私は闇



大陸が誕生した時


光と共に生まれた



混沌のない時代


世界は光と闇の2つに分断され、終わりのない闘争を繰り返してきた


我々が激しくぶつかり合った時、火が生まれ


激昂が雷を生み


焦燥が水となり


それが冷徹によって氷へと凝固した



大陸四元素の誕生である



やがて光は生命を大陸に与えた


原始生命体と呼ばれるようになったその微小な生命は、時の経過とその都度の環境に適応する為、我々から新たなデザインを学び、姿形を変えながら多重分岐を持つ系統樹を描いていくこととなる


進化


後の世にそう定義付けられるようになるのだが、私にとってそんなことはどうでもよかった


私が興味深かったのは、生物と呼ばれる彼等が、我々の闘争を見て学んだのか、弱肉強食の世界を自ら築き上げたことであった


食物連鎖のはじまりである


ちょうど生物の一部が海を捨て、陸に上がり始めた頃であっただろうか、私は我々以外の存在が大陸を蝕んでいくことに対し、やがて苛立ちを覚えるようになる


そこで私は自らに有機体のデザインを与え、邪神となって大陸に我が物顔で跋扈する生物を喰らい尽くし、世界を再び光と私だけの世界に戻そうとした


そしてまた、光が私と同じ肉体を得て、地上に降臨する機会を窺っていたのだ


案の定、私の破壊行為を見かねた光は激しく憤怒し、私に対抗すべきデザインをもって地上に降り立った


これが祖なるものである


祖なるものと私は戦いの形を変え、今度は物質的な闘争を繰り返すこととなる


肉体の損傷から覚える痛みは我々により強い闘争心を与え、肉体から流れ出る血はより激しいエネルギーを生んだ


これが龍の力である



終わりのない最終戦争



今思えば、その時代が最も私には向いていたのかもしれない....


肉体を得た代償に我々は苦痛と疲労を覚え、ついには休息を必要としていた


そんな休戦時代、大陸に棲む生物の一部は、神格化した我々の姿に似せたデザインを覚え、新たなる種族を生む


竜族の誕生


そしてこれをきっかけに竜族は生息地域を拡大させると共に収斂進化をはじめ、多様性を広げながらその分類群数を増大させていき、見事、食物連鎖の頂点へと立つ。


やがて竜族の中から我々同様に理知を持つ者が現れ始めた頃、それとは全く姿形が異なる霊長目からも理知を持つ新たな生物が生まれる


人間


これこそが混沌の始まりであり、大陸を永遠に蝕む最大の宿痾たる要因となる


そしてまた同じ頃、食雑目から獣人種と呼ばれる、ヒト科と同じように理知を持つ生物も誕生し、世界はいよいよ混沌の渦に飲まれていくことになる


こと人間に関して言えば、彼らは種族本能からなる支配欲が強く、それまで不具合の無かった食物連鎖に干渉していき、そしてその循環を歪めていった


人間は竜族をはじめとする獰猛な種族を「モンスター」と総称し、凶暴な彼等と住む世界を区分する為、彼等は自らが創り上げた文明と文化からなる「社会」という世界を構築し、その領土内において、必要とあらば種族間同士の闘争をも繰り返していくようになる


また彼等は技術の向上と共に、それまで敵わなかったモンスターにも危害を加えるようになった


こうして力をつけていった人間は多種族を喰らい、彼等の棲家を略奪し、時には種を絶やし、その反面、自らの種は繁栄させ続けるといった私利私欲の侵略をもって大陸を制していき、その勢いは海路をも独占し始めるようになる


そしてその尽きることのない欲望の矛先は、ついに竜族にも向けられた


竜大戦時代のはじまりだ


人間達は竜人族という長寿ならではの老獪なる種族と手を組み、その邪智を得て竜族を悉く殲滅していった


人間が抱く挑戦的かつ稚拙な興味本位と無謀なまでの行動力から彼等は、大陸の僻地にて隠遁していた私の目の前にも現れた


そして同じ頃、休息を必要としていた祖なるものもまた彼等と遭遇し、その存在を露見にされる


それまで対峙してきたどの竜族よりも強大な我らの存在を知った人間達は、まだ見ぬ恐怖と防衛本能から、事もあろうか我らにも対し戦いを挑み始めた


祖なるものと私はそれぞれ同志を結集し、人間に立ち向かうと同時に、休戦状態にあった光と闇の抗争も再発することになる


こうして世界は光と闇の戦いから、人間も加わり、三つ巴の戦いを繰り広げるようになっていった


戦いによる衝突は凄惨な天変地異を起こし、大地を荒廃させ、嵐により海は荒れ狂い、水没する大陸もあった


想像を絶する混沌に陥った世界は数百年の戦いを経て疲弊しきっていた


その代償は大きく、竜族はいくつかの種を絶やされ、人間は竜人を中心に築いてきた高度な文明が崩落した


勝者がいるとすればそれは私と祖なるものであろう


だが我々もまた休息を必要としていた


大陸は再び闘争の休戦時代へと突入し、その間に人間達は虎視眈々と新たな文明を各地で築き上げていく


私は大戦時代を共に戦いぬいた仲間と共に大陸を監視する為、自分達のドッペルゲンガーを地上に放ち、我々の脅威となる存在を警戒した


そして祖なるものもまた、ドッペルゲンガーを大陸に送り込み、同志となりうる光の戦士を発掘していく


すべては来るべき聖戦に備える為



我はマモーナス



人間が抱く強欲を感知し、人間が覚える絶望を喰らい、己の力へと変換する


力を蓄え、再び祖なるものと戦う為に私は存在する












Recollection No.1_01














以下、失われし「亡国の史書」より抜粋....




