオオ!!
(破滅的なディストーションサウンドに呼応する暴徒の如く大喝がステージエリアの雰囲気をより一層、ディストピアのライブハウスへと変えていく)
ジーナ「まるで狂信的な龍信者みたい。それとも彼らには、本当に祖龍の姿が・・・」ギャオオオオオオオン!!(舞台上で一心不乱にミラアンセスライドを吹き続ける白いドレスの少女の高揚したパフォーマンスに対し、喝采で激励する観衆の後ろ姿)
チャッ・・(ライブを静観している視点の主の後方より、微かだがドアが開かれる音が聞こえる)
ちら・・・(そっと左下に首を傾けると、半開したドアの向こう側より、黒いフードコートを纏った刺客達が身を屈めながら一列に忍び足をもって次々と会場へ突入していく)
シタタタタタタタタ(侵入してきた刺客達はこちらを見向きもせず、ライブ会場の爆音に紛れながら素早い足取りをもって会場の左端へ直進していく部隊と観衆の後方へ忍び寄る部隊と二手に分かれていく)
ドシュッ・・ズシャッ・・・
(左手に向かった部隊は、壁際よりライブに見入っている護衛達の首を片っ端から掻っ切っていく者と、それを見もせずに直進し、下手側の舞台裏へと通じるカーテンを潜っていく者とに分散していく)
グシャッ・・ズシュッ・・・
(前方に目をやると異変に気づいてすらいない観衆の背後より、殺気を消した刺客達がレイピアやサーベル形状の双剣で次々と無防備な背中を突き刺していく)
ジーナ「あの剣は・・・ギルドナイト・・」ドスッ・・ドスッ・・(呟く目の前では悲鳴もあげず次々と地面に倒れていく白装束の修練者や貴族達の姿が映っている)
ザッ(視界の左側に威風を放つ黒い男の影が映り込む)
ちら・・(目を配ると慇懃無礼な冷たい眼差しをもってこちらを睨みつけているジェイミー・ブラント・・・もとい、デーモン・ロザリーの姿があった)
デーモン「諫言無用。邪魔立てすればお前も殺すよう命じる」(以前に見た老いぼれの印象はそこには無いほど背筋が良く、表情も邪険の活気に満ち溢れ、今も尚、この男が現役の姦雄であることを示す意志力の強さがその言動よりひしひしと伝わってくる)
ジーナ「お好きなように」(微笑を漂わせながら返答し、視線を前方に戻すと先程同様にギルドナイトによる無差別殺人のショーが繰り広げられている)
ザッザッザッザッザッザッ・・(倒れていく観衆の中には白装束の仲間がいるにも関わらず、それを見向きもせずに舞台の下手側へ直進していく狂王の後ろ姿)
ぐわぁ・・・バタン・・・(命からがら千鳥足でこちらに逃げてきた「ひょろ長色白お貴族」が目の前で倒れる)
ハァ・・ハァ・・・・・・(うつ伏せに倒れたひょろ長色白お貴族は、背中に無数の突傷による血痕を滲ませながら、命乞いをするように顔を見上げている)
グシャッ
(視点の主はそれを顧みず、黒いブーツの鋭利なソールで腐ったリンゴを踏み潰すようにその顔面を鈍い音と共に圧砕する)
「ジーナ様。ご無事で何より」
スッ・・(声のする左下に目を配ると、そこには黒い暗殺者装束に身を包んだ獣人が片膝をつきながら控えている)
アサシン猫「アニャ・カーン様より脱出の手引きを支援するよう承り、急ぎ参上致しました」スッ(颯爽とフサフサな緑の毛が生え揃う両手の甲を見せると、そこには黒い邪龍のエンブレムが着色されている)
ジーナ「現状は?」ギャアアアアアアアアン!!(アサシン猫を見つめる前方からは未だ退廃的なディストーションサウンドが鳴り響いている)
アサシン猫「ハッ。ギルドナイトは出火を機に、一斉に突入を開始した模様です」ギュオオオオオオオオオン!!
