久田和弘、『ゴールデンカムイ』について語る3
豹変したオヤジの態度を目の当たりにした杉元は、「アイヌの埋蔵金」の噂に信憑性がある事を確信し、親友のたったひとつの願いを叶えるべく謎を追う決心をするが、ヒントを掴むために避けては通れない問題があった。
金塊のありかは、囚人の背中に入れ墨として彫られている。
つまり、金塊の隠し場所を見つけるためには、必然的に入れ墨の彫られた囚人を追うだけではなく、囚人を殺し、皮を剥がなくてはならないのです。
ひとりめの囚人を捕獲した直後、熊に襲われた杉元は、ひとりのアイヌの少女に出会います。
「アシリパ」と名乗る10代前半の少女は、金塊を巡る事件によって父親を殺された過去を持ち、アイヌの女性には珍しく狩猟を得意とし、山での生き方をよく心得ていました。逆に、銃が不得意なため獲物を仕留めることに自信がない杉元は、「金塊探しにはアシリパさんの父親殺しをした相手に復讐をするメリットがある」と焚き付け、なかば強引に仲間に引き入れてしまう。
アシリパはYESと答える代わりに、杉元に対してひとつ条件を突きつける。
「人を殺すのであれば、私は協力しない」
敵は悪人、悪人は人ではないと思い込むことで激しい戦場を生き抜き、いつしか「不死身」の異名で呼ばれるようになったひとりの青年と、人間の欲によって大切な人を奪われ、アイヌの新しい時代を生きるひとりの少女、「殺さない」という約束の元、矛盾した関係性のふたりの旅が始まりました。
