萩原朔太郎を「掬いとった」その先3
こんにちは、久田和弘です。
さて、前回ザックリと『月に吠えらんねえ』の概要をお伝えしましたが、登場人物らが暮らすシカク街のとある一本松に、ある日「異物」がぶらさがっていることに誰かが気づきいたところから物語はスタートします。
その異物とは、真っ黒な変死体です。
変死体に気づいた住人らは、それぞれに異なる反応―――ある者は観察し、ある者は無関心で、ある者は幻影におびえる―――をとるのですが、その差にキャラクターの個性が色濃くにじみ出ているので、そのあたりについても今日はお話していきたいと思います。
原始の情欲に執着する者
『月に吠えらんねえ』に登場する「朔くん」は、萩原朔太郎その人をモチーフにしているわけではなく、萩原朔太郎作品のイメージを凝縮し誕生したそうです。
そんな朔くん、青い髪に小柄な体型、顔つきもどこか中性的な、いわゆる二次創作的美少年な見た目をしていますが、終始瞳孔ひらき気味で情緒不安定な行動が目立つキャラクター。
一話冒頭では拾ってきた水死体を観察することで詩を創作、それをそばにいた「白さん」に披露し、一本松の変死体の幻影におびえまくります。
ちなみにこの水死体、男女がつながったまま…えぇそのままずばり、イタしたままお互いを縛りあった状態で発見されたとか。
そこには性と死があり、しかし反対にその行為自体は生の証でもある…つまりは、原始の情欲そのものであり、朔くんを言いあらわすモノローグでも同じ言葉が出てきます。
