こんにちは、久田和弘です。今回も『北北西に雲と往け』の魅力について語りたいと思います!

この物語の主人公は、御山慧、年齢は記載されていないが、多分10代後半ではないかと。アイスランドに住む祖父のジャックの元で居候をしつつ、主に人を探す仕事、所謂「探偵」をしている。ちなみにジャックはフランス人のため、慧自身はクォーターで、同年代の日本人と比較すると背も高く顔つきも整っているためか、たまたま訪れた日本のコンビニの店員の女の子が見惚れるシーンがあります。
多感な時期にあるはずの青年が、日本を遠く離れ、しかも生まれた国とは縁もゆかりもない「アイスランド」で定職に就くことなく探偵をしているなんて、きっと余程の事情があったのだろう。それこそ、日本でひどいイジメに遭い、祖父を頼って短期間のみ避難している、という理由なら頷けますが、彼の飄々とした態度を見るに、そういったネガティブなバックグラウンドの気配はありません。
一応両親とは死別し、残された弟は日本に住んでいるそうだが、それ以外に「御山慧」という人物のプロフィールはほとんど描かれていない。

彼は、最初から「そこにいた」かのように、人と人を繋ぐ「探偵」という仕事を自然体でこなしていきます。祖父から譲られたオンボロ車に乗り、離婚した夫に会いたいという女性の願いや、20年ぶりに恋した相手に会いたいという美女の願いを、真摯に受け止め、想いを繋いでいく―――。

不思議なのが、舞台が現実かつ特殊な環境にいる主人公というのは、どこか影を背負っているものですが、上記したように、「御山慧」という青年には孤独な雰囲気が一切見当たりません。

(久田和弘)