久田和弘、『だんだら』について語る4
「本物の沖田総司」として幕末に送り込まれてしまった男は、じつは「斬られ役専門」の俳優です。もともとは中途半端な演技力のため仕事も無くつき合っていた女優にも振られムシャクシャしていたところに、ちょうど「天才美青年剣士役」という美味しい話が舞い込んできたのでした。
目の前の光景はただの夢だと思い込むことにして、芹沢鴨を叩き斬れば憂さ晴らしになる…しかし、刀を振り下ろした後の感触は紛れもない「本物」。真実を知った彼の頭を、先輩俳優の声がよぎります。
「お前には想像力がない。自分が死ぬことに対する恐怖心がまるで感じられない」
彼にとって、刀はいつだって「偽物」でした。どうせ本気で振り下ろしても誰も死なない、怪我すらしない、血を見ることはない、だから「大丈夫」なんだ。けれどここにあるのは、紛れもない「本物」の生と死、血のヌメつく感触。
「死にたくない」
心からの願いに気付いたけれど、ここは幕末、命のやり取りが日常の時代、殺さなくては、殺されてしまう。そんな中、彼は途方に暮れてしまい……。
一方、急に戦いに対し恐怖心を見せるようになった沖田を怪訝に思う人物がひとりいました。土方歳三です。
幼い頃より親しく接し、誰よりを死を恐れず、無邪気に相手を殺すことをたのしんでいた青年の急激な変化に、土方はなにを思ったのでしょうか?
それとは別に、もうひとり、この物語に登場する「沖田」を語るうえで重要な人物がいるのですが、それはまた次回ということで。
