こんにちは、久田和弘です(^^)

「ブスと言わないで」で個人的におもしろいなと思うのは、知子の生活の質がどんどん上がっていることです。元々非正規で工場勤務をしていたのが、梨花の会社に就職したことで収入が増え、最初はNetflixやアマプラの年会費を気にせず使える喜びに感動し、次第に生活リズムにも良い影響がでてきます。以前はひとり黙々と作業をするだけの日々のなかで良くも悪くも考える余裕があったけれど、環境の変化によって仕事に精を出さなければならなくなり、またコミュニケーションの機会が格段に上がったことで、トラウマと向き合わざるを得ない状況から自分を逃してあげられたのかもしれません。

ただひとつ気になるのは、梨花が知子に抱いている「強さへの憧れ」です。梨花の初期衝動でもある学生時代の知子は、誰になんと言われようと自分自身を貫き通す芯があった……というのはあくまでも梨花の理想像であって、知子の本心は真逆です。いじめに傷つき、グチャグチャになり、いじめの主犯格が誰かという正確な判断を放置してすべてを梨花に押し付け、社会を恨み孤立してきた。もちろん、知子が梨花にすべての責任を押し付けようとしたのも、「見た目が良い人はなにをしても許される」というバイアスがあったからこそなので、梨花個人の人間性を知ろうとせず身勝手な理想像を抱いていた部分はお互い様かもしれません。

それでも、梨花の知子に対する「逆境で闘ってきたからこそ得られた強さ」は、どこか他人事というか、知子が望んで逆境に立っているわけではないし、梨花もまた知子が闘わざるを得ない状況に加担してきたひとりではある、という事実を恐らくうまく言語化できずに、終始知子はひとりモヤモヤを抱えているのでは……?