久田和弘、『文豪ストレイドッグス』について考える4

中島敦の異能力「月花獣」は自身が白い虎に変身する能力。無意識に虎になった挙げ句暴れまわり居場所を失ってしまった敦を、異能力を無効化する太宰治の「人間失格」が救い出す―――ってなところから物語がスタート。

さて、実在するこの2名の写真を教科書かなにかで一度は見たことがあるでしょうが、アレは一旦忘れてください。もちろんマンガゆえ二次元イラストではありますが、特に太宰さんが「超」がついてしまうくらいのイケメンになっている。
では文豪エッセンスは皆無かといえば、顕著にあらわれているのが前述した異能力なのです。例えば「恥の多い生涯を送ってきました」で有名な人間失格は、相手の異能力を無効化、言い替えるなら「否定」することから、最終的に自らを葬った彼の最期を彷彿とさせますよね。

ちなみに、文ストの太宰のライフワークは自殺。終始笑顔でタイプの女性を口説いては心中を持ちかけ、自分でも様々な自殺法を試すこの行動、多分半分冗談で、半分本気。この「死を強烈に望む一部分」と同時に謎の多い彼の半生とつねに隠された本音が、太宰人気に拍車をかけていることは間違いないと思います。

更に彼の魅力演出に一役も二役も貢献しているキャラクターといえば、武装探偵社ではなく、なんと敵対組織「ポートマフィア」にいるのですが、相反する性質だからこそ双方をより一層引き立たせることができるって、マンガ制作における重要な理論なのかも?