ジーナ「火災の出所は・・・書庫・・」ズンズンズンズン・・(アサシン猫を見下ろす向こう側より、機械音的な歪みの音が抑制(ミュート)のリフを刻んでいくのが聞こえる)
アサシン猫「おそらく。ここに来る途中、警備をしていた白装束の者達が、出火は書庫からだと言いながら消火作業に向かっているのを目撃しました。外にいるナイト達もまた、警備兵を倒した後、ここに向かってくるでしょう」ズンズンズンズン・・
ジーナ「たった一人の少女相手に・・・」(視線を惨殺されていく観衆達を隔てながら舞台上へと向ける)
ズンズンズンズンズンズンズンズン
(ミラアンセスライドよりミュートを効かせた重厚なリフサウンドを奏でる少女の顔を長い白銀の髪が覆い、音の振動に揺れ動く髪の隙間より、右眼の霊眼が不気味な紅い光を放ちながらこちらを一直線に見つめている)
ジーナ「どうやら彼女もこちらの存在に気づいたようね」(顎を下げ、目下の宿敵の存在をしかと受け止めると、白いドレスの少女もまた笛の音を徐々に緩めながら、憂い断つべしと言わんばかりに腰を上げる)
・・・・・・・・・・・・・・・・
(静寂したエリア内で恍惚の頂点に達した観衆達が背を向けながら、引き続きギルドナイト達の手によって惨殺されていく中、飛び散る鮮血の向こう側で何かに導かれるように後ろを振り向く白いドレスの少女目掛け、下手側より大太刀を振りかざしてた黒衣のナイトが襲いかかっていく)
ジーナ「行きましょう」くるっ(ドアの方を振り向くと同時に後方より、狩猟笛で大太刀を受け止めたのであろう鋭い金属の衝突音が聞こえてくる)
アサシン猫「外にはまだナイトがいますが・・蹴散らして進みますか?」ショリーーン(両手の袖から黒いダガーが飛び出し、それを握って構える)
ジーナ「・・・・・・・・。それよりもいい方法があります。私についてきて下さい」くるっ(ほにゃら?的な顔をするアサシン猫を従えながら振り返る)
ドゴオオオオオオオオン!!
(振り返った瞬間、舞台下手側より何かが爆発したような爆音と共に爆炎が舞台上に吹き荒れ、その爆風により白いドレスの少女が狩猟笛を抱いたまま上手側へふっ飛ばされていくのを視野に入れながら、視点の主もまたその衝撃により思わず後方にたじろぐ)
アサシン猫「大丈夫ですか!?」ザッ(視点の主を守るように前方に立ち塞がる獣人の後ろ頭越しに、舞台上では烈々と燃え上がる炎が広がっており、そこに向かって黒いフードコートを脱ぎ捨てながら次々と飛び乗っていくギルドナイト達の姿もまた見える)
ジーナ「今のうちです。さぁ」ダッ(アサシン猫を従え、下手側の舞台裏を隔てるカーテンに向かっていく)
バッ(視点の主がすばやくカーテンを下からまくりあげ、転がり込むように舞台裏へ突入していく)
ゴオオオオオオオオオオ・・・・
(舞台裏は既に火の海と化しており、ナイト達の手によって殺害された黒子や音楽隊の無残な焼死体が所々に散らばっているのが見える)
アサシン猫「ひでぇ有様だな・・・」ゴオオオオオオ・・・(視野の左下端に映る獣人が呟くように感想を述べている)
「首級を挙げるのは誰!?私はここよ!!」
バッ(声が飛んできた右側に視点を傾けると、燃え上がる炎を隔てて、舞台へ上がる小階段の前で取っ組み合っているロザリー親子の姿が見える)
アーロン「教えろ!!これは一体どういうことだ!?親父!!」ファオオオオオオオオン!!(同時に舞台上から少女が吹いたと思われるディストーションサウンドが鳴り響いてくる)
デーモン「説明は後だ!!今は脱出が先だ!!さぁ、来るんだ!!」ファオオオオオオオオン!!
