こんにちは、久田和弘です!

友だちだったはずのともよとまり子の関係性は、次第に歪んでいきます。それは、ともよがまり子を「助けようとしたけどやっぱり無理そう」と見限ったのか、それとも、まり子のともよへの執着心が増したのか…この「卵が先か鶏が先か」問題は、すべての可能性が当てはまることが多々あるので、恐らく理由は両方でしょう。

 

 

あんたしかいなかった

まり子にとってともよが唯一の居場所であったように、いやそれ以上に、ともよにとってまり子もまた、「あんたしかいなかった」と言い切れてしまうくらい大きな存在でした。多分、最初まり子はともよを父親からの逃げ場所と考えていたのでしょうが、ともよはともよで、自分を必要としてくれるまり子にどこか執着していたのでは。
最初この関係背はある程度バランスがとれていたのでしょう。しかし、ふたりが高校生になった頃、少しずつ歪みが生じはじめます。
「もしシイちゃんに彼氏とかできたら、わたし死ぬから。」
ある日、まり子はともよにこう宣言します。まり子の真意をはかりかねたともよは様子を窺うものの、「何かない日なんてないの」としか答えません。
この頃から、自身でリストカットした痕をチラつかせたり、ともよに対し脅迫めいたことを言うなど、まり子の言動が次第におかしくなっていきます。まるで自らを加害することで、自分に暴力を振るう人間を意図的に増やしているかのよう―――…。そうやってまり子は暴力の波にどんどん飲み込まれていく、自分を引き止めるためにともよにはそばにいて欲しいけど、それでも決して「助けて」とは言えないのです。