~シュレイドの竜人狩り

シュレイドは予想通りの栄華を極め、デーモンは一代で国を治めた英雄と称される。この頃合いを見て、国王デーモンは最後の仕上げにかかる。竜人族の大虐殺である。デーモンは衛兵に国中の竜人を見つけ次第、その場で切り捨てるよう命じ、また検察官には竜人の所在を庇う者にも厳しい処罰を与えるよう命じた。その勢いはミナガルデ地方にまで及び、虐殺を恐れた竜人達は、当時結成されたばかりのハンターズギルドが所在するドンドルマへ避難した。これに対しデーモンはドンドルマに竜人の引き渡しを勧告。一時はシュレイドの軍隊がドンドルマに押しかけ、一触即発の事態に陥るも、鍛冶技術に長けたドンドルマの兵器を恐れたシュレイド隊は撤退を余儀なくされ、長期に渡る戦争は回避される。この事例から国家を持たない各都市でもシュレイドを警戒し始め、一連の騒動の巻き添えを食らいたくない保守的な都市では、竜人の移住や難民の受け入れを断る所もあったという。また大虐殺を逃れた竜人達の中には海を渡る者が急増し、これを抑える為、各港にまでデーモンはシュレイドのエクスキューショナー(死刑執行人)を派遣し、その苛烈な執着心は大陸中を戦慄させるのであった。


~デーモン暗殺計画
数年間に渡る竜人狩りに対し、大陸各所ではシュレイドに抵抗をはじめる団体、組織が急増するものの、デーモンは冷徹な戦略、戦術をもってこれを悉く打ち負かし、シュレイドの権威主義的支配体制の礎を築き上げていく。その為、シュレイドからは亡命者も急増するのだが、デーモンはこれも厳しく取り締まり、所構わずシュレイドの衛兵がこれを処断していった。もはや王国自体が巨大な牢獄となったシュレイドの専横に対抗する為、ハンターズギルドはギルドナイツ結成を急速化させたという。しかしシュレイドの専横は領内に留まらず、城内もまた殺戮に満ち溢れていた。暴君として権威を奮うデーモンは、強欲の限りを尽くし、城に多くの妾を招き入れては正室の怒りを買ったという。この王妃というのがまたデーモンに負けず劣らずの悪女であり、その根深い妬心から側室を何人も残酷な手段で殺害していったという。

やがてこの王妃は反発する側室らの反撃を恐れ、デーモンに取り入り、最初の子供を授かることに成功する。すっかり我が子に溺愛する父デーモンの親心に王妃が漬け込む。自分たちの命を狙う者が国内、国外だけではなく、城の中にもいると吹き込み、まんまとデーモンを猜疑心と偏見の塊に仕立てあげ、これまで数々の功績をあげてきた将軍、大臣をはじめとする忠臣に対しても疑念を抱かせ、逆臣として誅殺(または賜死)させていくのであった。この不忠不義な冷遇に対し、一部の臣下たちはいよいよデーモン暗殺計画を企てる。しかし計画が直前に露見し、これに関わった関係者は一族皆殺し、族誅された。このクーデター未遂事件によりデーモンは一層、保守的な国王へ成り代わっていき、そしてこれは全て、マモーナスの計画通りであった。









Recollection No.1_02









~大いなる竜の災厄

いつ何処で命を狙われるかもしれぬと臆病になりはじめたデーモンは、マモーナスとの契約の言葉を思い出す。



汝が絶えぬ恨みを畏れず、また顧みぬのならば、その強欲に限りはなく、王者の権勢を欲しいままに来るべき死を迎え入れることが出来ようぞ



「あの当時の自分はまだ若く、畏れを知らぬ反骨心の塊であったのに対し、今はすっかり怯えて暮らす毎日・・待てよ。この恐怖がやがて絶望となり、それを求めてマモーナスが私を襲いにくるのではないか!?」デーモンはこの時初めて、自分がとんでもない契約を交わしてしまったことを悟る。そしてそれを察したかのように、デーモンの脳裏を、あの時感じた得体の知れない「淀み」が支配していく。