アーロン「ふざけるな!!オクサーヌを見殺しにできるか!!」ファオオオオオオオオン!!
ジーナ「すぐに消火を」いいから来るんだ!!(火の向こう側では息子を強引に促すデーモンの姿が見える)
アサシン猫「ハッ!」チャッ(懐より水冷弾と思しきカラの実を両手いっぱいに取り出す)
バシャーーーーーーーン!!
(行く手を阻む火の道にそれを叩きつけ消化させると同時に足早に親子の方へ進んでいく視点の主)
ジーナ「アーロンさん」(白煙の奥に見える男の気をこちらに向かせるよう、わざと本名で呼ぶ)
アーロン「・・・ジーナさん・・無事だったんだね!」(こちらを向いて気遣う)
ジーナ「早く脱出を」
「同志諸君のクエスト!!確かに承った!!」(舞台上より少女の声が聞こえてくる)
アーロン「オクサーヌ・・・泣いているのか・・?」フオオオオオオオオオン・・(どこか悲しげな鎮魂の音が聞こえてくる)
ドスン!!
(視点の主はアーロンが舞台上を見上げた瞬間を見計らい、腹部に左フックの重撃を喰らわす)
ガクン・・・(項垂れるアーロンを支えながらデーモンにその身を託す)
ジーナ「さぁ、早く」(気絶した息子を咄嗟におぶるデーモンを尻目に先に行く)
アサシン猫「こちらへ」借りが出来たな(後ろよりデーモンの声が投げかけられる中、カーテンを開きながら待っているアサシン猫の方へ向かう)
「逃がすかぁあああああああああ!!!!!」(舞台上より殺意に満ち溢れた喚声が飛んでくる)
バッ!!(その声に反応するように後ろを向く)
ビュオオオオオオオオオオオン!!
(舞台上より眼の前のデーモン親子に向かってナイトの「遺体」がすっ飛んでくる)
ダンッ!!
(力強く跳躍してロザリー親子の頭上を通り過ぎていく)
ドシューーーーーーーーーーン!!
(飛翔の勢いを利用して旋回脚で飛んできた遺体を蹴り返す)
シュタッ・・バコーーーーーーーン!!
(舞台上の端に着地すると同時に、焦熱地獄の奥より蹴り返した遺体が観客席側に向かって弾き飛ばされるのが見える)
ゴオオオオオオオオオオ・・・
(灼火を隔てた深淵より、右眼の霊眼を赤紅と煌めかせた白いドレスの少女が恨めしそうにこちらを睨んでいる)
ジーナ「さぁ、今のうちに。デーモン・ロザリー」(視点はそのままに、後ろに向かって指示を出すと、目の前の少女が思いがけないその名に対し、一瞬だが眉を潜める)
バサーーーーーーーーン!!
(その隙を突いて、地面にケムリ玉を叩きつける)
ダッダッダッダッダッ(すかさず振り返り俊足をもって舞台を降りる)
アサシン猫「早く!!」(デーモンは息子をおぶったまま開かれたカーテンの外へ出ていく)
ダッ(外に出るやいなや、まずは舞台上を確認すると、ステージエリア全体に白煙が広がっている)
ダギャアアアアアアアン!!
グシャアアアアアアアン!!
(白煙の中、舞台上より「人間に向かって鈍器を叩きつける悍ましい粉砕音の連打」が間髪入れず聞こえてくる)
アサシン猫「行きましょう」(小声で視点の主の手を握り、導くように煙の中を進んでいく)
Recollection No.1_14
バーニー・・・・バーニー・・・・・・
うわぁあああああああああ!!!!
(煙を掻き分けながら出入り口よりステージエリアを脱出しようとしたその時、後方の深淵から少女の切ない悲憤慷慨の慟哭が背中を突き抜けながら鳴動してくる)
To Be Continued
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20181110/10/comingsu/65/5d/j/o0240015914300407030.jpg?caw=800)
★次回ストーリーモードは3/25(月)0時更新予定です★