久田和弘、『BEASTARS』について語る(終)

レゴシの親友で同じ演劇部のアルパカが何者かに食殺されたことをキッカケに、ルイ、そしてハルとの「関わり」を持つことになり、「波風立てない」を心情としていた彼の生き方が根底から覆されていきます。

当初ルイがレゴシに対し抱いていた感情は「苛立ち」でした。草食獣である自分たちにとって何時でも優位に立てる存在のくせに、何故「相手に負けること」ばかり気にかけるのか―――そうやってレゴシに食って掛かるうちに、ルイ自身の虚栄心をつくった過去のトラウマと対峙せざるを得なくなり、動物たちを統べる「BEASTARS」たらん「本当の強さ」について考えを巡らせていくのです。

ハルは身体目当てでのみ関係を維持してきた男性たちと明らかに異なるレゴシの態度―――自分を対等に扱い、気遣ってくれる優しさに触れ、友情を超えた関係性を望んでいる自分に戸惑います。
(そしてレゴシからの恋情や彼の”告白するからちゃんと振ってくれ!”という態度に更に戸惑うという…(*ノェノ)キャー甘酸っぱい…!!)

10代らしい繊細さを持つルイ、相手と対等な関係を築こうともがくハル…彼らのありのままを「受け止め」、そして自分自身をも「受け入れたい」と望むレゴシは、時にお互いの迷いによって突き放され、関係を断ち切られながらも、「種を超えたもの」があると信じただひたすら突き進んでいく。

一言でいうなれば「自分の殻に閉じこもりがちな少年が殻を破り外の世界に触れ”異なる価値観”の受け入れ方を模索し大人になるまでの成長を追った”青春群像劇”」ですかね。