久田和弘、『ギヴン』について語る(終)
前回は主要登場人物属するバンドメンバーのひとり「ハルキさん」についてご紹介しましたが、彼の目線が向かう先が『ギヴン』の物語に今後どう関わっていくか、非常にたのしみです!
ちなみにハルキさんの目線の先にはつねに梶さんがいます。久田の手元にある1巻ではまだ明確な感情が描かれていないものの、梶さんが女性(主に立夏の姉)にロックオンされている姿を目の当たりにした際ゲッソリしているあたり、恐らく好意をいだいているのでしょう。
(ちなみに立夏の姉である弥生は”私美人じゃろーガハハハ”っていうタイプ。弥生・梶さん・ハルキさんの三角関係が今後どう展開するかも気になる久田。)
誰が、誰に思いを向け、誰に対し「隣りにいて欲しい」と願っているのか、それが明確な部分と、かなり曖昧にされた部分とに極端に別れているところが『ギヴン』の魅力なのかもしれません。
例えば、真冬がつねに抱えるギターは過去の「誰か」のもので、その「誰か」を思って彼は歌を口ずさむけれど、立夏にとって見えない「誰か」の存在は焦燥感と嫉妬を掻き立てる対象でしかない。
真冬が「誰か」のギターを大切にしつづける限り、「誰か」の記憶は決して消えないけれど、でも今は、隣に立夏がいる。真冬と立夏、お互いに触れられる位置で、ギターを弾き、歌をうたうことができる。
「隣にいて欲しい人は誰?」と読者が尋ねたとき、誰が何と答えるか―――それがハッキリしないこの曖昧な距離感がたまらなく愛おしい、それが『ギヴン』を読み進めるうえで楽しめるポイントではないかと。
