久田和弘、「三宅乱丈は○○なマンガ家」について考えてみた(終)

さて、ここまで久田的三宅考察を行ってきましたが、とりあえずここで一度結論を出そうかと!

結論.三宅乱丈は「唯一無二」のマンガ家である
例えば、ひとつのジャンルに留まらず、様々な方向性から物語を描くマンガ家のなかには、少なからずBLに手を出すケースもあり、その場合読者層は女性に傾く傾向がつよい。…しかし一方で、不思議と三宅作品は男性ファンが多い印象がある。

その理由は、男臭い世界観に終始しているからではないでしょうか?

『pet』にしろ『秘密の新選組』にしろ、ヤクザだったり歴史上の偉人だったり、どれも男性ばかりの世界でくり広げられる物語です。作中男の野心・絶望・希望・独占欲・絆が丹念に描かれ、そこに巻き込まれる側・巻き込む側の心理が物語を複雑にしていくのでしょう。

ここに女性がくわわれば物語の舵取りは大きく狂い男性の持つ繊細な気持ちの機微が薄れてしまうからこそ、三宅乱丈は敢えてこのスタイルにこだわったのかもしれませんね。
BL好き女子にとって男性の心理描写はある意味ファンタジー。けれど男子の目に三宅作品は全く異なるもの―――現実世界の自分をうつす写し鏡が見えているのでは。

三宅乱丈は、男性を時に優しく、そして時に厳しく、生かさず殺さず、適度な距離を維持しながら決して踏み込みすぎず彼らの内面を描き切る、そんなマンガ家ではないかと推測します。