こんにちは、久田和弘です。今回も『北北西に雲と往け』の魅力について語りたいと思います!
この物語の大きなポイントは「説明が少ない」ということ。文章による説明は可能な限り省きつつ、「絵で見せる」ことを重視している点が、『北北西に~』のミソだと思います。
物語のはじまりは、アイスランドの荒野のド真ん中、ただ真っ直ぐに走る道路がいきなり描かれています。そこに、倒れた自動車と、運転手であろうひとりの青年の姿が。
どうやら、車が横転してしまったようで、しかし周囲には店はおろかひとっこひとりいません。しかし彼は決して取り乱さず、車の状態を「確かめる」と、車内泊をする準備を着々と進め、雨が降りはじめた頃にはその日のできごとを日記に綴っています。
ここまでで、どうやらこの物語の主人公らしい「彼」の素性や年齢、職業に関する説明は一切省かれています。しかし、黒髪としっかりと描かれた眉毛から、日本人だろうという予想がつくのと、「雨が降る荒野にひとりきり」の状態で落ち着いていられる時点で、ある程度「変わり者」だということまでは考えられます。
1話で登場するのは「彼」と、ひとりの女性。「彼女」もまたひとり荒野を移動していたようで、しかし天気の変化に困ったのか、横転した車内で眠る主人公からこっそり毛布を「失敬」します。翌朝、インスタントコーヒーを淹れながら、夢現に見た毛布を持っていく女性を「妖精」にたとえたのは、その姿が美しかったからでしょうか?
―――翌朝、3時半に目覚めた「彼」が、霧のかかる荒野を見つめながらその場で焼いたウィンナーを適当にはさんでつくった「ホットドッグ」は、一体どんな味がしたのでしょう?
(久田和弘)
