久田和弘、『文豪ストレイドッグス』について考える6
実在した人物を二次元化し新たな設定を付与する傾向は、昨今マンガやアニメ界隈で頻繁に見かけるゆえ、ひとつの流行なのでしょう。今回テーマにした文ストもご多分に漏れず…と思いきや、この作品の魅力はそれだけに留まらない様子。
特に、表裏で見え方が違う点が、文ストのおもしろいところですね。
一見主人公が属する武装探偵社に正義があるようで、敵対するポートマフィア、そして異能所有者を取り締まる「異能特務課」にも、それぞれ信じる正義と秩序がある。彼らに共通するのは「横浜の平和の守護」であり、それを脅かす存在に対し各々の正義を執行する。
守りたいものは同じでも、目指す正義が食い違えば、時に組織同士で足の引っ張り合いをする羽目になります。例えば、海外の異能組織が街に被害をもたらす可能性が生じた場合、ポートマフィアは故意に武装探偵社と対立させる関係性をつくり、高みの見物…のはずだったけれど、結局構成員にも被害がおよぶ事態は避けられず、一時共闘する、という、敵を倒す間くり広げられる複雑怪奇なストーリーには、つい夢中になって目で追ってしまう不思議な魅力が感じられるのです。
信念の違いが具体的に表れている、といえばやはりキャラクターでしょう。武装探偵社で人助けをする太宰・ポートマフィアで力を持つ者としての責任を果たそうとする中也、組織は違えど、どこか「守り通したい対象」がある部分は共通しています。が、組織の都合や信念の相違によって「こいつとは死んでもわかり合えない」と思わせる関係性もまた、より物語を複雑にするファクターになり得るのでは?
