久田和弘、『不滅のあなたへ』について語る4

「本当の意味で”それ”が存在を得るには、精神を揺るがす「刺激」が不可欠なのでしょう。」
前回の記事の最後は↑の文章で結びましたが、「刺激が不可欠」なのは我々人間も同じでしょう。
悲しい・寂しい・嬉しい・怒り―――様々な感情からくる「刺激」を経て人間は成長を遂げるものの、これは決してひとりでは不可能です。「刺激」は、「それ」が少年と出会ったように、他者のフィルターを通して受けなければ「成長」とはいえないと思います。

…要するに、「他者から受ける刺激=成長のための通過儀礼」だとすると、『不滅のあなたへ』は「出会いをくり返し”大人”へと成長する物語」ということでしょうか?

「大人になること」について語る上で外せないのが次章に登場する「マーチ」という少女。
彼女は「ニナンナ地方」のとある村に家族と暮らす一見ごくごく普通の少女です。毎日人形を自分の子供に見立ててオママゴトをし、「大人になりたい」が口癖のこの少女の元に、しかし「運命の日」は唐突にやって来ます。

この地方では「作物に困らず人間が生きれるのは”オニグマ”の存在があるから」と信じられており、この繁栄を継続すべく「乙女をオニグマに捧げる=生贄にする」という習慣があります。
「運命の日」――マーチが「乙女」に選ばれた日――、儀式の実行者の女性から真実を突きつけられたマーチは激怒します。

「マーチさん、あなたは大人にはなれません、もうすぐ死ぬのですから」