~大悪党デーモン
デーモン・ロザリー。西シュレイド、ヴェルドのスラム出身(当時はまだ東西分裂には至っていない)。両親はデーモンが子供の頃に他界。親の愛情を知らずに育ち、教育的なコミュニティーを持つ余裕もなく、毎日の食べ物と小銭を稼ぐ(厳密には窃盗)のに明け暮れる毎日が、いつしか彼を冷徹なコミュニストに育て上げる。十代半ばにして徹底した利益還元主義の下、窃盗集団「デーモン・コンスピラシー」を結成。都市に侵入しては富裕層から金品の略奪を行い、花嫁を強奪をする等、悪童として国に名を知らしめる(当時のシュレイドでは母親が言うことの聞かない子供を脅かすのに、デーモンの名前を出すこともあったという)。成人する頃には立派な犯罪者として市民に認識されるも、王国の警備兵一団を打ち負かす等、奸智に長けるだけでなく、武勇も持ち合わせたので、王国側もデーモンには随分手を焼いた。ある日、城に輸送される多額の税金をデーモンが狙っていることを窃盗団のメンバーからリークを受けた警備団は、計画の先手を打ち、見事デーモンを投獄するに至る。だが奇しくも、この大悪党を捕えたことがシュレイドの政治転覆に直結するのであった。


~黒龍との契約
デーモンには死罪が宣告され、その三日後に公開処刑が予定されていた。これを受けたデーモンは誰もいない地下牢獄で、自分の中に募るすべての奸邪を狂乱したかのように三日三晩寝ずに大声で叫び続け、警備兵達を困らせた。最後の晩餐、デーモンは牢獄の遥か頭上、鉄格子に覆われた小窓から溢れるおぼろげな月明かりを浴びながら、闇夜に向かって次の様に叫ぶ。「俺という光明を知らぬ尊大で愚かな太陰よ。明日死に逝くこの俺を知りたくば、この国の王にしてみろ。そうすれば俺は貴様ら闇を受け入れ、邪智暴虐の限りを尽くしてやるぞ」デーモンがそう叫ぶと、次の瞬間、デーモンの頭の中に黒い響めきが走った。「我は黒龍マモーナス。汝の願いを叶えし者だ。我と契約を交わせば、汝をこの国の支配者にしてやろう」この淀みの声に怯むことなく、デーモンは質疑を交わす。「契約とはなんだ?悪魔乞いにありきたりな魂が狙いか?」「魂を形成するものすべてだ。我が欲しいのは強欲に満ちたりし者の絶望のみ。汝が絶えぬ恨みを畏れず、また顧みぬのならば、その強欲に限りはなく、王者の権勢を欲しいままに来るべき死を迎え入れることが出来ようぞ」「つまり、貴様と契約を交わせば、俺は後世でも畏れられる暴君になると?」「答えは汝のみが知っている。我はその助力をするだけ」「その見返りが、俺の絶望だというのか?」「そうだ。我をも畏れぬ汝ならば、絶望という恐怖の悲観をも飼いならすだろう」「ハッハッハッハッハッハ。気に入ったぞ、マモーナスとやら。いいだろう。貴様と契約を交わしてやろう。そして俺に思いつく限りの奸計を授けよ。そうすれば全てを俺が実現してやる」と、傲慢なデーモンはこの奸邪の声の主を、自分の野望を叶える参謀として捉えたのかはさておき、マモーナスと契約を交わす。そして次なる策を授かった。


1.これから間もなくして汝を救出しに現れる仲間と共に、国王を殺害しろ。何度か窮地が訪れるが、汝に陶酔している仲間が命を張って護ってくれる。汝はその間に国王夫妻を血祭りにあげ、その両首を国王軍の前で掲げるのだ。元々権威のみに服従を誓った抗うことなど知らぬ愚か者共だ。汝はそこでシュレイドの政変を語るが良い。さすればこの牢獄で三日三晩、汝が唱えた続けた言霊を心に秘めた警備兵が、一斉に反旗を翻し、汝を新たな統治者として認めるだろう。

2.汝はその機を逃さずに衛兵と共に貯蔵庫へ迎え。そこには怠惰の国王が国民に与えた重税により納められた金品財宝の山がある。これを一旦、国民に返してやるのだ。大衆の人心を金品で掴め。さすれば汝は英雄として迎え入れられるだろう。

3.王となった後は税法を改め、貿易も積極的に行い、国民を豊かにさせろ。さすれば自ずと国の経済は豊かになり、恨みを買うこと無く、汝は金品財宝に囲まれるだろう。また国の周辺に蔓延る賊を討ち、才能のある者を配下に加え、兵の質を高めよ。国力、軍事力共に十分蓄えたのなら、国の勢力を拡大し、モンスター被害にも備えろ。シュレイドがこの大陸で絶対的な王国となり、秩序を司るまでは10年足らずで実現するだろう。

4.大陸に蔓延る竜人を「汚れた血の異端者」と見做し、虐殺をはじめろ。連中は汝の国を脅かす老獪な知恵を身に着けている。国を失いたくなければ根絶やしにしろ。恐怖をもって汚れた血を持つ種族を汝の隷属と化すのだ。


マモーナスはそう告げるとデーモンの脳裏より消えていった。すると間もなくしてデーモンの頭上彼方の小窓より盗賊時代の仲間が顔を出し、錆びついた鉄格子を慎重に棒ヤスリで削ると、下にロープを垂らした。これを見たデーモンは「我は天を味方にした」と呟いたという。


To Be Continued









次回ストーリーモードは11/15(木)0時更新予定です