「デーモン・ロザリー。汝は手中に収めた権威と財産を守りたいという一心から、それを脅かす外敵に対し恐怖を覚え、かつての様な攻撃的な推進力を喪失し、脆弱性だけを抱えた克己心という折の中に閉じこもり、そしてこともあろうか終焉の絶望を想像してしまった。我は絶望を喰らいしもの。これを見逃しはしない。今から一週間後、我はシュレイド城に降臨する。汝が戦う姿勢を選ぼうとも、何処ぞへ逃げようとも、汝が我に対し絶望を抱く以上、逃れられぬ死が汝を襲い続ける。栄華と権威を経た後に達する失意ほど味わい深いものはない。それを喰らうのが、我、マモーナスだ」


デーモンの問に答える間もなく、マモーナスの気配は頭の中より消え失せていく。デーモンはすぐさま国中の学者をかき集め、黒龍マモーナスの調査に当たらせるも、出てくるのは古来より伝わる黒龍伝説のみ。慌てて王立学術院に知恵を求めるも、たった七日では大した成果も得られず、烈火のごとく業を煮やしたデーモンは学者たちを生き埋めにした。同時に警備を固めさせるも、素性の分からない黒龍相手にどう対峙すればいいのか分からないデーモンは急遽、領内から資材を徴収して兵器製造を命令するも当然間に合うはずはなく、ただ国民の反感買った。またその国王の焦りは国民にも伝わり、シュレイドに近々、何処ぞの勢力が攻め入るぞという良からぬ噂が広まり、亡命を図る者、騒動に乗じて犯罪を行う者が急増。これを罰する衛兵に対し、かねてより反体制派であった一部の国民が暴徒と化したことで都に戦火が広がり、強欲のままに抑制の効かなくなった悪徳と共に領内もまた絶望の渦に飲まれていく。デーモンはそんな国の様子を城から眺め、あることに気づく。「そうか。今この大勢の失意に満ちた状況こそが、マモーナスの望む結果だったのか。そして自分は奴にそれを提供するだけの捨て駒に過ぎなかったのだ」

六日目の晩、ついにデーモンは錯乱し、怯える王妃と側室たちをその手で殺してしまった。そして七日目の朝、晴天であった空の色が突如、急変し、日輪は翳りに覆われ、シュレイド地方は終焉を感じさせる赤紫色の空に覆い尽くされていった。デーモンはじめ、国中の者がその異常な光景を見上げる中、とぐろを巻いた狂逸な黒雲から、ついに奴が姿を表わす。禍々しい翼を羽ばたかせ、ゆっくりと人間界を考察するかのように降臨してくる想像以上に巨大な黒龍の出現に逃げ惑う民衆達。その煩わしい悲鳴が障ったか、黒龍は降下しながら黒焔の矢を都に放つ。一瞬にして都は火の海に覆われ、焼け野原となった。攻撃命令を望む将軍を尻目にデーモンはそれが無駄な抵抗だと悟る。以後の指揮権を将軍に委ねると、デーモンはたった一人の我が子、アーロンを抱きかかえると扮装を施し、シュレイドから逃亡した。その後のシュレイド城は現在確認出来る廃墟と化し、国はその遍歴はおろか、文明が存在したことを真っ向から否定される程に焼きつくされてしまった。もちろん人々の命と、絶望と共に・・。

以上、失われし「亡国の史書」より抜粋


これが後の世に伝わる大いなる竜の災厄なのだが、生き延びた者、またその当事者が記した文献が一切残っていない為、当時のシュレイドの崩落を遠くから眺めていた者や、シュレイドの逸話に詳しい者から得た証言だけを頼りに編纂された史書からしかみることができないため、その真意にもまた不明な点が多いという。だが、ここに記されている災厄が事実ならば、シュレイドの正史は我の手によって焚書されてしまったと考えるのが妥当だろう。



To Be Continued









次回ストーリーモードは11/19(月)0時更新予定です。
中継ぎ記事は16(金)~18(日)間のどこかで更新致します。