こんにちは、久田和弘です!

ある日、ともよを呼び出したまり子は、待ち合わせ場所の飲食店で「ここのパンケーキ美味しいんだよ」と微笑みながら話しかけます。一見友だち同士の何気ない会話に聞こえなくもないですが、絶句するともよの視線に気づくまり子の描写からページをめくると、そこにはギブスをはめた片腕が…。

「これね、この間の彼が会いたいって言うから会ったら、引きづりまわされちゃって」

と、気にする様子もなく説明するまり子に、とうとうともよの堪忍袋の尾がブチギレます。

「もっと自分を大事にして欲しい」

懇願するともよに、終始ヘラヘラとした笑顔を絶やさないまり子……。

 

 

まり子が周囲に助けを求められていたら死ななかったのか

その後、ふたりが会うシーンは描かれていません。そして突然のまり子の自殺…。
混乱を抑えられないまま、後悔と思い出を胸に、ともよは生前まり子が行きたがっていた海へと遺灰とともに向かいます。
所々でまり子の思い出を辿っていたのは、恐らく「もしかしかたまり子からのSOSを見逃していたんじゃないか」という焦燥からでしょう。しかし、どの思い出を辿っても、彼女はいつだって笑顔でした。
読者もともよもきっと同じ考えが脳内を支配しているでしょう。
「まり子から助けを求められていたら彼女を救えたのかもしれない」
…本当に、そうでしょうか?「助けて」と言えなかったから、彼女は死を選ばざるを得なかったのでしょうか?
それ以前に、まり子に「”助けて”と言わせないよう口を塞いでいたものたち」がいたから、彼女はあそこまで追い詰められたのではないでしょうか?