こんにちは、久田和弘です。今回も『北北西に雲と往け』の魅力について語りたいと思います!
アイスランドに住む大学講師の祖父(フランス人)とともに暮らす「元日本の男子高校生」であるはずの御山慧は、通常フィクションにあふれる「道をはずれた主人公像」とは真逆の、どこかこざっぱりした性格の持ち主。
・・・ただ、「ある特技」があること、友人が少なく、女性が苦手、たったひとりの弟を溺愛しているなどの点は、ちょっと、イヤかなり「ハズレて」いますが(笑)しかし、人探しをする描写を見るかぎり、見知らぬ人間に対してもどんどん話しかけていることから、元々人見知りという訳ではなく、単純に「ひとり」でいることを自分で選んでいるのでしょう。
―――そう考えてみると、一応「男子高校生」をしていたはずの青年が、なにを「選択」して遠い地のアイスランドまでたどり着いたのか、やはりそこが久田和弘的に非常に気になるところ!が、今のところ作者が慧の不可思議なバックグランドを明かすつもりはないようです。
・・・そう、この物語の主軸は、あくまでも「御山慧の現在」にあるのであって、ベクトルは過去には向いていない。
アイスランドという、溶岩のみでつくられた、まだ自然が力を振るい支配するこの土地で、慧は生活している。それが『北北西に雲と往け』において最も重要なことであり、全てなのでしょう。
自分たちが暮らす「日本」という国の特徴は、四季が豊かに変化すると同時に「土臭い」ところでもあると思います。そんな我々にとって馴染み深い「土」は、アイスランドにとっては縁遠い存在なのです。
